【実施レポ】作曲家によるピアノ曲アナリーゼ ~巣鴨・嵐野英彦先生~

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2006/05/11

060511sugamo.jpg 五月雨の合間をぬって、つかの間の晴れ間の中、東京音楽研究会の五月度の講座が巣鴨の東音ホールでひらかれました。講師は作曲家でピテイナ理事、新曲課題曲選定委員長の嵐野英彦先生で、今回のテーマは"作曲家によるピアノ曲アナリーゼ"です。

 アナリーゼといえば楽曲解剖学ともいえるもの、ほとんどの人は関心はあるけれど敬遠してしまう分野。嵐野先生は私たちがたくさん学んできてまだ眠りっぱなしになっている知識の"起こし屋さん"とのことで話し始められました。まず、楽譜はメッセージであると切り出され、音楽というとらえどころのないものを表すので、メッセージにおける発信者と受信者の共通理解が大切とのことでした。例えば英語のCMを聞いたのと日本語のCMを聞く場合とどちらが内容が理解出来るかとの具体的な例に一同納得、本来はBACHの作品であればBACHと同じ能力をもって初めてわかるもの、私たちは本物ではないけれど、如何に本物に近づくかが課題とつづけられました。
 次に、楽譜はメッセージが記号化されたものなので、記号の解読を正確に読み取り指示しているものを表せば間違いないといわれ、五線に書かれたものの表示が多いリスト、ラフマニノフ、ドビュッシー等の作品はクールな音楽、バッハのように表示の少ない作品はホットな音楽と分類してくださいました。
 受講者全員にむかって、"この中で五線紙を持っている人?"といわれたので一同"えっー!!"ほとんどのメンバーはもっていません。驚く私たちに嵐野先生は"皆さんは受け手一方なのです。音楽の勉強をするのだから、五線紙をもっていて当たり前なのです。楽譜を書くということが音楽に近づく第一歩です。書くことが自分の音楽生活に中に取り入れられれば、自分の演奏はもちろん指導の面でも楽譜を見る目が変わります。"
 そこで、会場担当者が慌ててコピーしてきた五線紙が配られ全員が楽譜を書くこととなりました。音楽に近づくことの実践の始まりです。ホワイトボードには4分の2拍子ハ長調の楽譜が2小節書き込まれました。どんな難しい曲かと目を皿のようにする私たちの目に飛び込んできたのは"ちょうちょう"のメロディでした。ドイツ民謡ですが日本の歌詞がつけられ、知らない人がない音楽です。"この続きを書いてください。"かつて学んだ記憶の中の音楽のありがたさを噛み締めながら、一同慣れない音符書きに挑戦いたしました。まさに"起こし屋さん"に眠れる知識を揺さぶり起こされた"五月の目覚め"の瞬間でした。そして、よい旋律は記憶に残るとして、アナリーゼをしてくださいました。"2小節目は動機の反復、2度下方の反復、3度目の変化は変合、4小節でひとまとまりになるのが標準的、4小節単位で3度目の変化がくる、3段目の同音連打は上方2度の反復、4小節単位で反復3度目の変化があり、この変化をどのように感じるかが大事"等々の説明も自分の書いた楽譜ならば、すべて、海綿が水を吸い込むごとく理解できたのでした。
 講座の後半はバステイン「ピアノ名曲集」よりCDの演奏をききながら、D.ショスタコーヴィチ、バルトーク、ハチャトリアン、サティの作品のアナリーゼをしてくださいました。最後に嵐野先生は"自己の演奏に生かす楽譜をかくこと、日記のように楽譜を書くことをお進めする。"とむすんでくださいました。知識を呼び起こされた私たちは五月雨の合間、心地良い緑のそよ風にのって帰路についたのでした。
(Report:宮本聖子)


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