日程 : 2013年9月18日 / 会場 : ヤマハミュージックアベニュー横浜
ヤマハミュージックアベニュー横浜にて、山本美芽先生による3回の連続セミナー 「聴く力を育てるピアノレッスン」。
9月18日に、第1回"「相互作用」でレッスンが楽しくなる"を、受講した。
「これから先、この言葉は覚えておいた方がいいです」
貴重な情報により、冒頭からグッと空気が引き締まった。
その言葉については、後ほどご紹介する。
「聴く」とは、どのような状態だろう?
"右の耳から左の耳へ抜ける"などと表現される状態は、「聞こえている」にすぎない。
耳の他に、何を働かせれば「聴く」になるのか?
「集中力」と「理解力」である。
これらが「聴く」にどのように関わっているのか、ワークで体験することになった。
山本先生の朗読する英文に耳を傾け、どの程度、内容に集中できるだろうか?
英文の難易度が上がるにつれ、私の脳は途中から内容の理解を放棄し、発音や抑揚のリズムを聴く方向に切り替えてしまった。
受講者からも、"他のことを考えてしまった"、"英語が難しくなるほど、集中しにくくなる"など発表された。
理解できないことに長く集中するのは大人でも難しい、と実感したところで、「最適覚醒」という言葉が出た。
やさしすぎず、難しすぎない適正レベルの課題なら、生徒の覚醒レベルを上げられる。
生徒の注意を引きつけ、成果に導くことが容易になる。
ここで、指導者が留意しなければならないのが、ピアノ演奏のサイクルである。
"読む"、"弾く"、"読む"、"弾く"だけではなく、"音をイメージする"ことや、"音を聴く"ことも必要だ。
とにかくやっただけ、という演奏は「訓練的」だが、
どんな音をイメージしているか、弾いた音はどうだったかなど、生徒本人の意思を通しながら作り上げていく演奏は「相互作用的」。
グループワークでは、レッスン現場での「相互作用的」な実例を出し合った。
実例が発表されると、"この部分が「相互作用」として機能していますね"と山本先生が解説して下さった。
共通していたのは、指導者に従わせるよりも、子どもの世界に歩み寄る姿勢。
幼児期の場合は、お母さんも子どもの世界に一緒に引き入れると、さらに吸収しやすくなる、とまとめられた。
生徒が理解したか、イメージして弾いているか、聴けているか、などは、「運動化」によって、確認できる。
再度、グループワークで「運動化」について考えた。
発表の中で印象的だったのは、"鍵をかけた後、ドアが開くかどうかを確かめる"という意見。
日常生活で無意識に繰り返している動作だけに、うなずく姿が多く見られた。
全体ワークでは、理解して聴けているかどうかを、「手を挙げる(運動化)」で、実際に確認してみた。
講義・ワーク・発表のバランスが絶妙な構成。正に「相互作用」を体現していた。
楽しみながら理解でき、持ち帰れる事例も豊富で、眠気など襲ってこない。
このように一方的ではなく、相互的な教育法を、文科省が【21世紀型教育】として提唱している。
レッスン現場での教育法も、"指導者に従っていれば良い"、"やるべき教本を最初から最後までさらえば良い"というスタイルではなく、"理解しやすいか?"、"集中しやすいか?"重視の、相互的なスタイルが求められるようになる。
文科省に言われるまでもなく、レッスン現場では、既に多くの実践が成されている。
受講したピアノ教師が、自分の取り組みを【21世紀型教育】とリンクして説明できるようにと、考え抜かれた連続セミナー。
この方向性に、ピアノ教師は大きく貢献できると、山本先生は訴えたいのではないだろうか。
第2回目の「内的聴覚」が、楽しみである。
音楽ライター。東京学芸大学大学院教育学研究科修了。
これまでに国内外の主要なピアノメソッドの著書・訳者、ピアニスト、演奏家、ピアノ指導者など、100人以上に直接取材を行う。
「もっと知りたいピアノ教本」「レッスンのハンドブック」(中村菊子)、「21世紀へのチェルニー」(山本美芽)、 「練習しないで上達する」(呉暁)などの単行本において、ピアノメソッドに関する原稿を執筆。
新鮮な視点と鋭い観察力に定評がある。2008年よりピアノ音楽誌「ムジカノーヴァ」で書評をレギュラー執筆。「ジャズジャパン」に評論・インタビューを執筆中。
セミナーでは2人~3人組に分かれて意見を話し合い、発表して深める「グループワーク」を必ず取り入れている。ライターとして培ったインタビューの手法を応用し、受講者と対話しながら視点を深める形式は、参加者から「客観的な視点が持てるようになった」と強い支持を得ている。
ホームページ http://homepage1.nifty.com/mimetty
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facebook、twitterでも発信中。
ピアノ講師。東京都大田区にて「うたピアノの教室オーバル」主宰。武蔵野音楽大学音楽学部声楽科卒業。神須美子、田口久仁子の両氏に師事。大手ゲームメーカーのサウンド部門に勤務、BGMの作曲や、効果音、音声データなどを担当、サウンドドラックCDをリリース。2003年よりピアノ教室を開設、指導にあたる。現在、後田 丞子氏にピアノを師事。全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)指導会員。ヤマハPEN会員。コーチングレッスン・セミナー全級修了。NPO法人 日本スクールコーチ協会 正会員。ブログ[楕円は踊る♪]