論文・レポート

研究論文/渡邊智子『楽語から見たブラームスの音楽』

2009/08/07
楽語から見たブラームスの音楽
~ピアノ作品におけるAndanteの用法~

渡邊 智子

─ 目次 ─

はじめに

1 章 Andanteの歴史
 1、バロック時代のAndante
 2、古典派のAndante
 3、ロマン派のAndante

2 章 ブラームスの楽語
 1、テンポに関する楽語
 2、Andanteに付く言葉
  2-1、初期に多く使われている語
  2-2、後期に初めて使われる語

 3、ドイツ語とイタリア語

3 章 ブラームスのAndante
 1、初期作品
 2、後期作品~小品集~

まとめ

おわりに

参考文献一覧
 付録・・・・・・・・ i‐ix



はじめに

 ブラームスは、演奏者のテンポ設定に対して柔軟な考えを持った作曲家であったと言えるだろう。
 19世紀の作曲家たちは、メトロノーム表記を積極的に取り入れた。しかし、ブラームスの楽譜にはメトロノーム数値が殆ど見られない。現在、出版されている楽譜で、表記されているものは以下5曲のみである。

  • ピアノ三重奏曲 第1番 Op.8(1)
  • カンタータ≪リナルド≫ Op.50
  • ≪哀悼歌≫ Op.82
  • ピアノ協奏曲 第2番 Op.83
  • ピアノ三重奏曲 第2番 Op.87

 ブラームスの曲は作品番号122まで、作品番号無しが38まであり、それに含まれない編曲作品なども加えると膨大な数である。そのうちの5曲のみというのは、非常に希少だと言える。
 ブラームスがメトロノームに関して述べた言葉に以下のようなものがある。

「メトロノームは駄目だ。私の知る限り、役に立たない。使い道が思いつかない。(2)」(ジムロック宛の書簡 1881年7月5日)
「メトロノームには何の価値もない。私の作品に見られるメトロノーム表示は、親友たちが書くことを勧めたもので、私自身は、私の血と機械装置が一緒にやっていけると思ったことは一度もない。(3)」 (ジョージ・ヘンシェル宛の書簡 1880年2月)
 この言葉から、ブラームスがメトロノームを嫌っていたことがよく分かる。ブラームスは、周囲に対して「私がいつも自分の曲を同じように弾くようなバカだと思う?」とも言っており(4)、常に決められたテンポで弾くという機械的な演奏を好んでいなかったと考えられる。
 例えば、家で一人ピアノを弾く時はリラックスした状態であるが、ステージなど特別な場所では独特の緊張感に包まれる。このような気持ちの違いは演奏に現れ、テンポにも影響することがある。テンポはその瞬間の感情と調和していることが最も重要であり、よって常に一定のものではなく、時と場合に応じて変化するものであるとブラームスは考えていたのではないだろうか。メトロノーム数値を書かないことによって、演奏者により多くの可能性を与えたかったのかもしれない。
譜例1  ブラームス作品の中で、ピアノ協奏曲第2番Op.83はメトロノーム表記のある数少ない例の一つであるが、その数字は私たちが聞き馴染んでいるテンポとかなりの隔たりがある。第1楽章の冒頭もそうであるが、特に第3楽章の数値 =84【譜例1】は驚くほど速く、今日ブラームスの書いた数字に従う演奏家は少ないであろう。筆者の調べた限りでは =60前後の演奏が多いようである。このような差が生じる理由はいくつか考えられるが、一つには楽器の変化が挙げられる。時代と共にピアノもオーケストラも音量が大きくなり、そのことがテンポ感覚にも影響しているのかもしれない(5)
 しかし、同じピアノ協奏曲第2番Op.83でも、他の楽章のメトロノーム数値はそれほど違和感が無いのは何故だろうか。ここで、言葉の解釈という問題を提起したい。第3楽章冒頭の速度標語はAndanteである。次章で詳しく述べるが、Andanteは非常に定義の曖昧な言葉であり、時代によって解釈が変化したという経緯もある。ブラームスの考えたAndanteと、現在私たちが認識しているAndanteに差異は無いのだろうか。彼自身はどのような意図を持ってこの言葉を使っていたのだろうか。
 本論ではブラームスの楽語用法を検証し、彼のAndante観をより明確にしたいと思う。
1 第1作(1854年)と改作(1891年)があり、前者のみメトロノーム表記あり。
2 Klaus, 1988 p.111
3 『ニューグローヴ世界音楽大事典』第11巻 p.352 <テンポ>の項
4 Klaus, 1988 p.111
5 Detlef, 1988 pp.111~112


1 章 Andanteの歴史

  "andante"は"andare"から派生した単語である。"andare"は「行く(go)」という意味で、そこから派生した"andante"は、イタリア人にとって「前に進む、移動する」という感覚を表す言葉である。 私たちはAndanteを「歩く速さで」と教えられてきた。しかし、"andare"は「歩く」という意味を持たなくはないが、基本的には前進するという感覚を表す言葉であり、歩く動作をイメージさせるものではないようである(6)。また、伊和辞典には「平凡な、途切れの無い、気取らない」といった意味も並んでいる。
 楽語辞典では、Andanteをどのように説明しているのだろうか。以下は『新音楽辞典 楽語』(音楽之友社 1994年)からの引用である。

 <歩く andare>から出た語でアレグレットとアダージョの中間の速度をいう。アンダンテがはやい速度に属するか、おそい速度に属するかについては意見が一致しておらず、したがってピウ・アンダンテ、メーノ・アンダンテ、モルト・アンダンテなどの場合に解釈が異なる。楽曲の名称としても用いられ、またシンフォニーやソナタの緩徐楽章をいう。

 この説明では、既に"andare"が「歩く」と訳されているため、疑問を挟む余地がないように見える。おそらく"Andante"=「歩く速さ」という概念が定着していることから、このように訳されたのであろう。
 楽語の故郷であるイタリアでは、Andanteを本来の「前進する」という意味で捉えているが、同じヨーロッパでもドイツ人は「歩く」という概念を持っているようである。明治時代、日本が西洋音楽を取り入れるにあたり、手本としたのはドイツであった。そのため、同じ考え方が浸透し定着したとも考えられる(7)
 Andanteは国によって定義が違うだけでなく、時代とともにその解釈が大きく変化した楽語でもある。本章では、時代を追ってAndanteの解釈が変化した過程を見てみたい。

6 関孝弘,ラーゴ・マリアンジェラ―,2006年 p.52~55
7 関孝弘,ラーゴ・マリアンジェラ―,2006年 p.53

1、バロック時代のAndante

 速度標語は17世紀に発展したものである。最初は、イタリアで主として器楽曲に表記されていたが、その時点では、速度標語というよりは発想標語の性格が強かった(8)
 初期のAndanteは、現在ウォーキング・ベース・ラインと呼ばれているバスの動きを指しており、バスの歩みを明確にするように指示したり、各音符が不均一にならないよう警告したりする意味を持っていた。当時の楽語辞典には、以下のように記されている。

 前進するという意味の"Andare"から生まれた語。とりわけ、通奏低音において各音符が明瞭に演奏されることを意味する(9)

 このように、具体的な速度を示す言葉は含まれておらず、低音の奏法にのみ触れている。J.S.バッハの曲に良い例がある。

【譜例2】バッハ:≪平均律クラヴィーア曲集≫第1巻 ロ短調 前奏曲 BWV869
譜例2

 この曲の低声部は、典型的なウォーキング・ベース・ラインである。このようなバスの動きは、基本的にノン・レガート(デタシェ)で奏され、一本の線が続いていくように、スムーズに進行する。
 バロック時代のAndanteは速度標語ではなかったが、ウォーキング・ベースが自然に流れるテンポと考えることができるだろう。

