知性と感性、繊細さとダイナミズムを兼ね備えているピアニストとして高い評価を受けている。 東京芸術大学音楽学部器楽科(ピアノ専攻)を経て同大学大学院修士課程を修了。 日本フィルハーモニー交響楽団、読売日本交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、テレマン室内合奏団、国立フィルハーモニカー、ラトヴィア国立交響楽団などのオーケストラと共演。 NHK FMリサイタル、NHKラジオ深夜便、NHK名曲リサイタルなどの放送番組にも出演。 音楽を多面的にとらえることをめざし、レクチャーをまじえたレクチャー・リサイタルにとりくみ、朝日新聞の天声人語にも紹介される。 またクラヴィコード(M・ヴァルカ製作)をはじめ、ショパン時代のピアノ(プレイエル1843年パリ製)、ベーゼンドルファー社創設時のピアノ(イグナーツ・ベーゼンドルファー1829年ウィーン製)、リスト時代のピアノ(エラール1868年パリ製)などの歴史的楽器を所蔵。それらの楽器を使っての演奏会や録音にも数多く取り組み、それぞれの時代の中で作曲家が求めた響きと美学を追い求めている。 2010年のショパン生誕200年記念年には、全国各地でプレイエルの演奏会を行い、大賀ホールでの軽井沢八月祭において、天皇皇后両陛下ご臨席のもと御前演奏を行う。 2011年2月、ウィーンのベーゼンドルファーザール(モーツァルト・ハウス)においてのリサイタルは絶賛され、オーストリアのピアノ専門誌ヴァインベルガーの表紙を飾る。 CD《青春のモーツァルト》《名曲による「花束」》《ノスタルジア・懐かしい風景》《久元祐子・ショパンリサイタル》《ベートーヴェン:テレーゼ、ワルトシュタイン》《リスト:巡礼の年第2年“イタリア”》《モーツァルト:ピアノコンチェルト“ジュノム”》など多数リリース。演奏経験をもとに、著書にも取り組み「モーツァルトのピアノ音楽研究」(音楽之友社)、「モーツァルトはどう弾いたか」(丸善出版)、「作曲家別演奏法〜シューベルト、メンデルスゾーン、ショパン、シューマン〜」(ショパン)、「作曲家別演奏法 モーツァルト」(ショパン)、「モーツァルトのクラヴィーア音楽探訪」(音楽之友社)、「世紀末の音楽風景」(ムジカノーヴァ)、「モーツァルト・18世紀ミュージシャンの青春」(知玄舎)などを刊行。 国立音楽大学准教授、日本ラトビア音楽協会理事。 久元 祐子ウェブサイト http://www.yuko-hisamoto.jp/ |
インスピレーションの赴くままの個性的な演奏も魅力的ですが、作曲家の意図に近づくためには、作曲家の意図をどのように演奏に反映させるかという観点も大切だと思います。とりわけモーツァルトは、天才的な作曲家だったと同時に天才的なピアニストでしたから、その作風にはピアニストしてのモーツァルトの表情が見え隠れしています。モーツァルトの時代の楽器の特性と作品への反映、作曲家の美学と演奏観、テンポ感や即興演奏法など作曲家の演奏法、作曲家の心象風景などを考察し、より芸術的に深みのある演奏を一緒に追い求めてみたいと思います。
『OUR MUSIC』で最も長寿の連載となった『作曲家別研究』の久元 祐子が、この連載を単行本にして出版しました。この本で取り上げた4人の作曲家を順次取り上げる講座シリーズです。シューベルトでは、その密やかで心に染みわたる音楽世界をどう表現するかを考えます。
シューマンは、ロマン派の作曲家の中でももっともロマン主義的な作曲家です。現実から遠く遠ざかることができるほど、シューマンの世界に近づくことができるように思います。シューマンの幻想的で入り組んだ世界にどのようにすれば分け入ることができるのか、作曲時期の異なるいくつかの作品を取り上げ、考えてみたいと思います。
シューマンは、「夕闇迫る頃、ピアノの前にすわって何とはなしに夢見心地で指を遊ばせているうちに、しらずしらず小声で旋律をくちずさむといったことは誰しもおぼえがあろう。たまたま、その人が、自分で旋律に伴奏がつけられ、ことに彼がちょうどメンデルスゾーンのようなひとだったとすれば、たちまち、美しい無言歌が出来る」と書いています。メンデルスゾーンの曇りのない透明な音楽をどう奏でるかを考えます。