【ピアノを習うとどうなるの?】絶対音感を身に付けるには?~2歳からの音感訓練
聞こえてくる音楽を、簡単に耳コピ出来てしまう『絶対音感』。この力は、適切な訓練により、身に付けることが可能だそうですが、それには子どもの発達が大きく影響しており、訓練の時期と順序が非常に重要とのことです。連載第1回『人生に必要な「本番力」の訓練~ピアノで見えない学力を鍛える』、第2回『ピアノの適期教育とは?~ピアノはいつから習い始めると良いのか』に引き続き、石黒加須美先生のお話を一部ご紹介いたします。(『音楽を感じる心を育てる「幼児期の能力開発・正しいピアノの早期教育」』 セミナーより:協力/伊藤楽器イトウミュージックサロン船橋)
音感には、ひとつの音だけを聞いて判別できる「絶対音感」と、2つ以上の音を聞き比べて判別する「相対音感」があります。よく絶対音感のことを「固定ド」、相対音感のことを「移動ド」などと呼ばれることもあり、どちらか一方の音感しか身に付けられないのではないかと思われることも多々ありますが、訓練により、両方の音感を身に付ける事が可能です。ただし、そのためには訓練の順番が非常に重要で、絶対音感を身に付けた後で、相対音感を付けなければなりません。相対音感が先に付くと、絶対音感が付きにくくなりますので、絶対音感を身に付けたい場合には、相対音感よりも先に絶対音感を訓練するよう、注意が必要です。
絶対音感の訓練には、タイムリミットがあります。聴覚の発達は、5歳くらいから下降し、7歳くらいからは急激に下降していきますので、それまでの年齢でなければ、絶対音感は身に付かなくなります。「臨界期」とも言われますね。私のスクールでは、保護者の方にお話しをして、希望される方に満2歳から絶対音感の訓練(個人レッスン)をおこなっています。2歳という時期は、聴覚や視覚等の感覚が研ぎ澄まされ、自己主張の始まる時期でもあります。また、最近では2歳半頃から、相対的聴取につながる、ものを比べて考える移調行動が始まることもありますので、その前に絶対的聴取の訓練を始めるのが、ベストだと考えているからです。
聴覚の発達や音感訓練の習得には、個人差がありますので、個人レッスンで一人一人の子どもに合わせて、絶対音感のつくタイミングをきちんと見極めてから、ハーモニーの変化や移調奏等の相対音感につながる内容を指導するようにしています。
2歳からの絶対音感訓練は、私のスクールでは江口メソード(※)による、色の付いた旗を用いてレッスンをおこなっています。そのために、1歳児のグループレッスンでは、2歳になるまでに色の判別ができるようになるトレーニングも取り入れています。また同時に、グループレッスンでは、相対的聴取にならないように留意し、絶対的聴取を損なわないような内容に注意しています。
絶対音感は、音をひとつ聞いただけで即座にどの音であるかを判別できますので、譜読み等のピアノ学習に活かせるのはもちろんのこと、判断の速さ、集中して一つの音を聞く訓練は、ピアノ以外の学習にも効果的なのではないかと思っています。
- 参考文献:江口寿子・江口彩子共著『新・絶対音感プログラム』(全音楽譜出版社)