8 『標準音楽辞典』p.757 <テンポ>の項
9 Grassineau, 1740 p.4

2、古典派のAndante

 古典派のAndanteを考察するにあたって、問題となるのがAndanteとAndantinoの関係である。イタリア語では"ino"が付くことにより元の意味が弱まるため、作曲家がAndanteを速いテンポと考えていたならばAndantinoはそれより遅くなる。逆にAndantinoの方が速い場合、その作曲家にとってAndanteは遅めのテンポであることを意味するはずである。
 モーツァルトは、AndantinoをAndanteより遅いと見なしていた(10)。それならば、モーツァルトのAndanteは本来の意味である「前進する」力が強いと考えられるだろう。また、シューベルトは「AndanteはAllegroの境界線にキスするくらいの速さ(11)」と定義しており、この時代、比較的速めのAndanteが存在したことがうかがえる。
 しかし、同時代の音楽学者であるゲオルグ・ジーモン・レーラインGeorg Simon Löhlein(1725~1781)は、AndanteからLarghettoまでを静かな性格と定義している(12)。また、音楽理論家ジョン・ホールデンJohn Holden(生年不明~1771頃)は、「Andantinoは歩幅が狭くなるイメージなので速くなる。」と述べている(13)。前進する力が弱くなり遅くなるという考えではなく、狭い歩幅で足を動かすスピードが速くなるというわけである。
 Andantinoについては、ベートーヴェンも頭を悩ませていたようで、出版業者のジョージ・トムソンに宛てた手紙が残っている。

「もし今後、私に編曲を依頼し送って下さる旋律の中にアンダンティーノと書かれているものがありましたら、それがアンダンテより速いのか遅いのかを明記して下さるようお願い致します。この言葉は、他の多くの音楽用語と同様に意味が曖昧で、アレグロに近くも、また殆どアダージョのようにもなりうるからです。(14)」(1813年2月19日)

ベートーヴェンは、自身の作品にAndantinoを殆ど使わなかったが、歌曲を編曲した作品で使用している例がある。そこでは"andantino più tosto allegretto"と表記され、明らかにAndanteより速いテンポとして扱っていることが分かる(15)
 このように、18世紀の音楽家たちの間でAndanteの定義が揺れ動いていた様子が見て取れる。Andantinoのテンポが問題となるということは、バロック時代と違いAndanteが速度標語として認識されるようになったことを示しており、このあたりから徐々にAndanteの解釈が複雑になってきたと言えるだろう。

10 Brown, 1999 p.353
11 Brown, 1999 p.352
12 Brown, 1999 p.351
13 Brown, 1999 p.352
14 『ニューグローヴ音楽事典』第1巻 p.425 <アンダンテ>の項
15 Brown, 1999 p.355

3、ロマン派のAndante

 19世紀当時の楽語辞典によると、Andanteは以下のように説明されている。

適度な速さで行く(going)、移動する(moving)。ラルゲットより速く、アレグレットよりは遅い。現代の音楽では幾分遅い速度を示すが、以前は言葉の意味そのものの感覚で使われていた(下線は筆者による)。ヘンデルの曲には"andante allegro"という指示が度々見られ、現代の観念と矛盾するが、単純に「きびきびと動く」(moving briskly)という意味である(16)
一定の速度で前進すること(fortgehend)。落ち着いた、速くないテンポの楽曲(17)

 Andanteの解釈が時代を経て変わったことが明言されており(下線部分)、この時代にはAndanteが「いくぶん遅い」「落ち着いた」テンポとして定着していたと考えて良さそうである。
 ヴァーグナーの楽曲には、AndanteとAdagioにほぼ同じメトロノーム数値を書き込んでいる例がある(18)

【譜例3】ヴァーグナー:歌劇≪さまよえるオランダ人≫ 第2幕
譜例3
譜例4

 また、シューマンの弦楽四重奏曲Op.41-1 第1楽章【譜例4】にあるAndanteもメトロノーム表示(♪=69)に従えば非常に遅い。
 しかし、ヴァーグナー、シューマンとは対照的な例もある。【譜例5】

【譜例5】メンデルスゾーン:弦楽四重奏Op.44-2 第2楽章
譜例5

 この曲にはメトロノーム数値が付いており、それだけでも遅くないことは伝わるが、更にドイツ語で「あまり引きずらないで演奏すべし」と注意書きが加えられている。
 古典的思想を持つブラームスは、同時代の作曲家に比べると、いくぶん快活な意味でAndanteを捉えていたとする見方もあり(19)、ヴァーグナーやシューマンよりもメンデルスゾーンに近い考えだったのかもしれない。
 ブラームスの楽譜には制限的な言葉、(ma) non troppoと(un) pocoが頻繁に登場する。また、中庸なテンポから遠い存在であるPrestoとAdagioは使われている例が少なく、極端な表現を避けているように思われる(20)。ヴァーグナーは「真のアダージョは遅すぎるということはまずありえない。」と言ったが、ブラームスはロマン派的な幅広いテンポ感覚を好ましくは思っていなかったようである(21)
 古典派の時代には「前進する」Andanteが存在していたことを考えると、古典的な考えを持つブラームスのAndanteが19世紀的な「落ち着いた」Andanteと一線を画する可能性はあるだろう。

16 Grove, 1879 p.65
17 Bremer, 1882 p.23
18 Brown, 1999年pp.360~361
19 Brown, 1999 p.358
20 Klaus, 1988 p.115
21 クルト・ザックス,1979年 p.338


2 章 ブラームスの楽語

 本章では、ブラームスが使用した速度標語の全体を眺め、更にブラームスがAndanteに関連して用いた楽語についても考察する。参考資料として、筆者自身でブラームスの全作品693曲(22)のテンポ標語を抜き出し統計を取ったものを使用した。(付録参照)


1、テンポに関する楽語

 ブラームスの使用した速度標語は多岐に渡るが、ここではそれを八つの基幹となる語Presto, Vivace, Allegro, Allegretto, Moderato, Andante(とAndantino), Adagio, Lentoに分類整理した。各々の言葉の意味は(1)『伊和中辞典』(小学館,1996年)と(2)『新音楽辞典 楽語』(音楽の友社,1994年)からの引用である。


  • Presto,40曲57例
(1)間もなく、急いで、容易に、早く
(2)きわめてはやく

 本来「速い」ではなく「早い」を意味する語であるが、所要時間を短縮するという感覚から、結果的に「速さ」が求められる(23)
 ブラームスの作品では、冒頭からPrestoの指示があることは少なく、曲途中で相対的に使われる場合の方が多い。Prestoは、ブラームスにとって単純に速度を意味する言葉であったようだ。


  • Vivace,43曲54例
(1)活発な、(頭などの)回転が速い、鮮明な
(2)はやく、生き生きと

 "vivere"「生きている」から生まれた言葉で、生命力に関係した表情を意味する。速さを表す語ではないが、輝くように活発で動きのあるイメージから、速めのテンポが連想される。
 基本的には発想標語であるが、ブラームスは明らかにテンポを示す語としても使用している。≪ハンガリー舞曲集≫にはVivaceの表記が多数あり、テンポを示す例と曲想を表す例の両方が見られる。


  • Allegro,154曲173例
(1)陽気な、快活な、朗らかな
(2)快速に、活発に、にぎやかに

 明るさと軽さが同居した表情。本来「速い」という意味は無いが、ベートーヴェンの時代には既に「Allegro=速い」イメージが定着していたようである。
 ブラームスが用いた速度標語の中ではPresto, Vivaceに続いて速いと考えられる。
 132曲で冒頭に表記されており、PrestoやVivaceとは違い、ほぼ絶対的なテンポを示すために使われていると言える。


  • Allegretto,42曲47例
(1)(Allegroの縮小詞)
(2)やや快速に、アレグロとアンダンテの中間速度

 37曲で冒頭に書かれており、絶対的テンポを示す率が高い。発想標語が付く例では、graziosoの用例が圧倒的に多く、con graziaの1例を含め14例ある。
 また、Andanteを理解する上で参考になりそうな例として、以下2曲が挙げられる。
Allegretto grazioso (quasi Andantino) 交響曲第2番Op.73 第3楽章
Allegretto grazioso (quasi Andante) ヴァイオリン・ソナタ第2番Op.100 第3楽章
 このような表記があるということは、AndanteとAllegrettoのテンポはそれ程離れていないのだろうか。


