海老澤 敏先生
2014年最後のワークショップは、モーツァルト研究の泰斗であり、1月10日・11日に予選が終了したばかりの日本モーツァルト音楽コンクール・運営委員長も務められる海老澤敏先生にお越しいただきました。
鞄いっぱいにモーツァルトに関する文献やCDをお持ちくださり、十数枚に及ぶ様々な関連資料を配布。受講者は興味深々の様子で目と耳を傾けていました。
当時の手紙に見られるクレメンティとの関係性、楽譜に隠されたちょっとしたエピソードなど、思わず「くすっ」と笑ってしまいそうな、人間味溢れる生き生きとしたモーツァルトの姿を垣間見られた2時間でした。
実は数年前にラジオをきいていた時から海老澤先生のファンで、今回直接お話をお聞きできたことをとても嬉しく思っています。1つのことを極めているお姿は「尊敬」の一言に尽きますし、海老澤先生のお話を伺っていると、本当にモーツァルトの世界に引き込まれるような感覚になります。
ワークショップでは、「モーツァルトが作曲した当時は5オクターブのピアノが主流であり、そのピアノで作曲された作品だから7オクターブが一般的な現在からすれば音域が狭い。比較的易しい作品として分類されているのにはそこに理由がある」というお話が印象的でした。また、実際にモーツァルト作品のCDを聴き比べて曲のテンポについて考えたことも印象に残っています。作曲の背景を知ることによって導かれる楽譜に書かれない適正な(適正と考えられる)テンポがある、というお話はとても興味深く聞かせて頂きました。当時のエピソードを知らなければわからない、作品に隠されたモーツァルトの様々な心情を伺うことができ、とても充実した講座でした。