読み物・連載

中高生になって続けるピアノ

2016/03/18
中高生になって続けるピアノ

春の気配が日ごとに感じられ、卒業・進級・入学のシーズンとなりました。学校生活も一区切りして心機一転、春からの新生活に胸を膨らませている方も多いのではないでしょうか。中学・高校に進級・進学される方は、忙しい学校生活とピアノの両立も、ひとつの楽しみでもあり、また課題でもあるかと思います。
今回は、学校生活と両立してピアノをそれぞれのペースで継続されている3名の方と、その指導者の「中高生へのレッスンポイント」について、インタビューを掲載しました。あわせて、中高生の学校生活とピアノの両立について、皆様のエピソードも募集していますので、是非下記フォームよりご回答をお寄せください。

ピアノに向かえない時間はセオリーを活用

坂口まこさん鹿児島県・志學館中等部1年・4歳の時より榎田真理子先生に師事

坂口まこさん

幼稚園年長生の時からステップに、小学4年生の時からコンペに毎年参加してきました。だんだんと課題曲が難しくなってきて、毎年参加するのはとても大変なので、時にはやめようと思うこともありましたが、目標を持って練習するためと練習の成果を発表する場として参加しています。中学に進学すると、勉強や部活の方に時間をとられてしまい、ピアノの練習時間が短くなってしまいました。特に、定期テストや実力テストなどのテスト前や、部活(弦楽部)のコンサート前などで部活が忙しくなる時には、練習時間の確保が難しくなります。ピアノの練習が出来ない時には、音楽理論の問題(バスティン・ピアノベーシックスのセオリー)に取り組むこともあります。セオリーをやると、音階やリズムなど譜読みの助けになりますし、楽典の勉強も出てきて、学校の音楽の定期テストにも役立っています。
小学生の頃と比べると、学校生活が忙しくなり、ピアノに向かう時間の捻出は難しくなってきていますが、母と一緒に連弾でステップに参加しており、それがピアノを続ける楽しみのひとつにもなっています。 母と一緒に弾くことで練習やレッスンがより楽しくなりますし、ピアノを通じて以前よりも仲良くなれたのではないかと思います。また「親子で連弾できていいね!」と言われるとうれしいです。これからも、無理をせず、自分のペースで楽しくピアノを弾き続けていきたいと思います。

榎田真理子先生の中高生へのレッスンポイント

榎田真理子先生

学校生活の忙しい中高生のレッスンでは、特別に気を遣いすぎることのないようにしながらも、なかなか練習できていない場合のレッスン時に、幾つか以下のようなことを積極的に取り入れています。

  • 作曲家(今弾いている曲の作曲家や、同じ時代の他の作曲家)や、音楽史、その他、曲の背景についての話。
  • 曲のアナリーゼを中心にレッスンする。
  • 今弾いている曲の作曲家の他の作品(ピアノ以外も)についても調べ、CDを聴いたり、貸したりする。
  • 初見練習や初見での私との連弾。
  • ソルフェージュやセオリーの確認。

この他にも、モチベーションが下がらないように、その時々の状況で何かと工夫するようにしています。

また、どんなに忙しくても、ステップへの参加はするようにしています。生徒自身が毎回の参加経験から、その意義を充分にわかっていて、皆、励みになっているようです。これは、仕事をしながらピアノを続けている大人の生徒さん方も同じのようです。 ピアノを続けることで培われること...例えば、忙しい中で、うまく段取りをして、時間を有効に使い、目一杯向き合う経験が、この先にも色々な面で活かされる...といった話も日頃からよくしており、ほとんどの中高生が、学校の定期試験前も試験中も休まずレッスンに足を運ぶことが多いです。

いつも明るく前向きなまこさんには、これからもお母様と共に、ピアノを通して、より多くの貴重な経験と出会いを大切に、末永く続けて欲しいと願っています。これからも、まこさんの成長を楽しみにしています。

