3月30日(金)、仙台中央音楽センターにて、ピアニスト菅野潤先生をお招きし、「Mozartのピアノ音楽」と題した連続講座の第3回目が行われました。「きらきら星変奏曲」、「ソナタK.570」の2曲について、その背景と位置づけを、いつもの穏やかな口調でじっくりとお話くださいました。
「きらきら星変奏曲」については、フランスの原題、また当時の軽歌劇のような恋の歌である歌詞の内容をご紹介くださいました。読み人知らずである当時国境を越え大変はやっていたこの曲は、国によってはメロディが微妙に変化していたり、題名や歌詞を変えて歌い継がれているそうです。また作曲された時期ですが、当初パリ旅行中作曲されたと思われていたものが、近年の研究により、どうやらその後ウイーンへ移住後、おそらく1781年~82年に作曲されたもののようだとの説の根拠についてもお話くださいました。
変奏曲は、当時モーツアルトもベートーベンも教育的目的のため何曲か作曲しており、そのためまさに当時の演奏技術を知る上でも、教材として使用するのは大変良いとのことでした。特にこの曲はテクニックがバラエティに富んでいるので、簡単なソナタを弾けるようになった生徒に与えるのに丁度良いだろうとのことでした。
一方「ソナタK. 570」は、モーツアルトの人生がかなり暗転した1789年に作られています。1787年には父が亡くなり、妻の病気や人気の凋落、当時の社会情勢のせいもあり経済状態は逼迫。そんな中で作られたこの曲はまるで孤独な自分自身の独白のようで、諦観に満ちているとのこと。音楽的にはとても難しいので、とっつきやすいからと小さい子に与えるのはふさわしくないとのことでした。
テクニック的解説を交え2曲とも演奏してくださいましたが、音色といい表情といい、とにかくうっとりするほど美しい演奏でした。演奏する上で、背景を良く知ることがとても大切だということを再確認できた講座でした。 (report:大野芳枝)