  • Moderato,33曲37例
(1)ほどよい、手頃な、控えめな
(2)中庸の速度で、アンダンテとアレグロの間の程度

 抑制され均整の取れた感覚。分別や思慮が働いているニュアンスがあり、自分に合った程良い状態を表す。
 速度標語としての位置付けはAllegroとAndanteの間だと考えられるが、ブラームス作品においては絶対的テンポを表す用例が少ない。
 Andanteとの関係で、参考になりそうな例を一つ挙げておく。
Andante, ma moderato 弦楽六重奏曲第1番Op.18 第2楽章
 Andanteにmoderatoが付く場合、他の曲では"Andante moderato"とつなげられているが、この1曲のみ間に"ma"が入る。AndanteとModeratoは相反する要素を持っているのだろうか。仮にブラームスが古典的なAndanteの捉え方をしていたとしたら、この用例は「前進するが、程々に」と簡単に解釈できる。


  • Andante,126曲150例
  • Andantino,12曲14例

 ここでは、Andantinoの用例が少ないためAndanteと同項目とし、主に両者のテンポの関係を検証したい。Andanteの意味は、前章で述べたため省略する。
 ブラームス作品では、殆どの用例が曲の冒頭に書かれたものであり、絶対的テンポを示す場合が多いと言える。この点Allegroの用法と似ており、両者は用例の多さも群を抜いている。
 ここでブラームス作品におけるAndanteとAndantinoの関係について考えてみたい。18世紀古典派の時代に解釈が分かれたAndantinoのテンポであるが、ブラームスはどのように考えていたのだろうか。実際に作品を見て検証してみよう。
 例としてAllegrettoの項目で触れた2曲、交響曲第2番Op.73 第3楽章Allegretto grazioso (quasi Andantino)とヴァイオリン・ソナタ第2番Op.100 第3楽章Allegretto grazioso (quasi Andante)を取り上げる。前者は3/4拍子、チェロがピッツィカートで奏でる8分音符に木管楽器のメロディーが乗る。軽やかな舞曲風の曲想である。後者は2/2拍子、前者と比べるとスラーが多く、静かに進むという印象を受ける。また、前者はほぼ4分音符と8分音符で書かれているため、軽快なテンポで演奏することが可能であるが、後者は途中32分音符が使われている部分があることを考慮しなくてはならない。この2曲を見る限り、ブラームス作品ではAndanteよりAndantinoの歩みが速いと考えて良さそうである。


  • Adagio,50曲56例
(1)ゆっくりと、静かに、注意深く
(2)アンダンテとラルゴの間の遅い速度

 "ad"「~のように」と"agio"「ゆとり、くつろぎ」から生まれた言葉。心地良い、くつろいだ状態を表す。「慎重な」という意味も含んでいるため、ゆったりとした速度で気を付けて進むというイメージである。
 ブラームスのAdagioは33曲で冒頭に表記されており、絶対的テンポを示す例が多い。 Andanteに関連する用例を以下に挙げる。
Andante, un poco Adagio ピアノ五重奏曲Op.34 第2楽章
Andante un poco Adagio クラリネット・ソナタ第1番Op.120-1 第2楽章
 この例を見ると、ブラームスのAndanteは遅いテンポに分類されるようにも思われる。少なくとも、シューベルトの「アレグロにキスする」Andanteとは異なる位置付けと言えるだろう。


  • Lento,21曲28例
(1)遅い、時間のかかる、緩んだ
(2)遅く

 速度がゆっくりであることを指す。前述したようにAdagioは絶対的な用例が多いが、Lentoは殆どが相対的に使われており、全25例中の18例がpiù lentoである。
 Andanteに結びつく用例も一つ挙げられる。
Andante(non troppo lento) ≪シューマンの主題による変奏曲≫Op.9 第8変奏
 「遅すぎないように」と注意書きのように付け足してある点、第1章で挙げたメンデルスゾーンの例【譜例5】と似ている。


 以上の調査結果、ブラームスの楽曲においては、AllegroとAndanteが圧倒的に多く使われている速度標語であることが判明した。
 ブラームスの用いた主な速度標語を分類すると、Presto, Lentoは速度のみを表す言葉、Vivace, Moderatoは発想標語の役割が強く、Allegro, Andante, Adagioはテンポと性格の両方を表す語であると定義できる。ブラームスは、速度のみを示す語を曲途中で相対的に用いることを好み、冒頭表記には、速度だけでなく曲の表情を伝えることのできる言葉を多用したと考えられる。
 Andanteについては、non troppo lentoという表記が付いていることや、Andante un poco Adagioという用法からAndanteのテンポが比較的遅めという可能性が高くなってきた。しかし、Allegretto grazioso (quasi Andante)という表記もあるため、一概に遅いとは言い切れない。
 ブラームスの楽語用法を調べていくと、年を経るにつれ使用する言葉の幅が広がっているように思われる。例えば、Allegroにはappassionatoやcon fuocoといった活発な性格が伴っている例が多いが、1886年のヴァイオリン・ソナタ第2番Op.100では全く違った性格のamabileが付随する。Prestoを見てみると、それまで器楽曲にのみ使われていたのが、1878年の≪バラードとロマンス≫Op.75で歌曲に初めて表記され、更に1888年のヴァイオリン・ソナタ第3番Op.108では、初めてcon sentimentoが付く例が現れる。このような傾向はAndanteにも見られ、特に後期の作品では付随する言葉が多様になってくる。
 次項ではAndanteに付く代表的な発想標語を検証しつつ、ブラームスの楽語用法の経年変化についても探ってみたいと思う。


22 カデンツァ、民謡集、編曲作品は除く。但し、≪ハイドンの主題による変奏曲≫Op.56のオーケストラ版と2台ピアノ版、ピアノ三重奏第1番Op.8の第1作と改作は、共に楽語表記が異なるため別の作品として数える。また便宜上、ソナタなど多楽章から成るものは1つの楽章を1曲と数える。
23 関孝弘,ラーゴ・マリアンジェラ―,2006年 pp.20~24
本項において、同様の楽語解説は全て同書を参照した。

2、Andanteに付く発想標語

 ブラームス作品でAndanteとAndantinoに伴う発想標語の一覧を以下に記載した。

  • [Andante]
    ・moto 27例
    ・espressivo(con espressione) 16例
    ・moderato 10例
    ・grazioso(con grazia) 5例
    ・sostenuto 2例
    ・teneramente, sentimento, tranquillo, anima, agitato, largo, mesto, semplice 各1例
  • [Andantino]
    ・grazioso 4例
    ・teneramente, agitato, semplice 各1例

 上記のうち用例の少ない語には、比較的後期の作品で初めてAndanteに付けられた言葉が多い。Andanteに付く語が多様になっていくのは、ブラームスの考え方が変わったことを物語っているのだろうか。本項では、初期作品に多く使われている語(用例の多い語)と、後期作品にしか見られない語を分けて検証したいと思う。
 検証に当たっては、以下4書を参照した。

  • 『新音楽辞典 楽語』(音楽の友社,1994年)
  • 『伊和中辞典』(小学館,1996年)
  • 『イタリアの日常会話から学ぶ これで納得!よくわかる音楽用語のはなし』(全音楽譜出版社,2006年)
  • 『音楽用語のイタリア語』(三修社,2007年)

