- 第2回
- 2015年5月20日(水)
- 西尾洋先生
- 今年度コンペ課題曲研究~近現代作品を中心に
- 坂かず先生
5月の音楽力UPワークショップは作曲家の西尾洋先生をお迎えして開催されました。西尾先生の温かいお人柄あふれる雰囲気の中、講座は終始和やかに進みました。
講座の始まりは作曲リレー。西尾先生から「4分の2拍子、5小節、音もリズムも自由」という課題が出され、受講者の先生方がホワイトボードに1人1小節ずつリレー方式で記入します。先に書かれたメロディーで後が決まります。さすが先生方の発想力は柔軟で想像していなかったメロディーの運びに会場の先生方から「わぁ」という感嘆の声が聞こえてきました。
西尾先生はその様子を見て「作曲家は何も書かれていない白い楽譜を見ている時が一番楽しいのです。今この作曲リレーで先生方が感じたワクワク感とまさに同じ」とおっしゃり、これから私たちがピアノの楽譜と向き合った時、作曲家の思いをどう汲み取るか、また「どう音楽を作ったら素敵?」と探っていくときのヒントをコンペのA1~D級の近現代課題曲を使いお話くださいました。
課題曲解説では「音域」がキーワード。ピアノという楽器は音域の制限のない楽器であるがゆえに私達が忘れがちな「音域」。これを意識して音を作っていくことで、音楽に立体感が生まれます。メロディーの中の与えられた1オクターブの音域を探し出し、それをはみ出した時に「違う楽器で演奏されている」また「違うパートの人が歌っている」意識を持つこと、また跳躍などその音域をはみ出るところは喜びや驚き、エネルギーを使う大変さを感じてほしいことなど作曲家からのアプローチはとても興味深いものでした。
当日配布された資料には「譜読みの極意」「演奏の極意」「表現について」などの項目に西尾先生の80箇条の言葉が書いてありました。「現代音楽について~それは突然出てきたのではなく、バッハ、ショパン、ドビュッシーらの流れの中にあります」、「表現とは~楽譜の事実を客に伝え、納得させ、心動かすこと」など大切な言葉がぎっしりと詰まっていました。
普段のレッスンの中で「歌いなさい」と口を酸っぱくして生徒に伝えておりましたが、今回の西尾先生のお話で、1オクターブの音域を意識しその音域の中での高低を感じること、これがまさに「歌うこと」だと再確認できました。音程の中でどう歌い表現するのか、生徒一人一人に合わせた言葉がけを探し、良い音楽を一緒に作っていきたいと思いました。ワークショップの中で「感性が美しくないと良い音楽は作れない」という言葉がとても印象的でした。西尾先生のおっしゃる「どんな音でも品よく美しく」、それを求めるためには自分を磨き勉強し続けることが大切だと感じました。
このワークショップは(総合力UP)というタイトルがついているだけあって、ピアノのテクニックだけを教えるのがピアノ指導者ではないということをいつも考えさせられ、気付かされるのです。今日の講座のリレー作曲では私は2小節目に音を入れましたが、これがとてもおもしろくゼロから生み出す面白さを感じさせてくださいました。作曲家の先生方が仰る共通点。新しい事の発見、ゼロからワクワクしながら新しものを生み出す。これは、発想があって、「作る」という経緯を経て、初めて「伝える」という形へと導かれ、味わいの変化を楽しもうという事に共感を覚えるという事でした。いただいた西尾先生80のバイブルをじっくりと読み、少しでも質の高い教育者を目指したいと思った今日のワークショップでした。