【実施レポ】第3回:丸山京子先生 「レッスンをより効果的にする教材選びとは」

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2006/08/25

MaruyamaKyoko2.jpg国内外で出版されている膨大な数のピアノ教本の研究を行い、講師やコラムニストとして幅広くご活躍されている丸山京子先生。今回は、「レッスンをより効果的にする教材選び」について色々とお話をお聞きしました。

先生がピアノ教本に詳しくなられたきっかけとは?

「教本の専門家になりたいと思ったわけではなくて、成り行きだと思います。主人が元々教本に興味を持っていて、日本にないピアノ教本を色々と買い集めていたんです。更に、徐々に海外に行く機会が増えてきた時に、ISMEという国際音楽協会の世界大会などにも行って、世界各国の色々な教材を買い集めました。アメリカに行った際はペース先生に直接お会いしたりもしましたね。今ではかなりの数の教本が集まって、自宅の部屋2つ分ぐらいのスペースを占めています。それでも置き場所がなくなったので、ピアノの下や他の部屋にも溢れていたり...。中には同じ本でも、改訂版が次々に出されたものもあり、その過程を全部持っているので、本当に大変です!
そんな中、ピティナにピアノ教本についての講座を・・・というお話を頂き、その時に初めて、それまで網羅していた教本についての知識を効率よくまとめることが出来たんです。良い機会を頂いたな、と思います。」

世界各国の教材を集めていらっしゃるということですが、やはり国によって教本の特徴にも違いが出てくるんでしょうか?

「そうですね。アメリカの教本は、ヨーロッパなどの教本と比べてかなり総合学習的な観点が強く見受けられます。新しいステップに進む度に、楽典やソルフェージュ、鍵盤ハーモニー、初見、即興...など、色々な角度からの学習をしながら一歩ずつ進んでいく、徹底的な螺旋型学習(スパイラルラーニング)を追求しているものが多いですね。一方ヨーロッパの教本は、一つのことをこだわりを持って丁寧に進めていくようなものが多いような気がします。例えばハンガリーやロシア、フィンランドなどの教本は自国の民族音楽をどっさり使っていますし、その中でもハンガリーの教本は、ソルフェージュ教育が非常に充実している様に思います。また、フィンランドの教本には、絵の中から音を探したり、音の響きを図形で現したり・・・というページがあったりするものもあります。こういうイメージ学習には、私自身が感動して、深く影響を受けています。ですから、レッスン室にはピアノの傍に必ず絵を飾っていて、例えば、子供のイメージがあまり豊かでないと思ったら、『この絵を見てどんな題をつけたい?』、『どんな音が聞こえてくると思う?』などの質問をすることによって、教本の根本にあるアイディアを取り入れたりしていますね。
私自身はピアノ教本は大抵持っていますが、それらを全部使うのでは無理ですので、それぞれのよいところやそこから得た手法を取り入れて使う、という風にしています。」

先生ご自身がレッスンの中で教本を使う上で、工夫・留意されている点などはありますか?

「教える対象がどのぐらいの年齢であるかということと、導入、応用、発展...など、どのレベルの生徒か、などによって使用する教材や指導への留意点は変わってきます。
例えば、まだピアノを始める前の小さい子供を例に取りますと、今の子供って昔に比べて音環境が多様だと思うんです。アニメで使われている音楽、ゲームに出てくるBGM、ニュースのイントロ...ああいう普段何気なく耳にする音楽に、複調や平行和音が入っていたりとかして、面白いですよね。ああいった響きの中で育っている子供に、あまり機能和声のみの、例えば長い学習期間にハ長調だけを使っているものよりは、今の時代の音環境をある程度理解して、それに合ったものを使った方が良いと思います。今の子供たちは将来活躍する存在ですから、先生が自分が育った環境や経験してきたことだけにこだわらずに指導することは大切だと思います。だから、レッスンでは打楽器を使ったり、階段のチャイムを使って音程の高低を覚えさせたり、音に合わせて積み木を並べさせたり、ドレミの音名に英語を取り入れたり・・・と、色々なことを取り入れようとしています。これがピアノ学習の導入編だとすると、次の応用ステージでは音楽の読み書きや基礎的なルールを学ぶための教材、そして発展では音楽の分析力や創作力を養うための教材...など、レベルによって様々な目的の教材を使いわけることが大切です。
音楽の本質はずっと変わらないとは思うんです。ただ、音楽の楽しさを表現する方向はひとつではない。 『絶対にこうでなければならない』という風に教えずに、生徒の色々な可能性を引き出せるような、どんな個性も認めてあげられるような指導ってすごく大事だと思います。ですから、教本を使うにしても、それが全てと言う教え方ではなく、教材を土台にして、音楽の楽しみ方や表現の面白さを教えることが大切なんです。」

ありがとうございました。

取材中、五十冊以上ものピアノ教本の内容や特色を細かにリストアップした資料を見て、その膨大な情報量にびっくり!ピアノ指導者として多忙な中でも、先生の研究心は一向に衰える気配がないようです。

→丸山京子先生の詳しいプロフィールはこちら
9/29(金)八千代にて講座を開催 「レッスンをより効果的にする教材選びとは~豊かな教材からレッスンの可能性を引き出す~」


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