2-1、初期に多く使われている語

 初期作品でAndanteに付く発想標語としては、motoとespressivoが多く、次いでmoderatoとgraziosoがある。moderatoは速度標語として考察済みのため、ここでは他の三つの楽語について考えてみたい。


moto 「動き、運動」

 歩くことを含めた動きに関係することに使われる。"con moto"で「動きを持って」となり、スピード・アップが伴う動きがイメージされるようである。
 ブラームスがこの言葉を使っているのは、Andanteに付随する場合が殆どである。他はAllegro con motoが1例あるのみ。曲の冒頭にCon motoと単独で書かれている例もあり、この場合あまり遅いテンポではないと考えられる。(クラリネット五重奏曲Op.115 第4楽章、≪ハンガリー舞曲集)第16番など。)


espressivo 「表情に富む」

 心に感じたものを外に出して伝えるという意味。
 ブラームスの楽譜にはespressivoが頻繁に登場し、細部にまで気持ちを込めて演奏してほしいという作曲家の願いが伝わってくるようだ。Andanteが一定の速度で進むイメージを持ち、尚且つ「平凡な」という意味もあることを考えると、espressivoとは正反対の言葉に思われる。Andante espressivoの場合は、一歩一歩着実に進んで行くようなテンポが求められるだろう。この点、ブラームスのロマン派的側面が伺える。


grazioso 「かわいらしい、上品な、優美な」

 優しく、上品で、慈悲深く、洗練された、最高に美しい状態を表す言葉。繊細で華奢な表情が要求される。
 ブラームス作品では多くがAllegrettoとセットで使われている。AdagioやLentoとは絡まないことから、ブラームスはしっとりと歌う優美さではなく、軽やかなイメージを持っていたとも考えられるが、以下のような例もある。
Adagio→L'istesso tempo, ma grazioso 交響曲第2番Op.73 第2楽章
 "ma"が付いているということは、Adagioのテンポではgraziosoが連想しにくいことを示しているのだろうか。しかし、この例はgraziosoがAdagioのテンポには対応するという証拠でもある。また、Prestoに付く例が無いことから、graziosoは速いイメージを持つと断定することもできない。単独で冒頭に書かれている例があるため、少なからずテンポの意味を含んでいるように思われるが、おそらく、繊細な表現が可能な程度の速さと考えれば良いだろう。


<初期のまとめ>
 motoが外的な動き、目に見える動きだとすれば、espressivoは内的な感情の動きを表す言葉であり、どちらも抑えた表現を要求するものではない。繊細な表現を求めるgraziosoを含め、音楽を表現することに対するブラームスの拘りが感じ取れる。ブラームスのAndanteは決して「平凡な」ものではないだろう。


2-2、後期に初めて使われる語

agitato 「揺れた、不安な、興奮した」

 何かが強く激しく動いている様子を表す。
 ブラームス作品ではPrestoやAllegroに付く例が多い。Andanteに付くのは以下2曲。
 1868年  カンタータ≪リナルド≫Op.50 Andante con moto e poco agitato
 1892年 ≪4つの小品≫Op.119-2 Andantino un poco agitato
 またAgitato単独で曲頭に書かれている例もあり、その場合、あまり遅いテンポではないと考えられる。


anima 「魂、精神」

 "con anima"で「感情を込めて」を意味する。
 ブラームスがこの言葉を速度標語と共に用いたのは、1896年≪4つの厳粛な歌≫Op.121-4のAndante con moto ed animaのみである。曲中の部分的な指示として書かれている例も少ない。


largo 「ゆったりと、幅広く」

 通常largoは遅いテンポを表すが、ブラームス作品では、largoが明確に速度標語として用いられている例は見られない。ブラームスにとってlargoは発想標語だったのだろう。
 Andanteに付く例は、1892年≪6つの小品≫Op.118-6 Andante, largo e mestoのみ。


mesto 「悲しげな、痛ましい」

 楽語としてお目にかかる機会の少ない語である。ブラームス作品にも殆ど登場しない。速度標語に付く例は、largoの項で触れた≪6つの小品≫Op.118-6の他に、ホルン三重奏曲Op.40 第3楽章のAdagio mestoがある。


semplice 「簡単な、素朴な」

 Andanteの他はModeratoに付く例が一つあるのみ。部分的な指示に使われる場合、動きの複雑でない単音の旋律などに置かれる例が多い。まさに言葉の意味そのままに使用されていると言えるだろう。
 1887年≪ジプシーの歌≫Op.103-8にAndantino sempliceがある。


sentimento 「感情、感覚」

 愛情も感傷も表すことができる言葉。ブラームス作品では、Prestoに付く例もある。
 1892年≪7つの幻想曲≫Op.116-5にAndante con grazia ed intimissimo sentimentoがある。


sostenuto 「支えられた、打ち解けない、堅苦しい」

 音を充分に保つことを示す。その結果、抑えたテンポで演奏することにもつながる。
 ブラームスの楽譜にはsosten.--- a tempoという表記がよく見られ、この場合、明らかにテンポの変化を示唆していることがわかる。しかし、sostenuto il tempoという指示もあることから、必ずしもテンポの変化を意味するとは限らない。
 Andanteに付く例は以下2曲。
 1876年 交響曲第1番Op.68 第2楽章 Andante sostenuto
 1884年 ≪4つの歌曲≫Op.96-4 Andante sostenuto


teneramente 「やさしく、愛を込めて」

 もとは"tenero"「柔らかい」から派生した語。感触の良さを表す。
ブラームスが度々曲中で用いた語であるが、ほぼ部分的な表情を指示する目的でしか使われておらず、速度標語と併用されるのは1892年の≪7つの幻想曲≫Op.116-6と≪6つの小品≫Op.118-2のみである。どちらも題名は"Intermezzo"である。


tranquillo 「静かに」

 音の静けさだけでなく、心の平安の意味も含まれる。
 ブラームス作品の中では、曲の途中、明らかにテンポを遅くする指示として用いられることが多くある。Tranquilloはテンポを遅くすることを指し、tranquilloは急いで演奏しないようにという注意の意味があるようだ(24)
 1886年のヴァイオリン・ソナタ第2番Op.100第2楽章にAndante tranquilloと表記されている。


<後期のまとめ>
 mesto, semplice, teneramente, tranquillo といった静かな印象を受ける語が多く見られる。テンポを遅くする意味もあるsosotenutoの使用例もあることから、どんどん先に進むAndanteのイメージは浮かばない。しかしagitatoという激しい表現を要求する言葉も使われており、ブラームスのAndanteが持つ性格の幅広さを窺わせる。

 ブラームスがAndanteと共に用いた言葉を検証した結果、動きを表す語と穏やかな表情の語が混在していることがわかった。しかし、どちらかというと比較的遅めのテンポが馴染む言葉が多いように思われる。これは、前項で行った速度標語全般の考察結果とも一致するため、ブラームスのAndanteがゆったりしたテンポである可能性がますます高くなってきた。速いテンポを連想させるmotoとagitatoも使われているが、少なくともヘンデル作品に見られる"Andante allegro"(4)のようなイメージは持たないと言ってよいだろう。
 前期と後期を比べてみると、後期作品は、語彙が増えたことで指示がより具体的になっているように感じられる。前期の楽語からはストレートな感情表現がイメージできるが、年を経るにつれ、表面は穏やかでも心の底にある強く深い想いが伝わってくるようである。そう考えるとブラームスのAndanteは、徐々に、より遅く、ロマン派的な要素が強くなっていったのかもしれない。
 さて、ここまではイタリア語の楽語に限定して考察を行ってきたが、次項ではブラームスの母国語であるドイツ語表記について検証してみたい。

24 Avins, 2003 p.22
25 Grove, 1879

3、ドイツ語とイタリア語

 ブラームスの楽譜には、ドイツ語とイタリア語の指示が混在していることがある。
 ドイツ語表記に拘ったロベルト・シューマンは、創作初期はイタリア語を使っており、ある時期からドイツ語に変わる。しかし、ブラームスにはそのような区切りが無く、どのような基準でドイツ語とイタリア語を使い分けていたのか判断に悩むところである。
 ブラームスは、楽語が持つ本来のイタリア語の意味が歪められ偏った意味で使われていることを認識し、信頼できる母国語でより微妙なニュアンスを伝えようとしたのかもしれない。それならば、Andanteに対応するドイツ語を知ることによって、その定義をより明確にできるのではないだろうか。

Andante/Träumerisch ≪月夜≫WoO 21
 Träumerischは「夢見るような」という意味(26)。この例ではどちらの言葉も歌パートの上に書かれており、ドイツ語がイタリック体であるためOp.76の例と似ている。


(歌)Andante/(ピアノ)Sehr zart ≪5つの歌曲≫Op.49-2
 sehrは「とても」、zartは「繊細な」の意。
 ブラームスの歌曲では、歌パートにドイツ語、ピアノパートにイタリア語が記されているものが多くあるが、この曲では歌パートにイタリア語、ピアノパートにドイツ語が置かれている。こういった逆転表記の例は、筆者の調べた限りこの1例のみである。


