2006年6月4日(日)、横浜中央地区予選(追加になった7月1日を除く)が行われる鶴見大学記念館・記念ホールで、ピアニストの黒田亜樹さんを講師としてお迎えし、コンペ課題曲公開レッスンが行われました。この日の公開レッスンは、午前中A1~Cまで5名、午後C~Dまで4名、それに加えて、午前・午後の部共に、課題曲を含めた黒田先生のミニ・コンサート付きという贅沢な内容でした。
3日前にイタリアから帰国されたばかりということで、公開レッスンが始まる前には「まだ時差ボケで、夜中にレッスンをしているような気分です」などとおっしゃりながらでしたが、丁寧で解りやすい、熱心なレッスンが展開されました。受講生一人一人のウィークポイントをすぐさま見極めて、どんどんと良い物を引き出しながら、改善させていくレッスンに、聴講者も惹きこまれていきました。
小さい生徒さんには無理なく音を響かせられるようにと、グランドピアノの先端に立たせて弦の長さを意識させたり、テクニック的な問題点については、手や指を取り、子供達にもわかり易く体感させたり等、黒田先生のお人柄が伝わる人間的で温かいレッスンでした。
音一つ一つを磨かせる為には、地味で根気の要る練習がとても大切である、バロックスタイルやクラシックスタイルの作品は特に、様式感を持って演奏することがとても大事であるというお話などは、指導者にとっても大変興味深く勉強になりました。音楽の本質をいろんなアプローチの仕方で伝えてくださるレッスンに、受講生も聴講者も目から鱗の一日でした。
ミニコンサートでは、課題曲中心の演奏でしたが、聴き慣れている課題曲も、黒田先生の手にかかると、魅力あふれる音色感・色彩感で、会場中に新鮮な風が吹きました。トークをしながらのコンサートだったのですが、その中で、黒田先生ご自身が、B級近現代課題曲の「タンブラン」の作曲者L.レヴィの孫弟子にあたる・・というお話や、ドビュッシーの「小さな羊飼い」と「牧神の午後」との類似性を、ギリシャ神話をまじえて説明してくださったり等、とても興味深かったです。また、C級近現代課題曲のハチャトゥリアンの「エチュード」を、最後の3小節を除いて、後は全て右手のみで弾かれたのには、会場中がビックリ!!でした。
「レッスン時間がもっと長ければ良かった・・・」「もっと長い時間レッスンを聞きたかった・・・」などという声も聞かれたり、休憩中や終了後には早速、「次回の黒田先生のレッスンはいつですか?」と尋ねる方がいらっしゃるほど、魅力的なレッスンでした。又、「今日は、ピアノではなく、音楽を教えて頂いた」という聴講者の声も、印象的でした。
(Report:真宮 恵美)