ヤマハマスタークラス創設以来、主席講師として数多くの世界に羽ばたくピアニストを育ててこられた江口文子先生のセミナーが巣鴨の東音ホールにて開かれました。松の気分も抜けた東京の一日、60名の熱心な参加者でホールはいっぱいでした。冒頭、チャイコフスキーコンクールでみたロシア人お婆さんの姿から、ロシア人聴衆の暖かさ 音楽へ思い等を話されました。ご自身もピアノを研鑽するのは基本に取り組み、与えられた曲のみを頑張り、優秀でなければいけないという日々を経て挫折、一年間ピアノをやめた時もあったとの貴重な経験にもふれられました。技術ももちろん大事であるけれど、何でもない人の方が限りなく音楽に近いかもしれないとのお言葉でした。次にビデオで、大人の方5人のグループレッスンの様子を紹介してくださいました。5人の方は途中でピアノをやめて、再開なさった方たちです。部屋もグループ用の特別なものでなく、楽器もピアノ、クラビノーバ エレクトーンなど様々ですが、とにかく5人が楽器にむかってレッスンをしていました。同じ曲を、共通点をもって演奏に取り組み、ひとりでは終わり迄弾くことが難しくても5人一緒に弾くことで達成感を共有することができるとのことでした。そしてクラス・コンサートを行って、ひとりひとりが好きな曲を演奏発表している様子、夏休みのレッスンには、子供たちが一緒にきている様子等が紹介されました。特に8手連弾に取り組むお母様たちの横でついてこられた男の子が、曲の難易な箇所でリズムをとったり、気が気でない様子が映っているのは一同感激してしまいました。次にテキスト「ロマン派ピアノ名曲マスターレパートリー編」(江口文子編著・ヤマハミュージックメデイア)よりシューマンの"はじめての悲しみ"を教材に、自分なりの構想を記入する方法を通して、大人の方のレッスンを紹介してくださいました。大人の方は挫折感で弾けない場合もあるが、同じことの繰り返しのパターンの曲を選べば弾く行為より、頭の中で考えがまとまりやすい、人の感情の揺れはさまざまであり、正しいものはなにかときめられないが、自分の伝えたいものをまとめることにより音楽の力を深めてゆくことができるとのことでした。さらに、それらに記入された構想にそって、江口先生が弾きわけてくださる音色の深さに受講者一同感銘をうけて聞き入ってしまいました。講座の最後は、岩間稔作曲「最後の曲」を皆で歌い、音楽の心を一つにいたしました。指導者として心を洗われたような、新春の門出にふさわしい講座でした。(Report:宮本聖子)
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