(歌)Mässig bewegt/(ピアノ)Andante con moto ≪5つの歌≫Op.72-4
 bewegtはbewegen「動かす」が元なので、con motoに対応する。ブラームスが頻繁に用いたドイツ語表記である。
 mässigは「適度な」という意味。AndanteよりModeratoに近い語であるが"Mässig bewegt"で「適度に動きを持って」と考えると、Andante本来の意味に近いようにも思われる。


(歌)Anmutig bewegt und sehr innig/(ピアノ)Andante grazioso e molto espressivo≪バラードとロマンス≫Op.75-3
 anmutig「優雅な」はgrazioso、innig「心からの、親密な」はespressivoと解釈できる。ここではbewegtがAndanteに対応しているようである。


Andante con moto/Sanft bewegt ≪8つの小品≫Op.76-6 INTERMEZZO
 sanftは「穏やかな、柔らかい」という意味。
 前記のOp.72-4も同じAndante con motoで、ドイツ語は"Mässig bewegt"であった。ブラームスのAndante con motoはきびきびとした動きではなく、緩やかに動くイメージがあるとも考えられる。

(歌)Ziemlich langsam, gehend/(ピアノ)Andante moderato ≪低声のための6つの歌曲≫Op.86-4
 ziemlichは「かなり、まあまあ」でsehrよりは低い程度を意味する。langsamは「遅い」、gehendはgehen「行く」が元なので、Andanteの直訳である。
 ここで明らかに速度を示す語langsamが登場した。moderatoが付くことでAndanteの速度に大きな変化は生じないはずなので、この例はブラームスのAndanteが少し遅めのテンポを意味することを裏付けているように思われる。

(歌)Einfach und ausdrucksvoll/(ピアノ)Andante espressivo ≪低声のための5つの歌曲≫Op.105-3
 einfachは「簡単な、素朴な」という意味。ausdrucksvollは「表情豊かな」の意味でespressivoに当たる。
 ここでは速度を示す語は無いが、einfachがあることでテンポが揺れ動くイメージではないと言えるだろう。

(歌)Mässig/(ピアノ)Andante moderato ≪低声のための5つの歌曲≫Op.105-4
 同じAndante moderatoでも、Op.86-4ではZiemlich langsam, gehendとなっていた。ドイツ語表記が異なり、こちらの例ではまさに中庸なテンポと解釈できる。

 以上の例から、ブラームスはAndanteに対応するドイツ語を一つに限っていなかったことが分かる。Andanteをドイツ語に直訳するとgehendであるが、上記の例でgehendが使われているのは1曲しかない。
 「繊細」「穏やか」「素朴」「夢見るような」といった、どちらかというと大人しい表情の言葉が多く使われており、速度を示す語はlangsamが1例あるのみで、速い部類の語は使われていない。ドイツ語表記を見る限り、ブラームスのAndanteは比較的穏やかな性格ではないかと思われる。しかしbewegtに対応する例もあることから、「動く」というイメージも忘れてはならないだろう。

 本章では、速度標語、発想標語、ドイツ語という三つの視点からブラームスのAndanteを眺めてみたが、結果、テンポの面では「やや遅め」という解釈が共通していることがわかった。また、性格は「静かな、穏やかな」と捉えられる例が多い。「動き」を求める指示も見られるが、これは「緩やかな動き」という解釈もできるだろう。
 楽語表記を検証した結果、ブラームスのAndanteに古典的な要素は薄く、どちらかと言えばロマン派的なゆったりとしたAndanteに近いと考えられる。
 次章では、実際にAndante表記のある曲を見ながら、更に詳しい考察を行いたいと思う。

26 『マイスター独和辞典』戸川敬一他編,1999年 以下、ドイツ語の意味は全て同書参照。

3 章 ブラームスのAndante

 本章では、ブラームスのピアノ曲におけるAndanteの用法を検証し、実際どのように演奏されるべきかを考えてみたい。


1、初期作品

 ブラームスの初期ピアノ作品の代表としてはソナタ全3曲が挙げられる。これらの緩徐楽章(第1番Op.1第2楽章、第2番Op.2第2楽章、第3番Op.5第2,4楽章)はいずれもAndanteで書かれている。更に、旋律に詩が付いているという共通点もある(27)。ブラームスの器楽曲は、民謡などからヒントを得たものが多くあり、彼の音楽の根底に常に歌が流れていることを感じさせる。それならば、上記のソナタ緩徐楽章は、実際に歌えるテンポを基準とするべきではないだろうか。
 Andanteを速度の面から捉えた時、Andante moltoとpiù Andanteをどう解釈するかが問題となる。イタリア語本来の意味である「先に進む」と捉えた場合、Andante moltoや più Andanteは「先に進む力が大きくなる」=「速くなる」と考えられる。しかし、これまでの考察によれば、ブラームスのAndanteに「前進する力」が強いとは断言できない。
 più Andanteの用法で特筆すべき例は、≪ワルツ集≫Op.39の第6番と第7番【譜例6】である。この曲集は全部で16のワルツから成るが、全て続けて演奏する意図を持って作られている。第6番はVivace、続く第7番はpiù Andanteになるが、ここでは明らかに遅くなる。

【譜例6】≪ワルツ集≫Op.39 (連弾譜)
第6番
第6番
第7番
第7番

 第6番は、高い音域でのスタッカートに加えてleggieroの指示があり、バスもスタッカートと休符によって弾むように奏される。一方の第7番では、dolceとスラーが書き込まれている。調性はCis-Durからcis-Mollになり、軽快な表情が一転、悲しげでメロディックな曲想に変わる。曲の性格から考えて、このpiù Andanteはテンポが遅くなる方が自然であると判断できる。
 ブラームスのpiù Andanteという指示には、「先に進む力が増す」ではなく、「よりAndanteのテンポで」という意味があるようだ。
 では、Andanteからpiù Andanteになる例を見てみよう。  ≪パガニーニの主題による変奏曲≫Op.35-2【譜例7】では、終曲の前2曲がUn poco Andante → Un poco più Andanteと指示されており、終曲である第14変奏はPresto, ma non troppoになる。ブラームスのAndanteがゆったりしたテンポを示すとしたら、ここではテンポが遅くなるはずである。
 まず、第12変奏と第13変奏のつながりを見てみよう。前者にはdolce, espressivoの指示があり、旋律にも音程の幅があるため、ルバートを含めた大げさな表現が可能である。対する後者はpoco espressivoとなるため、表現が少し抑えられる。モティーフが下降音階であることから、先に進む力が強くなるように思われる。

【譜例7】≪パガニーニの主題による変奏曲≫Op.35-2
第12変奏
第13変奏
第14変奏(終曲)

