1音からはじめる楽しいピアノ・レッスン
2012年10月30日、東京・町田のスガナミ楽器にて、丸子あかね先生のセミナー「1音からはじめる楽しいピアノ・レッスン」が行われました。この日メイン・テキストとなったのは丸子先生と、作曲家の轟千尋先生が作り上げた教材「ちいさな おんがくかい1」「ちいさな おんがくかい2」の2冊です。
丸子先生は、導入期の3つの柱として「リズム」「おんぷ」「けんばん」をあげています。それを「ちいさな おんがくかい」の1巻から2巻を使って、具体的にどう指導していくのか、お話がありました。
まずDVDでは、丸子先生のお教室の発表会で、生徒さんたちが先生とこの本の曲を連弾していく様子が映像で映し出されます。轟先生のおしゃれなハーモニーが素敵! 可愛い生徒さんのナレーションを差し挟みながら、生徒さんが演奏していく様子に、なんだか期待が高まります。
http://gakken-publishing.jp/ongaku/musictext/dt_piano_text/3200001646.html#mov
1巻では、音の名前とけんばんを一致させていきます。まず、鍵盤上のドレミファソラシの位置を覚え、1小節の簡単なリズムを弾いてみます。さらに、同じ音を1の指、2の指、3の指で弾いていきます。ここが大きなポイントです。
1の指はド、2の指はレ、3の指はミという固定観念にとらわれると、最初は良いのですが、CポジションからDポジションなど、C以外の音を1の指で弾く段階になったときに大混乱してしまいます。実際、丸子先生ご自身、ほかのピアノ教室から移ってこられた生徒さんの中に、指番号で読譜している生徒さんがいて、修正にとても時間がかかった経験があるそうです。導入段階から、Cの音を1だけでなく、2、3の指でも弾かせることが大切なのですね。
2巻になると、譜読みが始まります。丸子先生監修の「おんぷカード」をお使いになったことがある方はご存知でしょうが、大譜表に置かれた25個の音符を、「せん」の音符と「かん」の音符、それぞれ3つのグループに分け、順番に攻略していくのが丸子先生の指導法です。まず、ヘ音記号の「せん」の音符(ソシレファラ)が読めるようになったら、それらの音を使った曲に挑戦します。次にヘ音譜表とト音譜表の間のドとミ......と続けていきます。
さて、このシリーズには、先生の大切な思いがもうひとつ込められています。
たった1音の曲でも、弾くこと、表現することの楽しみを感じてほしい、という思いです。轟先生による伴奏パートと、シリーズでおなじみ尾田さんによるイラストがその思いを実現しているのです。
セミナーでは、参加者が実際に生徒のパートを丸子先生と一緒に連弾しました。静かで優しい曲、キラキラした曲、短調だけれど味わいのある素敵な曲、リズムよく流れる曲。それらの曲想のヒントになるのが、楽譜に描かれたイラストです。
「もりのあさ」なのにガンガン強く弾いている子がいたら、森の静かな情景をお話してあげる、そんなアプローチをしていくと、音色や弾き方は、がらりと変わるそうです。楽譜に描かれた絵は、子どものイマジネーションを大きく広げてくれるのです。
丸子先生は、導入教材をたくさん出版していらっしゃいますが、それは何のため? 丸子先生は、こう話されました。
「ピアノを習っている子どもたちには、できる子どもからそうでもない子どもまで、幅があります。勘のいい子どもは、教えなくても、楽譜は読めるようになります。でも、そうでない子どもたちにも、ピアノを続けてほしい。楽譜が読めるようになって、ピアノを長く続けてほしい。やめてしまう子どもが少なくなってほしい。これが私の願いです」
現在のピアノ・レッスンを考えたとき、読譜はやはり最大の問題であり、どんな子どもでもすんなりと習得できる方法が普及しているとはいえないのが現状です。丸子先生の導入教材は、読譜できるようにという目標に向かって、「けんばんの学習 音の名前とリズム」を1巻で、「大譜表とリズム」を2巻で学びます。大事なのは、それらはすべて楽譜を読む前の段階であるということ。
本格的に自分で楽譜を読む前の段階として、鍵盤の位置、音の名前、リズム、大譜表などについて先に教えることが重要なのです。
そして、ドは1、レは2、ミは3というようにCポジションの指番号で読譜をしてしまう子どもを作らない指導。これは、丸子先生の教材を使うかどうかにかかわらず、すべてのピアノの先生に、ぜひ学んでほしい事柄だと感じました。
笑顔でビシッと、「読譜はね、小学校3年生ぐらいまでは、教えてもすぐに忘れますから。何度でも教えてくださいね」と話す丸子先生。とても経験豊富で、気さくで頼もしい、そんなオーラがいっぱいに出ていました。
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