- 第3回
- 2015年6月18日(水)
- 広上 淳一先生
- 「指揮者としての仕事とは全く別の能力と努力が必要な教員としての苦悩と実験」
今回のワークショップは指揮者の広上淳一先生。音楽総力UPワークショップで大人気の広上先生の3回目のセミナーとあり、開始前から先生方の期待も高まります。
「今日はここにいらっしゃるピアノの先生方と指導者としての悩みを共有し一緒に教育について考えましょう」と広上先生の始めの言葉、続いて東京音大の学生さんのサックス四重奏の演奏で講座は爽やかに始まりました。
広上先生が大学指揮科で指導にあたられて30年。その時代の流れの中で感じていらっしゃることをお話くださいます。戦後、高度成長期を経て音楽教育のみならず日本の教育は受験戦争や競争が加熱しました。その結果「早熟であること」が求められ続け、失敗することを恐れてしまう学生を育ててしまい、若い大切な時期に「こうなりたい」というエネルギーを自らの力で燃やし失敗もしながら成長していくことが難しい世の中となっています。「今のコンクールでは早熟な才能の持ち主を見つけることはできても、大器晩成の優秀な人材を発掘することは簡単ではないと思いませんか?」と先生方に質問します。指揮のコンクールでは真の意味で優秀な人材を見つけ育てていけるよう、これまでの日本の教育価値観は正しかったのだろうかと議論を続けながら教育の根本を問いただし、本当のグローバル化を求めて常に改革をしているそうです。
「幸せとは?」「心の豊かさとは?」と先生方とのやりとりの後、最後に広上先生の「私達の仕事は次の世代に音楽のよろこびを伝えていくこと。誇りを持って若い人の面倒を見ていきましょう。」とのお言葉に会場の先生方は静まり返って頷いていらっしゃいました。
そしてセミナー終了後、夏休み前のミニパーティーが開催されました。広上先生、メディア委員会から武田真理先生、多喜靖美先生もご参加くださいました。いつもはセミナーが終わるとそれぞれのお仕事に向かわれる先生方も、美味しいお料理をいただきながら話題も尽きず。パーティー途中でお一人ずつ「短いスピーチタイム」がありました。が、毎月顔を合わせているうちに同期として心通じ合う仲。どの先生も伝えたいことがたくさんあり、時間オーバー続出で大笑いの渦の中で幕を閉じました。
今日の講座では「できない生徒ほど(指導していくことが)おもしろい」というところに共感致しました。日々のレッスンの中では、その生徒の感じ方や音楽の捉え方が理解できない時に、一旦ピアノから離れて身体や打楽器を使います。そしてその生徒が「心」で音楽を感じ表現することができたときが指導者としてのよろこびです。まさに今日の広上先生のお話と通じていると感じました。
指揮者の先生とこういった接点はなく、お話を直接お聞きする機会はあまりないのでとても勉強になりました。今日の広上先生の言葉の中で「指導者として音楽好きな子供を育てていくことの大切さ」ということが心に残るとともに、これから子供達を指導していく時に自分もそうありたいと思いました。とても勉強になりました。ありがとうございました。