 次に第13変奏と終曲の関係を見てみたい。譜例を見て分かる通り、両者の旋律は同じ動きをしており、第13変奏は、終曲の予兆として存在していると考えられる。終曲は徐々に華やかさを増す構成であるため、その前奏としての第13変奏は、嵐の前の静けさを演出する必要があるだろう。第12変奏は自由で動きのある曲想であったものが、ここでは内省的な性格になると考えると、テンポは遅くなっても良いかもしれない。
 楽譜を見る限り、Andante → più Andanteではテンポがどちらに転んでも許されるように思われ、非常に判断が難しい部分である。実際、ピアニストたちはどのように演奏しているのだろうか。
 ジュリアス・カッチェンJulius Katchen(1926-1969)とヴィルヘルム・バックハウスWilhelm Backhaus(1884-1969)はpiù Andanteで速くすることを選択している。特にカッチェンの演奏は、テンポの違いがはっきりしており、非常にルバートが多いため大まかな数値ではあるが、(第12変奏)♪=150 → (第13変奏)♪=170という変化が見られる。バックハウスの方がテンポの揺れは少ないが、第13変奏の後半でストレット気味に速くなる。両変奏のテンポ変化は♪=140 → ♪=140~160。
 テンポを落として演奏しているピアニストには、クラウディオ・アラウClaudio Arrau(1903-1991)とゲルハルト・オピッツ Gerhard Oppitz (1953-)が挙げられる。両者とも(第12変奏)♪=120 → (第13変奏)♪=90~100というテンポ設定であるが、アラウが第13変奏でルバートを減らし流れを良くしているのに対し、オピッツはより大きくテンポを揺らしている。このあたりもAndante解釈の違いのであろうか。
 しかし、両変奏は第12変奏が6/8拍子、第13変奏が2/4拍子と拍子が違うため、8分音符基準のメトロノーム数値だけではテンポ比較として充分ではないかもしれない。
 では、上記4人のテンポを拍子単位でも考えてみよう。第12変奏は6/8拍子、第13変奏は2/4拍子なので、どちらも2拍子でとることができる。そのように考え直すと、カッチェンは(第12変奏) =50 → (第13変奏) =85、バックハウスは(第12変奏) =46 →(第13変奏) =70~80、アラウとオピッツは(第12変奏) =30 → (第13変奏) =45~50となり、全員がpiù Andanteで速くしていることになる。とすれば、ここでのAndanteは本来の「前進する」という意味に捉えて良いだろう。
 ピアノ・ソナタ第3番Op.5の第2楽章でも、同じように解釈の難しい例がある。この曲の冒頭はAndante espressivo【譜例8】、その後Poco più lento【譜例9】で一度遅くなる。ここまでは何の問題も無い。更に進むとpoco a poco in tempo primo【譜例10】という表記があり、どこで最初のテンポに戻すべきかという明確な指示が無いままAndante molto【譜例11】の文字が現れる。この部分が問題である。Poco più lentoから 直接Andante moltoであれば、テンポが上がることは明白である。しかし、ここではその間にpoco a poco in tempo primoという指示があるため、実際は最初のテンポAndante espressivoからAndante moltoへ変化することになる。ここでのAndanteも、≪パガニーニの主題による変奏曲≫Op.35-2の場合と同じように「前進する」と解釈して構わないのだろうか。
 では、実際に曲の流れを見ながら検証してみたい。
 冒頭部分【譜例8】は、8分音符の単旋律に16分音符で単音の伴奏が付く、単純な構成である。Poco più lento【譜例9】では拍子が変わる。2/4拍子から4/16拍子になり、基準とする音価を短くすることで、テンポが遅くなる要因を作っている。また、強弱指示が一段階落ちてppになることからも、一層落ち着いた雰囲気になると判断できる。poco a poco in tempo primo【譜例10】では2/4拍子に戻り冒頭主題が再現されるため、テンポを戻すという指示は当然と考えられる。
 さて問題のAndante molto【譜例11】であるが、ここでまた拍子が変わり、初めて3拍子になる。更に注目すべきは、楽譜から16分音符が消えることである。それまで綿々と続いてきた16分音符の連鎖がここで初めて切れ、これ以降8分音符が最短音価となる。Andante moltoの前1小節から拍の頭が休符になっていることも、続いていたものが切れそうになっている状態を表しているのであろう。そしてAndante moltoに入る瞬間、1拍目の8分休符で鎖が切れる。これは、この後に全く新しいことが始まることを表しているように思われる。そして、曲の最後Adagio【譜例12】では、基本音価が8分音符から4分音符、更には2分音符へと長さを増し、主題を回想して幕を閉じる。

ピアノ・ソナタ第3番Op.5 第2楽章

【譜例8】
【譜例9】
【譜例10】
【譜例11】
【譜例12】

 このような流れの中で、Andante moltoの部分はどうあるべきだろうか。曲全体を大きく捉えた時、まず見えてくるのは、最短音価が長くなっていくという構造である。冒頭Andanteは16分音符、Andante moltoが8分音符、最後のAdagioが4分音符という大きな流れが見えてくる。ここで明らかなのは、AndanteよりもAdagioが遅いという関係である。それならば、その間にあるAndante moltには、AndanteからAdagioへの移行をスムーズにする役割があると考えられる。つまり、Andanteより遅くAdagioより速いテンポが要求されているのである。ということは、ここでのAndanteはmoltoが付くことによって遅くなると定義することができ、これは≪パガニーニの主題による変奏曲≫Op.35-2のpiù Andanteと反対の解釈になる。この時期、ブラームスの中でAndanteの解釈が定まっていなかったように見受けられる。
 これまでに挙げたpiù AndanteとAndante moltoの例は、いずれも前のテンポ表記から変化する際の指示であったが、では曲の冒頭にAndante moltoと表記されている場合、どのように解釈すればよいのだろうか。
 ピアノ・ソナタ第3番Op.5の第4楽章【譜例13】がその例である。この楽章は"Intermezzo (間奏曲)"と題され、冒頭にAndante moltoの指示がある。ブラームスの全作品中Andante moltoの指示があるのは、上記の同ソナタ第2楽章と合わせて2箇所しかない。この第4楽章では冒頭に書かれているため、曲の途中に指示がある第2楽章とは違い、絶対的なテンポを示していることになる。Andanteはmoltoが付くと遅くなるようであるが、ここでも単に少し遅めと捉えるだけで良いのだろうか。

【譜例13】ピアノ・ソナタ第3番Op.5 第4楽章

 ここでは、まず左手の3連音符がクリアに響くテンポが基準となるだろう。とすると、2拍子というより4/8拍子のような演奏になる。テンポの面では、Adagioと書かれていても納得できるくらいの遅さになるであろう。では何故Andante moltoなのだろうか。
 第2楽章のAndante molto部分との共通点を考えてみると、バスの持続音が挙げられるように思う。第2楽章では、楽譜を見ても明らかなように低音Asの8分音符が常に響いている。同じ音を一定の速さで鳴らし続けることで、最小限の動きで先に進む表現をしているようである。一方、この第4楽章では、第2楽章ほど顕著に現れてはいないが、潜在的にはバスの響きが常にあると考えられる。印象的な3連符のモティーフが、しつこいくらいに繰り返されるため、聞き手の頭の中では常にその音が鳴っている状態になるのかもしれない。この曲はb-Mollなので低音はだいたいBかFが響いている。
 このように、土台となる低音に同じ音を持続させることで、上下運動の少ない安定した状態を表現し、更にその音を一定の間隔で鳴らし続けることにより、前進する動きを表しているのではないだろうか。そう考えると、Andante moltoではテンポが遅くなるというだけでなく、上下運動が少なくなり一定の速さで流れていくような運びとなる。これを演奏法の問題と結びつけると、上下運動というのはルバートに関係していると捉えることができ、Andante moltoではテンポを揺らしすぎないことが望ましいようにも思われる。
 ここまで見た限り、ブラームスのAndanteは一定のテンポで静かに前進するイメージが強いと感じられる。その点、バロック時代のAndanteに共通するものがあるかもしれない。ブラームスの作品ではウォーキング・ベースが用いられているわけではないが、Andanteを発想標語として捉える視点は持つべきだろう。

27 Op.1とOp.5第2楽章は楽譜に詩が記載されており、Op.5第4楽章は"Rückblick(回顧)"というシュテルナウの詩の題名が書かれている。Op.2は楽譜に書かれていないが、ミンネ歌人クラフト・フォン・レッゲンブルクの詩『冬の旅』に霊感を得たと言われている。

2、後期作品~ピアノ小品集~

 ブラームスの晩年のピアノ作品は、最初期に書かれたソナタとは全く違った雰囲気を持っている。ソナタに見られる若いエネルギーは影を潜め、内なる心の葛藤や、どうしようもない悲しみを感じさせる曲が多い。
 ブラームスの後期ピアノ小品集には、Andanteと書かれた曲が多数含まれている。Op.116~119の全20曲中、半数の10曲がAndante若しくはAndantinoと記されている。そして、Andante表記のある曲には"Intermezzo(間奏曲)"と題されているものが多く、違う題名の曲はOp.118-5"Romanze"のみである。
 ブラームスが"Intermezzo"と題した曲は、後期ピアノ小品の10曲以外に7曲あるが、ピアノ四重奏第1番Op.25以外は全てピアノ独奏曲である。晩年のピアノ小品集の先駆けと言える作品≪8つの小品≫Op.76にも、"Intermezzo"と題された曲が4曲入っている。ブラームスのピアノ小品については、題名に深い意味は無いとする見解が多いが、Op.76とOp.116においては"Capriccio"が比較的速く快活であるのに対し、"Intermezzo"は落ち着いた曲想という大まかな区別がつけられるだろう。その"Intermezzo"に表記されている例が多いAndanteは、やはり穏やかな性格を持つ語であると言えそうである。
 ブラームスの初期作品であるピアノ・ソナタと後期のピアノ小品集を比較してみると、前者には曲途中の楽語指示が非常に多く、後者はdolce, espressivoが多く書き込まれている他は、あまり指示が無いことが分かる。後期作品には、前項で検証したAndante moltoやpiù Andanteのような解釈の難しい例も見当たらない。しかし、部分的な指示に使われる楽語が少なくなる代わりに、前章でも述べた通りAndanteに付く楽語の種類が増え、冒頭表記が長くなり多彩さを増しているのである。
 本項では、Andante表記のある後期ピアノ小品の中から3曲を取り上げ、実際その曲をどのように演奏すべきか考えつつ、ブラームスのAndante解釈に迫ってゆきたい。


