【実施レポ】指導者のための「聴く力を伸ばすアンサンブル講座」 第1回 楽譜に書けること、書けないこと

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2014/09/30
山本美芽先生
指導者のための「聴く力を伸ばすアンサンブル講座」
第3回「耳から音符をとらえる」 文・井上史枝(ピアノ講師)

日程 : 2014年11月5日(水)
会場:ヤマハミュージックリテイリング横浜

11月5日、YAMAHA横浜店でのの山本美芽先生のアンサンブルセミナー第3回は、「耳から音符をとらえる」が、テーマでした。

楽譜読めたら便利です。そこにいろいろな情報が詰まっています。また、記憶しきれない膨大な量が楽譜になっていることで、それらを再現(演奏)することが可能になります。

しかし、これは西洋音楽に当てはまることらしく、そうでない楽譜に頼らない音楽もある、ということを知っておき上手にレッスンで使って行くと、効果的になると思います。

その一つがジャズやポピュラーです。CDを聴いての耳コピ(音源を聴いて自分の耳で覚えたものを演奏する、と言うこと)が主流のこのジャンル。その道のプロに言わせると
「楽譜を見るのは手抜き」
だそうです。楽譜には音符やリズムなどが記載されている訳ですから、最低限の要素は書かれてあります。でもその奥にあるニュアンスを伝える意味では、たくさん聴いて、体に覚えさせ、そのニュアンスまでも体得して再現する。勿論、持って生まれた感性の違い、リズム感の違いで到底及ばないこともありますが、それはそれとして、やはり耳コピの世界が、ジャズやポピュラーにはあるのだそうです。

そう思うと、レッスンの中では楽譜を読む教本と、耳から入るジャンルの音楽とあった時、後者が得意(優位)な、生徒さんにはそちらを伸ばしてあげつつ多少レベルに差があってもゆっくり楽譜が読めるように持って行ってあげることも大切だな、と感じました。セミナーを受けながら、数名の生徒さんの顔が思い浮かびました。

実は日本の雅楽も、楽譜はこの写真のようなものです。やはり耳コピ。
師匠と相対(あいたい)という形で向かい合い、師匠が唱える歌をひたすら覚える、口唱歌というものです。そこから歌を覚えたら初めて楽器に行くと。それも、吹きものと言われる管楽器から始まり、打楽器や箏はそれらが出来てから、と、聞きました。

昨日はこの越天楽の出だしを、皆で歌いました。トーラーローというように。
拍子を膝で取り、微妙な音程を先生に合わせて。何だか新鮮な感覚でしたが、楽譜にしたい自分も何処かにいました。

ソルフェージュ力が大事と聞いたことがあります。この口唱歌で覚えて行く時に、拍子感と耳からの音程感が本当に必要な音楽なのだと感じました。楽譜がないからこそ、耳なんです。となると、その方面に行く場合の生徒さんのソルフェージュ力に対して、私は責任があるとも痛感した次第です。

楽譜も読めて耳も使えて、これは理想です。でも、どちらかが長けている場合、それが生きるジャンルを与えて先ずはそこから伸ばす、も大事な楽しみ方、表現の仕方だと思いました。

⇒ 山本美芽オフィシャルサイト<セミナーの予定>

山本美芽(やまもと みめ)

 音楽ライター。東京学芸大学大学院教育学研究科修了。
これまでに国内外の主要なピアノメソッドの著書・訳者、ピアニスト、演奏家、ピアノ指導者など、100人以上に直接取材を行う。
「もっと知りたいピアノ教本」「レッスンのハンドブック」(中村菊子)、「21世紀へのチェルニー」(山本美芽)、 「練習しないで上達する」(呉暁)などの単行本において、ピアノメソッドに関する原稿を執筆。
新鮮な視点と鋭い観察力に定評がある。2008年よりピアノ音楽誌「ムジカノーヴァ」にて書評をレギュラー執筆、2014年1月号より「ライティングセミナー」の連載を執筆。「ジャズジャパン」にも評論・インタビューを執筆中。 
2013年よりピアノ指導者向けのセミナーにおいて、講師として本格的に活動。最新刊「自分の音、聴いてる?」(春秋社)についての講座、ピアノ講師を対象にしたライティングセミナー、個別ライティング指導も行っている。
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井上史枝(いのうえ ふみえ)
昭和音楽大学音楽芸術学科、専攻科卒業。在学中よりピアノ指導に携わる。大学付属音楽教室のリトミックや、ヤマハ音楽教室の幼児科講師として7年勤務の後、現在は自宅にて教室を主宰。『音が苦』にならない『音楽』を大切にし、生徒さん、保護者さま共に「風通しのよい教室」をめざし、現在月曜から土曜、2歳から大人の方まで指導を行う。2児(1女1男)の母。子育ての悩みも、母親としての日々も皆さんと共有しつつレッスン中。
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