~ドビュッシーの音楽を背景に中井正子とパリの町を歩く!~
パリの凱旋門(写真:中井正子)
フランス音楽のスペシャリストとして知られる中井正子先生。なかでも今年生誕150年となるドビュッシーについてについてはパリ国立高等音楽院で受け継いだ演奏の伝統をもとに、実用版楽譜も出版、スペシャリストとして知られています。「ドビュッシー紀行」と題したこのセミナーでは、ドビュッシーが過ごした時代のフランスの景色や文化について、中井先生がフランスで撮ってきた写真を見ながらのトークをしたり、演奏を聞かせてくれたり...。まるでフランスで学んでいるかのような時間が流れていました。
第1回は、ドビュッシーの幼年時代から青年時代にかけてのお話です。まずは初期の作品「夢」の演奏から。貧しい家庭で育ち、充分な教育も受けられなかったというドビュッシー。モーテ夫人に手ほどきを受けると、わずか1年でパリ国立高等音楽院に入学を許されたという。パリから電車で20分の街、サンジェルマン・アンレの駅からすぐ、「パン通り」に建つ普通のアパルトマンの2階。そこに残っている小さな部屋がドビュッシーの生家だといいます。「現在では高級ブティックが入っていて、素敵な町並みですが、当時は郊外にある、貧しい人たちが住んでいた通りだったんですね」
サン・ジェルマン・アンレにて、パリ方面を眺める(写真:中井正子)
10代のドビュッシーは生計をたてるために、あちこちで伴奏をしたり、上流家庭のお抱えピアニストとしてアルバイトを続けていました。なかでもパトロンのヴァニエ夫妻との出会いは大きなもので、ドビュッシーはヴァニエ家でかなりの教養を身につけたのだそうです。初期の歌曲「月の光」を聴きながら、「これは歌手だったヴァニエ夫人のために書かれた作品です」とお話が続きます。
"ダンス""バラード"など初期の小品の演奏を聴きながら、若き日のドビュッシーが影響を受けたという国立高等音楽院のアカデミックな教育、そしてサロンの文化にしばし思いを馳せました。
生家近くのドビュッシー通り(写真:中井正子)
演奏のための講座は「版画」をとりあげ、中井先生は"塔"がイメージしているアジアの塔の写真などをパソコンで大画面に映し出していきます。"グラナダの夕暮れ"はパッチワークのような構造をしているという話のあと、断片的に入るギターのようなフレーズなどを弾いて説明。"雨の庭"では、子どもが雨の庭を見ている様子から始まり、風が吹いて雨が強くなって稲光、フランスの童謡、そして最後に雨が晴れる様子を、解説しながら演奏。大自然の雨や風そのもののように表現力豊かなピアノの音に、受講者たちは固唾を飲んで聴き入っていました。
ドビュッシーの生涯、「このあと、もっと面白くなるんです」という中井先生。次回、6月22日の講座では「少年時代」をとりあげる予定です。
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- ラヴェルの全曲演奏CD(2枚組、ALMレコード)が6月7日に発売となり、東京・渋谷では7月にインストアイベントも予定されています。
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- 中井先生は今秋に、アルテスより、ドビュッシーについての書籍を出版予定。もちろん、今回の講座で話した内容も含まれます。