【インタビュー】第27回: 青木 理恵先生 「ピアノレッスンに活かすコーチング」

文字サイズ: |
2007/08/10

aoki.web2.jpgピアノを指導する傍ら、ピアニスト志望者、指導者、経営者、受験生など、幅広いクライアントを持つ「プロフェッショナルコーチ」として活躍する青木理恵先生。英国在住の現在も、日本帰国時は各地でコーチングについて精力的にレクチャーされています。
今回は、ロンドン中心部に位置する素敵なご自宅にお邪魔して、コーチングをピアノ指導に活かす方法についてお聞きしました。生徒さん、お子さんとのコミュニケーションについてお悩みの方は、是非ご一読ください!

◎ コーチングについてあまりご存知ない方も多いと思うのですが、具体的にどのような目的で行われているのですか?

「コーチングとは、相手が望む目標の達成に向けて、洗練された言葉で相手の知識やスキルを最も効果的、そして効率的に引き出してあげることです。

昔、香港で親業についてのセミナーを受けていた時、子供のために先回りして準備するのは、一見グッドマザーに見えるけれど実はバッドマザー。親の望む子供の姿を、子供自らそうなりたいと思えるよう導くのが、本当のグッドマザーなのだと習ったことがあります。コーチングはもう一歩先を行っていて、子供が主役です。親は、子供自身が本当になりたい姿を引き出しサポートすることで子どもも親も輝きます。私も以前はグッドマザーのつもりで、子供にも生徒にも一生懸命色々なことを教え込んだのですが、コーチングを学んだ後は、相手が例え失敗をしても200%信じて、全てを認めてあげようという考えに切り替わりました。成功・失敗という言葉はありません。成功と学びなのです」

◎ ピアノ指導者がコーチングについて学ぶメリットについて教えてください。

「ワーカホリックになってプライベートや家族を犠牲にしてしまったり、お月謝(お金)で妥協してしまったり、健康管理がおろそかになったり・・・。これは環境やお金、価値観など、自分のファウンデーション(基盤)がしっかり把握出来ていないことが原因です。コーチングを受けることによって、『本当は何のために人生の時間を使いたいのか』という基盤をはっきりさせ、その経験から得たコミュニケーションのノウハウを指導に応用できれば、レッスンも生活も、目的意識のはっきりした、充実した時間に変わってくるでしょう。

私も以前はバランスの悪い生活だったのですが、コーチングの勉強をしたことによって、時間の使い方が変わりました。レッスンもだらだらと延長せず、限られた時間内に必ず成果が上がるように研究して、相手が迷わないような明確な言葉がけをするように、気を使うようになりましたね。」

aoki.web1.jpg◎ 生徒への「言葉がけ」についてお悩みの先生方は多いと思いますが、絶対に守るべきことなどありますか。

「かの有名ピアニスト、キーシンの先生は、キーシンへの一言を1週間悩み抜いて、完全に納得して出した言葉しか口にしなかったそうです。このように、何でも自分の気が済むまで口に出して言ってみるのではなく、相手の性質や気質を見極めた、戦略的な言葉がけが必要です。

例えば、人間には聴覚、視覚、言語感覚、触覚の中で必ず『優位感覚』があって、相手のアンテナの高いところを選んで言葉を投げかけてあげることも大切ですね。理詰めで考える人には状況説明を、体で考える人には『今何を感じる?』『どう思う?』と感覚に訴えかけるなど、個人個人に適した言葉がけが効果的です。

また、性格のタイプによっても、かけるべき言葉は違ってきます。コントローラー、アナライザー、プロモーター、サポーターの4タイプのうち、プロモータータイプの子にはわくわくするような楽しいことを言ってモチベーションを上げてあげる、コントローラーには本当に納得した結果が出た時だけ結果に焦点を当てて褒める、サポーターやアナライザーは頑張った過程を褒めてあげるなど、相手の性格に合わせた言葉がけによってコミュニケーションを深めていきます。

もうひとつ大事なのは、相手の意思を常に確認しながらレッスンを進めることですね。『ここまででわからないところは?』、『不安なところはどこですか』と随所で聞いてあげると、ちゃんと答えが返ってきて、これだけで明確に成果が上がりますね。『練習をやってません』と言われたとしたら、『弾きたくなかったの?弾こうと思ったけど、出来なかったの?』と聞くと、正直に話してくれます。それで、『ごめんなさい。時間はたくさんあったけど、やらなかったの』と言われたなら、『よく言ってくれたね!ありがとう』と受け止めてあげると、信頼感もばっちりです。」

*こちらのタイプ診断は、http://test.jp/にて無料で行えます。

aoki.web3.jpg◎ 「しなかった」ことに関してはつい叱ってしまいがちですが、理解を示す姿勢が何より重要ということですね。

「『しなかった』と正直に生徒が言ってくれたなら、まずなぜそうなったのかを考えてあげると良いですね。

楽譜が難しくて見るのも嫌だったのなら、そこから将来のビジョンに焦点をあててあげます。例えば体感覚系の子には、『もし出来るようになったら、どんな気持ち?』と聞いてあげると、『わくわくすると思う』などと答えてくれます。そして、今度は数値化と言って、その気持ちを現実に近づけてあげます:『じゃぁ、これまであったおもりは何キロぐらいはずした感じ?』『7キロ』。『じゃぁ、7キロのおもりが減ってるあなたを天井裏から見ると、どんな顔してる?』と次に第三者の視点を与えてあげると、『最初から最後まで全部上手く弾けて、すごくうれしい!』とニコニコしはじめるんです。そこで、『1時間かけてここが出来るようになったら嬉しいよね、天井裏から見えたもんね』と言ってあげると、ちゃんとやる気になってくれるんですね。私としてはこの部分も見たい、あの曲も見たいという気持ちがあるのですが、その子が望んでいるところに十分な時間をかけるようにします。

更に、翌週のレッスンまで効果を持たせるのが本当の狙いなので、『これを1週間続けるために、何が出来る?』と問いかけてみます。すると、私が考え付かないような答えが出てくることもありますし、『あ~足りないな』と思うこともあるのですが、それでも本人に考えてもらうことを一番に重視します。」

◎ 素晴らしいですね!まさに、「相手主導」の指導が実現出来た瞬間ですね。

「練習の回数や時間は、基本的には自分で判断すべきものだと思います。先生に3回やれと言われたから3回で満足するのではなく、自分で7回必要だと思ったら7回、逆に1回で出来たと言う感触を掴めたのなら、それでも構いません。視覚が強く初見がすごく早くて、1回の練習で済んでしまう子もいれば、同じ曲を20,30回弾かないと覚えられない体感覚的な子もます。そういったことを先生がきちんと理解してあげて、支えてあげることによって、初めて生徒さんも自立すると思います。

私もコーチングを始めて色々と勉強の毎日ですが、生活の中でのストレスは全くなくなりました。それは、人生の時間を何のために使っているのかという『軸』が、はっきりしたからだと思います。自分がどんな価値観を持って、何をして、何を大事にしたいのか。週に1度の貴重なレッスンの時間に、生徒の『軸』を一緒に見つけてあげられたとしたら、ピアノ教師としてこれ以上素晴らしいことはないと思います!」

◎ありがとうございました!

⇒青木先生の詳しいプロフィールはこちら
⇒10/11名古屋・10/15松本にて講座開催!詳細はこちら


【GoogleAdsense】
ホーム > ピアノセミナー > ニュース > 03インタビュー> 【インタビュー】第2...