2008年11月9日(日)徳之島文化会館(リハーサル室)にてPTNA南の風ステーション主催による、稲垣千賀子先生の「小さな子どものための音色の使い分け」のセミナーが開かれました。セミナーには徳之島の地元のピアノ講師の方々や、実際にピアノを習っている大人の生徒さんや保護者の方、又、高校の音楽の先生などがいらっしゃっていました。
初めに稲垣先生がどんな現状の中でレッスンをされているのかを説明して下さいました。ごくごく普通の町の先生をされていることや、いろんな生徒さんの紹介でした。
先生のお話を聞きながら、自分が受け持っている子どもたちの顔が次々と思い浮かび、どこにでも似たような、ちょっと面白い子や困った子どもがいるんだな、と親近感を感じました。
レッスンに来ている子どもたちも、地域差は多少あるかとは思いますが。。。
部活動や、塾に追われ、とても忙しい中でピアノを習っている子どもが多くいます。
一週間の毎日がスケジュールがいっぱいつまり、息をつく間がなく、遊ぶこともままならない。遊び方を知らない子どもの遊びがコンピューターゲームやTVです。
遊び方から学ぶ。体験を知らずイメージを膨らませることもないまま、日々を過ごしている。時代という言葉でまとめるにはあまりにも悲しすぎます。そういう子どもたちにレッスンの中で、先生が話される言葉には、イメージを引き出すパワーを感じました。
「稲垣先生の魔法のことばがけ集」を一つ一つ取り上げながら説明いただきました。
以前、インターネットで、このことばかけの事を知っていましたが、一つ一つの説明を聞き、もっと理解することができました。
本来、どんな子どもでも、考える力、イメージする力を持っているのに、与えられすぎて自らの力で少しふくらませ、引き出す事のできない環境にある中で、ちょっとしたきっかけで、稲垣先生の言葉の力でまるで魔法からとけるようにイメージし、想像する力があふれ出し、心から動き、指先へ伝わり、音として響いているように感じました。
私たちも日々のレッスンの中で子どもたちに向けて発している言葉ですが、なんでもない普通の言葉の中に考えるきっかけ、命を吹き込んでいかなければいけない、と思いました。
教える側にも伝えようとする努力がなければ相手に伝わっていかない。
先生は、伝えるとは一方的で、伝わっていかなければいけない、とおっしゃいました。
先生の言葉はとても心に響くものでした。
お話されている中で、先生は時折、声をつまらせて涙ぐむ時がありました。
その先生のお姿を見た時に心がとても温かくなり、先生の想いの深さを感じることができました。
町の先生だけれど、子どもたちには一人しかいない、私のピアノの先生であり、ピアノに触れること、共に音楽を作り出すことで心を育て、感性を磨き、表現の幅を広げ、少しずつ大きくなっていく子どもたちをしっかりと見届け、ささえていかなければいけないな、と思いました。
私にいったい何ができるだろうか と考えたとき、
毎日使っている言葉を大切にし、なにげない言葉一つ一つに丁寧になることが大事ではないか と思いました。それが伝わり、音楽になるならば、簡単ですぐにできて、そしてとても効果的なのではと思います。
手を加えたり、工夫するならばちょっとと思うかもしれませんが、ほんの少し、考え、伝わるように噛み砕けるならば、すぐに出来ること。。。これが一番だと思います。
その瞬間、ひらめいた・・・・という思いでした。
会場の皆さんも共にうなずいてらしたので、共に感動し、共に伝わっていたと思います。
以前、このセミナーと同じものが鹿児島であった時に他の先生と受講したいと思いましたが、他の行事と重なり、又、家を留守にし、2泊3日もかけて船にゆられて行かなければならない、という離島のハンディーゆえに断念しましたが、この島にいながらにして同じ内容のとても充実したセミナーを受けることができ、本当にうれしく思いました。
徳之島は鹿児島から遠く離れた所にありますが、きれいな海と豊かな農作物、そして温かい人たちの心があります。この自然の中で育った子どもたちの多くは大きくなったら島を離れてゆくのが大半です。島を離れ、都会の中に埋もれ、まぎれるのではなく、自然に触れたからわかることがたくさんあると思うので、それを大切に、失わせない様に、イメージすること、想像を膨らませることのお手伝いが出来るように私たちも日々感動し、共に感じ、伝わるように一つ一つの言葉を大事に使っていきたいと思います。
小さなことでいいと思います。
それを気づく機会を与えてくださったのが今回の稲垣先生のセミナーでした。本当にありがとうございました。深い感謝の思いでいっぱいです。
(Rep:PTNA南の風ステーション 亘 真奈美先生)