≪7つの幻想曲≫Op.116-5

 「優雅さ(grazia)と親密な感情(intimissimo sentimento)を持ったAndante」
 この表記だけで曲を想像してみると、愛情豊かな平穏なイメージが湧いてくる。しかし、実際ブラームスがこの楽語を書き込んだ曲は、どこか寂しさの漂う不安定な曲想である。
 まず曲を見て感じることは、これまで見てきたブラームスのAndanteとイメージが合わないということである。休符が多く書かれているため、視覚的には軽快なテンポが求められているような印象を受ける。また、幅広い音程の跳躍もあり、落ち着いた足取りを想像することは難しい。現存する自筆譜で、ブラームスが最初はAndanteではなくAllegrettoを書き込んでいたことが分かっているが、その方が曲想に合っているように思われる。
 AllegrettoとAndanteの明らかな違いはテンポである。敢えてAndanteに変更したということは、速いテンポで軽く弾かれることを恐れたからではないだろうか。この曲の楽譜は休符が多いことから、視覚的には軽やかな表情を連想させるが、ブラームスの意図は違っていたのだろう。AllegrettoではなくAndanteにすることで、軽やかで運動性のある曲ではないこと、内省的な感情の微妙な揺れを表現していることを伝えようとしたように感じられる。


≪3つの間奏曲≫Op.117-2

 Andanteにnon troppoが付く例はこの1曲のみである。Andanteをやり過ぎないようにというのはどのように解釈すべきだろうか。
 この楽譜を見ると、幅広い音域を動く波のような音の並び方をしており、大きく抑揚をつけて演奏されることが望ましく思われる。con molta espressivoという言葉も大げさな表現を求めるものである。ここでは、前記のOp.116-5のように微妙な心の揺れ動きではなく、自分の外に出される感情を表しているのではないだろうか。それならば、non troppoはAndanteの持つ穏やかな性格が強すぎないようにという指示と捉えられる。
 32分音符が並んでおり速いテンポを連想させる楽譜であるが、実際はAndanteという決して速くはないテンポが指定されており、espressivoが加えられていることからも、ブラームスは一つ一つの音を大切にして演奏されることを意図していたと考えるべきだろう。

≪6つの小品≫Op.118-6

 通常largoは遅いテンポを表すが、前章でも触れた通り、ブラームス作品では、largoが明確に速度標語として用いられている例は見られない。この曲の場合も、largo元来の意味である「ゆったりと、幅広く」と解釈すべきであろう。
 mestoは、ホルン三重奏曲Op.40の第3楽章Adagio mesto で使われている。この作品は母の死を受けて書かれたもので、この上なく陰鬱な曲想である。
 晩年のピアノ小品が多く書かれた時期も、ブラームスの周囲には死の影がまとわりついていた。親しい友人を多く失い、その悲痛な気持ちが"Andante, largo e mesto"という言葉に表れているのかもしれない。非常に独特の雰囲気を持つ曲であり、その響きは、ブラームスの音楽が新ウィーン楽派に影響を与えたことを感じさせる。
 右手の旋律は隣り合う3音から成り、静かなAndanteの性格に合っているが、左手の分散和音が静かな中にも大きなうねりが生じているような印象を与える。中間部は激しい曲想になるが、変化を示す新しい楽語は表記されていない。仮に、この部分もAndanteなのだとしたら、ブラームスの後期作品におけるAndante解釈はますます難解なものとなるだろう。

 後期作品には、初期作品に見られた「静かな前進」という要素が非常に少ないと感じられる。目に見える動作としての動きではなく、心の動き、感情の波という要素が核となっているように思われる。初期作品ではバロック的なスムーズに進行するAndanteという定義ができたが、後期の作品ではもっと内面の動きを考えなくてはならないようである。
 メトロノームが開発されるずっと以前、時間の感覚を区切るため利用されていた最古の基準は人間の脈拍であった(28)。この感覚は、感情の波とテンポの同調を大切にしていたブラームスの考えに近いように思われる。彼の音楽は、まさしく人間の音楽と言うことができるかもしれない。後期の作品ではその要素が一層強くなり、Andanteの定義も、視覚的に認識できる「前進」ではなく、感覚的な心の動きに対応していくのではないだろうか。
 Andanteの持つ「前に進む」というイメージは、時間の観点から捉えると、今まさに生きていることと例えることができる。静かな動きでゆっくりと進むAndanteは、毎日を平穏に生きていくというブラームスの理想であったかもしれない。そして晩年の作品では、そこに絶望と諦観の色合いが濃くなってくるのである。

28 『ニューグローヴ音楽辞典』第18巻 p.209 <メトロノーム>の項


まとめ

 最後に、これまでの考察を振り返ってまとめたいと思う。
 まず、第1章でAndanteの歴史を見た結果、ブラームスの生きた時代には「Andanteは緩やかなテンポ」という解釈が主流となっていたことが分かった。しかし、極端に遅いテンポを好む作曲家もいれば、遅すぎないよう注意を促す作曲家もおり、Andante解釈の幅広さが見て取れた。  第2章では、ブラームスの使った楽語について検証した。
 速度標語についての考察では、ブラームスがAndanteを好んで使っており、様々な発想標語と共に用いていることが分かった。更に細かく見ていくと、晩年に近づくにつれ使用する発想標語の種類が増え、ブラームスの楽語用法に経年変化があったことを窺わせた。ドイツ語表記についても検証した結果、ブラームスのAndanteにはテンポと性格の両面があり、「やや遅め」のテンポで「穏やかな」性格の語という結論に達した。
 最後に、第3章でブラームスのピアノ作品について演奏法の観点から考察し、前期と後期の作品を分けて検証することで、ブラームスのAndante解釈の変化を探ることも試みた。
 前期の作品を見ていくと、この頃のブラームスのAndanteからは「一定の速度で静かに進む」というイメージが感じ取られ、これはバロック時代のAndanteにも通じる部分があると言えるだろう。後期の作品になると、Andanteの「静かな歩み」は、外的な動作ではなく内的な心の動きを表す要素が強くなり、ブラームスのAndanteがより深い意味を持つ言葉になっていくように思われる。
 ブラームス作品におけるAndanteは、落ち着いて一歩ずつ着実に進むイメージと考えられるが、本当に大切なことは演奏者が曲の核心を感じ取り、自分の感情と音楽をシンクロさせることであり、それによって自然とテンポが定められるのだろう。



おわりに

 ここで、「はじめに」で触れたピアノ協奏曲第2番Op.83第3楽章のAndanteについてもう一度考えてみたいと思う。この作品は、ブラームスの手によるメトロノーム数値と、現在演奏されている平均的なテンポとの間にかなりの隔たりがあるというもので、私たちにはブラームスのメトロノーム数値が速すぎるように感じる。
 ブラームスのAndanteは一歩ずつ着実に進むイメージ、ということは一音一音を大切に弾く(聴く)ということに繋がるだろう。ブラームスは、そのように演奏できるテンポを指定したはずである。 ところで、音は細ければ細いほど動きやすく、音に厚みを与えることによってテンポは遅くなる(29)。オーケストラの規模が大きくなり、個々の楽器の音量も増した今日において、音に厚みが出てしまうのは必然である。そういった中で、ブラームスが指定したメトロノーム数値に従って、このAndante楽章の世界を表現することに無理が生じてきたのだろう。
 ブラームスの演奏テンポに対する考え方を示す興味深いエピソードがある。
 アマチュア・ヴァイオリン奏者のアーウィン・フォン・ベッケラートAlwin von Beckerathが、ブラームスの弦楽四重奏曲第2番Op.51-2を演奏した際のことである。終楽章のテンポに関して、彼ともう一人のヴァイオリン奏者の意見が合わず、作曲者自身に意見を求める手紙を書いた。以下はそれに対するブラームスの返事である。

