日程 ： 2014年1月29日　/　会場：ヤマハミュージックリテイリング横浜店

「文章には、自分の頭の中がさらけ出るんです」
思わずドキリとした。
「書くことで、自分の頭の中を点検できます」
浮かんでいる言葉を、文字として書き起こすと、思考が目に見える形として姿を現す。

形となったものを見て、目を覆いたくなる気分になるかもしれないが、何のために、さらけ出すのかを心得ておきたい。目的は、頭の良し悪しを判定することではない。自分の教室や指導方針などを、求めている人々にわかりやすく届けるためだ。
定期的に頭（または心）の中をチェックし、形にする習慣をつけておけば、いつ誰に問い合わせを受けても、説明することができる。更に、自分が何を感じ、何を考え、何を実践し、どのような結果が返ってきたか、などを把握できるようになり、指導のクオリティも高まっていく。

しかし、いざ文章を起こすとなると、手が止まりがちになるのは、なぜなのだろう？頭の中には様々な思考が飛び交っていて、整理されていないからだ。どうすれば、テレビに出演しているコメンテーターのように、整理されるのだろう？

セミナーでは、いくつか用意された長文の課題を、要約して３行程度の文章にまとめていくワークに取り組んだ。山本先生の著書が、私立中学の入試問題に起用されているため、読解問題にチャレンジ。「何が～だと筆者は考えているか」という問いについて、筆者自身から見解を示して頂けるのは、大変珍しい経験だ。
第１回である今日のテーマは「セミナーレポートの書き方」。そこで、プロが書いたセミナーレポートの要約にも挑戦した。レポート内容が音楽に深く関わるものだけあって、受講者の眼は真剣そのもの。
具体的な手順に添って作成された要約文が発表されると、山本先生は、言葉の選び方など良い点をピックアップしながら、どこに焦点が当たっているかまで解説する。人によって注目するところや、考え方のアプローチが違うことを目の当たりに出来て、新鮮だった。また出来るだけ文中の言葉を尊重するか、自分の言葉に置き換えるか、などのスタイルの違いも見られた。

　１人で頭の中を整理しながら、多くの文章を書くことも練習になるが、グループで１つの課題に取り組み、発表によって共有出来ると、まるで同じ曲を弾いても、演奏者によって全く違った印象を受けるかのように、自分のクセやキャラクターが見えてくる。
正誤や優劣のためではなく、自分の考えや実践を言葉にまとめ、人にお渡しするためのギフトラッピング法としてライティングと向き合えば、とても楽しく、有意義な連続講座である。

• 山本美芽先生の「指導者のためのライティングセミナー」、後期3回シリーズのお申込みを受付中です。
  お問い合わせ・お申込み先：ピティナ横浜中央支部　TEL:045-311-1202

山本美芽

　音楽ライター。東京学芸大学大学院教育学研究科修了。
これまでに国内外の主要なピアノメソッドの著書・訳者、ピアニスト、演奏家、ピアノ指導者など、100人以上に直接取材を行う。
「もっと知りたいピアノ教本」「レッスンのハンドブック」（中村菊子）、「21世紀へのチェルニー」（山本美芽）、 「練習しないで上達する」（呉暁）などの単行本において、ピアノメソッドに関する原稿を執筆。
新鮮な視点と鋭い観察力に定評がある。2008年よりピアノ音楽誌「ムジカノーヴァ」にて書評をレギュラー執筆、2014年1月号より「ライティングセミナー」の連載を執筆。「ジャズジャパン」にも評論・インタビューを執筆中。　
2013年よりピアノ指導者向けのセミナーにおいて、講師として本格的に活動。最新刊「自分の音、聴いてる？」（春秋社）についての講座、ピアノ講師を対象にしたライティングセミナー、個別ライティング指導も行っている。
◆ ホームページ
◆ メールマガジン「音楽センスを伸ばしたい！」配信中。
◆ facebook、twitterでも発信中。