ピアノで得た楽しい経験を将来の夢につなげたい

佐々木怜那さん 埼玉県在住・東洋女子高等学校1年生・7歳の時から松本裕美子先生に師事

佐々木怜那さん

小学校低学年の頃からステップに参加し始め、以後、毎年コンペやステップに参加継続してきましたが、中3の夏休みから塾へ行くことになり、ピアノの練習時間がほとんど取れなくなりました。毎年参加していたコンペやステップを諦めるのはとても寂しかったのですが、高校生になったらまた再開しよう!と思っていたので受験勉強に集中し、レッスンは中3の秋から3月までお休みしました。第一志望校へ行くことは叶いませんでしたが、受験が終わった達成感とともに、久しぶりにまたピアノを弾いてとても心が癒されました。受験が終わってすぐにレッスンをお願いしました。

現在は、レッスンは週1回、練習時間は平日30分~40分、休日1時間~1時間半くらいです。小学生の時は練習時間がたくさんあり、コンクール前は何時間も弾いていましたが、中学生になると部活が忙しく、なかなか練習時間が取れなくなりました。高校生になった今は、いくぶん時間が出来るようになっています。時間を決めずに、弾ける時はゆっくりと楽しんで弾いていますが、試験前と定期テスト、補習授業、部活の日は帰りが遅くなる為、練習時間が少なくなります。練習時間があまり取れないときには、リズム練習や指の基礎練習を中心に練習をしたり、弾けていない曲の部分練習に集中したりと工夫しています。あとは通学中、YouTubeで色々な人の演奏を聴いてイメージトレーニングをすることもあります。

将来保育士を目指しているので、子供達に楽しい音楽をピアノで伝えたいと思っています。ステージで演奏することは好きで、弾きたい曲が沢山あるのでピアノは今後も続けていきたいです。松本先生に7歳でピアノを習い始めて、その翌年にピティナのステップを勧めていただいてから毎年、室内楽ステップや連弾のコンペ等、ソロ演奏以外も、とても楽しい体験ができました。キッカケを作ってくださいました松本先生には感謝しています。今後も自分のペースでステップやコンペにも参加し続けていきたいと思っています。

松本裕美子先生の中高生へのレッスンポイント

松本裕美子先生

私のレッスンは、生徒さん達に「レッスンに来て良かった」「弾けるようになって楽しかった(1つでも)」と思ってもらえる時間にしようと思っておこなっています。そのために、具体的に話しあったり、一緒に色々弾いてみたりして、何か発見できるまで、とことん付き合っています。またとても多感な時期の子供たちですから、顔色や様子が変な時は、ピアノを弾く前に「お話」をします。時に態度が悪ければ本気で怒りますし、悔しいことがあれば一緒に悔しがります。もちろん楽しいお話を聞くこともあります。私は、話を聞く時も全身全霊です。保護者の方々もそんな私を理解してくださっているので、本当にありがたく思っています。

ただし、これから練習時間が減りそうな人達には、その子にあった自宅での練習の仕方、ピアノへの向かぃ方などを、根気よく数ヵ月にわたり「お話」をして、それを実践してもらっています。そうすると実際にお休み期間に入っても、忙しくなっても、また復帰する時もスムーズなようです。その内容は、本当に1人1人の顔が違うように、違います。それから、ピアノを続けるか続けないかを迷っている人には、「ピアノを私の所に習いに来るか、来ないかではなく、大人になってもピアノが生活にあることを理想に、今の自分がどうしたいのか」を考えてもらったり、一緒に話しあったりしています。

最後になりましたが、佐々木さんは、小さい時から演奏すると必ず、どなたからか、「素敵な演奏ですね」と声をかけてもらえる魅力のある演奏をします。そして音楽への道も将来への選択肢に入れて考えていたようですが、高校生になり、自分の道を自分で見つけてくれたことをとても嬉しく思います。本当にご家族の協力があってのことと、感謝の気持ちでいっぱいです。これからも保護者の方と一緒に彼女を見守っていきたいと思います。

