第3回講座 ピアノが歌う「ツィーグラー奏法」
テーマ:魂の耳で聴き 奏でるとは
春の到来を思わせる3月13日(木)、東音ホールに於いて ピアニスト藤原由紀乃さんをお迎えしてレクチャー&演奏会が行なわれました。
「ツィーグラー奏法の創始者、ベアタ・ツィーグラー女史はピアノ、ヴァイオリン、声楽の資格を持つ方で、私の先生であるシュタードゥラー先生の先生であ る。普通ピアノは手の形、指の形から入る が、ツィーグラー先生がある日『あべこべではないか』とハッとひらめいた。心が先にあってそれから形ではない か、と。私も幼い頃は手の形について言われた事がなく、伸びた状 態の指で弾いていました。音を良く聴く事、力を抜く事を言われ続けました。」ようやく力 が抜けるようになった9歳の頃、ただ一言(ドイツの丸い)パンの形にするの よ、と言われただけだそうです。
★<魂の耳で聴き 奏でる>とは、聴音や絶対音感の事では無く、弾く前にどういう音色で弾きたいか、既に心の中に具体的のある。例えば親しい知人がいて 離れていてもその人がまるでその場に居る かの様に思い浮かべる事が出来る。魂の深いところで感じ、その声、しぐさをイメージするように音をイメージ出 来る事。
★<才能>とは、・・・ごく少数の人達のものではない。誰もが音楽性を持っている。指が良く回る、暗譜が早い事等ではない。確かに便利機能で 演奏家 には必要なものだが、音楽性が有る事とは別 である。美しい響きや音に感銘を受けること自体が音楽性の証拠、才能である。
★理想的な音とは・・・体のどこかを固くすると(止めると)カツンとした音で伸びがない。よく聴くと音は明るさがましていく。少しずつ 音の深いところ を聴いていくと、明るさ、艶、輝きがある。 弾く前に、何処にもぶつからない音を学び、響きを良く聴く事。響きは弾いている私達をも通って伝わるので、腕 (喉、口元)心に力みがなく 力が抜けていれば、腕の痛み、疲 れはない。
=演奏を通しての奏法の実践=
♪ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 イ短調作品35 第1巻
11歳の頃の姉弟子が練習していたのを聴き感動!"何と言う曲?"いつ習えますか?"と先生に聞いた所『表現が難しいのでまだだよ』と言われ こっそり 楽譜を買って練習して 先生に見つかった 思い出深い曲の素晴らしい演奏をして頂きました。
お話の後の演奏は 心にしみ感動もひとしおでした。
私達指導者は、生徒の才能をどう活かして伸ばしていくか、責任もあるが大きな喜びであるという 由紀乃先生の言葉に皆 深くうなづきました。
(Rep:東京音楽教材研究会/吉田香織先生)