全日本ピアノ指導者協会評議員、演奏研究委員会副委員長、ステップオプション企画委員長の國谷尊之氏による「第30回ピティナ・ピアノコンペティション」の課題曲説明会が、東京支部音楽教材研究会の主催で巣鴨の東音ホール開かれた。A2級からD級まで、バロック、クラシック、近現代の曲を中心に演奏を交え指導のポイントがのべられ指導者にとって貴重な講座だった。
【A2級バロックスタイルからボヘミア民謡・ぶんぶんぶん】
小さい子供には歌詞をつけてたり音名よみでやらせ、スラーの切れ目が不自然にならないよう指導する。歌謡性の曲には歌うことがすべて有効となる。スラーの切れ目では腕のアップ・ダウンを指導するとよいが、小さい子供の腕が確実に実践できなくとも腕の上下運動によるフレージングの意味を知ることが大事である。ラモーのリゴドンはアウテキレーションがないので書いて指導するとよい。
【クラシックスタイル シュワテル・かわいいおともだち】
メロデイと和声がこれ以上簡単にならないくらい簡素な構成なので気持ちをこめて表現することが、よいテクニックにつながる。
【L.モーツアルト・メヌエット ヘ長調】
メヌエットらしい品のよい曲。Fdurの品性を感じさせるとよい。左の一拍目の休符はなめらかになるよう注意。アウテキレーションは切ってもかまわないが、つないだほうが手が保持しやすい。9小節目ハ長調に転調するところが開放的音色にできれば、なおよい。
【近現代 マーサ・ミアー】
てんとう虫のブギ メロデイ的要素とリズム的要素の右左の使い分けをはっきり指導する。シンコペーションが表現上ポイントとなる。これらは、鍵盤上でなくソルフェージの要素で時間をかけてとりいれてあげてから鍵盤に移すとよい。時間を長くかけてよい指導をする。A2級では ペダルは審査の対象外となる。
【バスティン 中国のメリーゴーランド】
五度で中国の太鼓のイメージを出す。指をたててはっきりと弾く。音律で笛のイメージというように音の役割を明確に指導しタッチの使い分けをきちんとつかませる。
林光・オスティナート 左は同じ音形 単純明快でやることがはっきりしているが何ヶ月もやっていると子供はあきてしまうので要注意!
【A1級 A、スカルラッティ・スケルツァンド】
小節中に和声が変わる。2声なので和声がつかみにくいので指導者が和音を弾いてあげて助けてあげるとよい。左が重要なので気持ちがのって、右手とのバランスを保てるように。早さは全体のバランスをとって、早くならずおそくならず自分の感性を大切に!
【L、モーツアルト・メヌエットニ長調】
和声的に進行しているが単音なので認識できない。和声的にアドバイスして指導する。最後右が2分音符左がノンレガートになる部分、楽譜によっては最後の音符を短くするよう書いてあるが仕上げは不自然にならないよう気をつける。心の中の正直な自分で弾くことを大切に指導する。
【チュルク・ソナチネ】
オーケストラをそのまま鍵盤にもってきている。楽器奏者が弾いている姿を想像させて弾かせる。ソロの部分と多人数の部分を弾き分ける。9小節目の和音は弦の和音の響きとなる。
【W,A モーツアルト・まほうのふえ】
アリア ドイツ語の歌詞が聞こえてくるように指導する。手首下がらないように、休符がうきうきするように。どんどんのぼってゆくには前向きに、しかしテンポは走らない。影の支配者は左手の和音。和音を覚える意味でも非常に大切な曲である。左1拍目少しダウンで弛緩、あとはアップしながら弾く。
近現代 バスティン・とくい顔のプードル マーチのテンポで書いてあるが最初4でとって2で仕上げるとよい。半音のぶつかりあい面白く感じるように。和声と音楽の固まりがシンプルなので、上昇=f、cres.下降=dim.そのまま気持ちを込め、和音の色を感じて音楽を高めてゆく。
【カバレフスキー・陽気な歌】
明るい雰囲気。スタッカートは鍵盤の側で指の根元の関節を使う。2つの調を用いた復調性なので左手をしっかりつくる。
【三善晃・三どのワルツ】
全体は右左2声部でゆく。言葉で表現するのは難易。
B級 アーノルド・ガボット 引き込める曲なのでステージ用のイメージをしっかりしてあげないと、弾き終わってからもう一度弾きたいとの気持ちが出る。
【F,クーラウ・ソナチネOp.55-2 1楽章】
和声を深く理解しつつオーケストラの弦の柔らかみを表現する。低音ひとつ足すと音楽がかなり広がり練習効果がある。ここで國谷先生直筆の低音部の楽譜が配られた。これを用いて指導者はへ音記号のパートを両手で生徒はト音記号のパートを弾き連弾で練習をし音楽のイメージを体験させる。基本形は強烈なインパクト展開形で華やかに 再現部では違う表現になるのがポイント。
【近現代 春畑セロリ・オヤツ探検隊】
子供の行進曲。4でとると軽やか。書かれてある物語にあてはめて弾いていくとよい。復調の手法でF& Ges dur主和音が組み合わせられており音の緊迫感がある。盛り上がった部分等の音は目新しいけれどわかりやすく書いてある。
C-D級も同様に、各曲ごと的確な指導アドバイスを演奏とともに提示され、どの部分
をとっても真摯に音楽と向き合う、どの部分をとっても真摯に音楽と向きあう姿勢をより深められた講座だった。指導者ひとりひとりにエネルギーを補給していただき第30回コンペティションへ 新たな希望とともにスタートが切られたようだった。
(Report:宮本聖子)