指導者のためのライティングセミナー
第4回:演奏を聴いて文章を書く
文・写真・動画:緒方ヤヨイ(ピアノ講師・「うたとピアノの教室オーバル」主宰)
耳に入ってきた音楽を、どのように捉え、どのように文章に起こしていくのか。コツを身につけておけば、生徒さんの演奏からプロの演奏にまで、コメント力が上がる。
ライティングの連続講座、4回目は【演奏を聴いて文章を書く】
演奏に対するコメントには、何を聴き取れているのか、何を評価しているのかが赤裸々に表れる。例えば指導者が生徒の演奏に対して言葉や文章を発すれば、生徒は何を聴き取るか、何を評価するか、など着眼点をも吸収できる。
文科省も義務教育課程・音楽・鑑賞において、「理解して聴き、根拠をもって批評する」と明記している。
山本先生が選んだ3曲を聴き、短時間で感想を書き出してみた。素材は、耳馴染んでいるクラシック曲、兄弟連弾で活躍中の「レ・フレール」メンバーによるオリジナル曲、伝統的な雅楽。
構造をよく知っている音楽の場合は、演奏に対する感想が多く挙げられ、よく知らない音楽(作品)の場合は、作品に対する感想が多かった。
どこに着眼して書くかは、自分の立場や、読む人々が何を求めているかによって異なってくる。まずはそこを明らかにしてから取り組むと、言葉を選びやすいだろう。
音楽の場合はやはり、そのジャンルの演奏(=作品)をたくさん聴いていればいるほど、基準となる解釈や構造知識を持てるため、的確な内容を書けるようになる。
それらを踏まえて、プロの批評家やライターが書いた文章を読んでみると、着眼点・言葉の表現ともに参考になる点が多々ある。
更に、プロがどのようなことに注意しながら書いているか、もレクチャーされた。受講者から出た悩みとして、良いところが感じられなかった際、何をどのようにコメントするか。山本先生からは、「ムジカノーヴァ」誌4月号の演奏会批評を参考資料に挙げつつ、建設的提案を添えて書く、と回答された。
学んだ後、改めて先ほどの3曲を聴き、感想を書き出した。次回の講座までに山本先生に提出すれば、赤ペン添削指導を受けられることも、このセミナーの特徴だ。
自分の言葉を引き出すエクササイズに取り組んだら、次は、生徒さんの言葉を引き出す段階に進む。第5回は、「生徒さんの声」の集め方。インタビュアーとして、どのような質問を投げかけるのか。山本先生の豊富な経験事例から、プロのコツを伝授して頂けそうだ。
音楽ライター。東京学芸大学大学院教育学研究科修了。
これまでに国内外の主要なピアノメソッドの著書・訳者、ピアニスト、演奏家、ピアノ指導者など、100人以上に直接取材を行う。
「もっと知りたいピアノ教本」「レッスンのハンドブック」(中村菊子)、「21世紀へのチェルニー」(山本美芽)、 「練習しないで上達する」(呉暁)などの単行本において、ピアノメソッドに関する原稿を執筆。
新鮮な視点と鋭い観察力に定評がある。2008年よりピアノ音楽誌「ムジカノーヴァ」にて書評をレギュラー執筆、2014年1月号より「ライティングセミナー」の連載を執筆。「ジャズジャパン」にも評論・インタビューを執筆中。
2013年よりピアノ指導者向けのセミナーにおいて、講師として本格的に活動。最新刊「自分の音、聴いてる?」(春秋社)についての講座、ピアノ講師を対象にしたライティングセミナー、個別ライティング指導も行っている。
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