一日5分の継続が力になる

尾川雅隆さん 島根県出身:大阪大学1年生 幼稚園年中から高校3年生まで住田智子先生に師事

尾川雅隆さん

ピティナ・ピアノコンペティションには小学生の頃いつも参加しており、何度か全国大会にも出場していましたが、中学で卓球部、高校では陸上部に所属し、勉強と部活が忙しく、土日に部活や試合がない時だけしかレッスンに通えない状況でした。ピアノの練習は毎朝、学校に行く前の5~10分のみで、受験のために高3の6月からレッスンはお休みしましたが、その間も毎朝必ず1回練習は継続していました。無事に志望校に合格することができ、ずっと師事してきた住田先生の最後の発表会では、「卒業生ラストステージ」でショパンの英雄ポロネーズを演奏しました。

ピアノを続けていて良かったと思う事は、クラシックというジャンルに今でも親しむことができているということです。何でもレベルアップや、身に付けるためには、繰り返し練習することが大事ですが、がむしゃらにやるのではなく、目的を持って、"考えた練習"をすることが大切だという事をピアノを通じて学びました。また、高校、大学と成長するにつれ、ピアノや音楽について語れる友人や機会が増え、ピアノをやっていたおかげで、人生の幅や豊かさを感じられるようになったと思います。

受験勉強との両立、時間の捻出は非常に大変でしたが、やはり満足の行く演奏のために練習していくなかで、自分の進歩を感じられたこと、また根底にピアノを弾くことが楽しいという思いがあったのが大きな支えとなり、乗り越えることができたのだと思います。住田先生がよく「良い練習をしてきてね」と言われていた事を思い出します。

住田智子先生の中高生へのレッスンポイント 

住田智子先生

教室の生徒たちは皆、高3で卒業し地元を離れる時が" ピアノも卒業 "という目標を持ってくれています。毎年3月末の発表会では「卒業生ラストステージ」を設け発表会を締めくくっています。生徒はもちろん保護者の方々もそれを目標にして下さっているように思います。また先輩が発表会には戻ってきて、後輩が卒業する時「おめでとう」と声をかけられる機会にもなっています。

卒業のステージまで、限られた時間でレッスンをサポートするために、

  • 短時間で問題解決できる処方箋を出す
    誤診の無いように、こちらから一方的な診断を出さず、まずは本人に1週間の練習の中で、弾きにい箇所や、難しい箇所を問診する。
  • 指使い、重音の取り方などチェックし「ここだけ毎日3回ずつ繰り返して弾いて」などと練習メニューをアドバイスする。
  • 練習の優先順位を示す。
    練習ポイントを色分けし、課題として練習メニューに出した日付を楽譜に書き込む。
  • 通しで弾くのはレッスンの時だけに。
    大曲となると、家での10分の練習時間では1回通すだけで終わってしまうので、曲を分割して宿題をだす。

以上の4点を、中高生のレッスンでは短時間で練習継続するコツとしてレッスンしています。

ピアノの成果だけでなく、勉強や部活の目標や結果を聞いたり、時には試合や大会、学校行事の応援にも行ったりと、ピアノ以外の部分でも頑張っている生徒の日常に寄り添い、常日頃から「勉強とピアノは相乗効果で伸びる」と忙しい中高生の生徒達を励ましています。一人一人の成長過程に応じて、引っ張ったり寄り添ったり、背中を押しながら、長い時間を共に歩みたいと思っています。ド・ド・ド~♪から始まる幼少期から、ショパンやベートーヴェンの大曲を弾く青年期まで成長を見守れることは、本当に幸せな事です!!

中高生の学校生活とピアノの両立について

  • こんな工夫をして短時間のピアノの練習をこなしている!
  • ピアノを続けることが、学校生活にも役立っている!
  • 学校が遠くて通学が大変だけれど、回数を減らしてレッスンに通っている!

・・・など、ピアノと勉強や部活などを両立されているエピソードをお持ちの方は、是非回答をお寄せください。ピアノ指導者、中高生ご本人、保護者、どなたからのご回答でも構いません。(取材等させて頂く場合がございます。)


ピティナ編集部
【GoogleAdsense】