「あなたが私にメトロノーム基金を少し払えば、毎週違うメトロノーム数値を届けましょう。正常な人にとって、その数字は一週間より長く有効でありえないのです。ついでに申しますと、あなたは正しい、そして第一ヴァイオリン奏者も正しい!」(30)

 ブラームスは演奏者に自由を与えると共に、解決できない課題をも与えたのだろうか。「芸術に答えなんてない」というのが唯一の答えなのかもしれない。

29 スコダ,1963年 p.38
30 Avins, 2003 p.21


参考文献
外国語
  • Avins, Styla 'Performing Brahms's music: clues from his letters', PERFORMING BRAHMS Early Evidence of Performing Style (Cambridge University Press, 2003)
  • Brown, Clive. Classical & Romantic Performing Practice 1750-1900 (Oxford Univercity Press, 1999)
  • Kraus, Detlef. JOHANNES BRAHMS Composer for the Piano, trans. Lillian Lim (Florian Noetzel Verlag, 1988)
  • Sherman, Bernard D. 'Metronom marks, timings, and other period evidence regarding tempo in Brahms', PERFORMING BRAHMS Early Evidence of Performing Style (Cambridge University Press, 2003)
日本語
  • 森田学『音楽用語のイタリア語』(三修社,2007年)
  • 関孝弘,ラーゴ・マリアンジェラ―『イタリアの日常会話から学ぶ これで納得!よくわかる音楽用語のはなし』(全音楽譜出版社,2006年)
  • クルト・ザックス『リズムとテンポ』岸辺成雄訳 (音楽之友社,1979年)
  • エヴァ&パウル・バドゥラ=スコダ『モーツァルト 演奏法と解釈』渡辺護訳 (音楽之友社,1963年)
辞典
  • Bremer, Friedrich. Handlexikon der Musik (Reclam, 1882)
  • Grassineau, James. Musical Dictionary (Broude Brothers, 1740)
  • Grove, George. A Dictionary of Music and Musicians (Macmillan and Co.1879)
  • 『ニューグローヴ世界音楽大事典』柴田南雄,遠山一行総監修 (講談社,1994~1995年)
  • 『新音楽辞典 楽語』浅香淳編 (音楽之友社,1994年)
  • 『伊和中辞典』池田廉編 (小学館,1996年)
  • 『標準音楽辞典』目黒三策編 (音楽之友社,1971年)
  • 『マイスター独和辞典』戸川敬一他編(大修館書店,1999年)
録音資料
  • "CLAUDIO ARRAU" GREAT PIANISTS OF THE 20th CENTURY (BMG, 1998)
  • Wilhelm Backhaus / Brahms:Piano Concerto No.1 (HNH International Ltd. 2003)
  • ジュリアス・カッチェン/ブラームス:パガニーニ&ヘンデル変奏曲、4つのバラード(The Decca Record Co. Ltd. 1965)
  • ゲルハルト・オピッツ/ブラームス:ソロ・ピアノ作品全集 (BMG,1990)




付録 ブラームス作品のテンポ表記一覧
*ヘンレ版、ブライトコプフ版旧全集の楽譜に基づく。楽譜を入手出来なかった曲は作品目録で冒頭楽語のみ確認。主に太字ブロック体の表記を抜き出し、イタリック体表記は重要と考えられるものだけ記載した。
 冒頭数字は作曲年、I~Vは楽章を指す。
 曲の題名は『作曲家別名曲解説ライブラリー(7)ブラームス』(音楽之友社)に従って日本語で記した。
◆ピアノ曲
1851 スケルツォOp.4
Rasch und feurig→Trio I →D.C.→Trio II Molto espressivo→Più mosso→Più sostenuto
1852 ピアノ・ソナタ第2番Op.2
I Allegro non troppo, ma energico→Più mosso
II Andante con espressione→Largo→Tempo I
III SCHERZO Allegro→TRIO Poco più moderato→Tempo I→Più moderato→Tempo I
IV FINALE Introduzione.Sostenuto→Allegro non troppo e rubato→Animato→Poco sostenuto→Molto sostenuto
1853 ピアノ・ソナタ第1番Op.1
I Allegro
II Andante→Adagio
III SCHERZO Allegro molto e con fuoco→Più mosso→Presto→(D.C.)
IV Allegro con fuoco→Presto non troppo ed agitato
1853 ピアノ・ソナタ第3番Op.5
I Allegro maestoso→Più animato
II ANDANTE Andante espressivo→Poco più lento→poco a poco in tempo primo →Andante molto→Adagio
III Allegro energico→TRIO→(D.C.)
IV INTERMEZZO Andante molto
V FINALE Allegro moderato ma rubato→Più mosso→Presto→Tempo I
1854 シューマンの主題による変奏曲Op.9
THEME Ziemlich langsam→2 Poco più moto→3 Tempo di tema→4 Poco più moto→5 Allegro capriccioso→6 Allegro→7 Andante→8 Andante (non troppo lento) →9 Schnell→10 Poco Adagio→11 Un poco più animato→12 Allegretto, poco scherzando→Presto→13 Non troppo Presto→14 Andante→15 Poco Adagio
1854 4つのバラードOp.10
1Andante→Poco più moto→Tempo I→Poco più moto→Allegro (ma non troppo) →Tempo I
2Andante→Allegro non troppo (doppio movimento)→Molto staccato e leggiero→Tempo I Andante
3INTERMEZZO Allegro
4Andante con moto→Più lento→Tempo I→Più lento→Adagio
1855 ハンガリー民謡による変奏曲Op.21-2
Allegro→7 Poco più lento→13途中 Allegro (il doppio Movimento) →Tempo I più animato
1855 2つのガヴォットWoO 3
冒頭表記無し
1855 2つのジーグWoO 4
冒頭表記無し
1855 2つのサラバンドWoO 5
冒頭表記無し
1857 自作主題による変奏曲Op.21-1
Poco larghetto→2 Più moto→5 Tempo di tema→6 Più moto→7 Andante con moto→8 Allegro non troppo→11 Tempo di tema, poco più lento
1861 シューマンの主題による変奏曲 (4手) Op.23
Leise und innig→1 L'istesso tempo. Andante molto moderato→5 Poco più animato→6 Allegro non troppo→7 Con moto. L'istesso Tempo→8 Poco più vivo→10 Molto moderato, alla Marcia
1861 ヘンデルの主題による変奏曲Op.24
テンポ表記無し
1863 パガニーニの主題による変奏曲Op.35-1
Non troppo presto→11 Andante→14 Allegro→Presto, ma non troppo
1863 パガニーニの主題による変奏曲Op.35-2
Non troppo presto→2 Poco animato→4 Poco Allegretto→6 Poco più vivace→8 Allegro→9 ♪= del Thema→10 Feroce, energico→11 Vivace→12 Un poco Andante→13 Un poco più Andante→14 Presto, ma non troppo
1865 ワルツ集 (4手) Op.39
1 Tempo giusto→4 Poco sostenuto→6 Vivace→7 Poco più Andante
1852~1869 ハンガリー舞曲集 (4手) WoO 1
1 Allegro molto
2 Allegro non assai→Vivo→Tempo I (Allegro non assai)
3 Allegretto→vivace→Tempo I
4 Poco sostenuto→Vivace→Molto Allegro→ (D.C.)
5 Allegro→Vivace→Allegro
6 Vivace→Molto sostenuto→Vivace
7 Allegretto
8 Presto
9 Allegro non troppo→Poco sostenuto→Tempo I
10 Presto→sempre più presto
11 Poco Andante
12 Presto→Poco meno presto→Presto
13 Andantino grazioso→Vivace→Andantino grazioso
14 Un poco Andante
15 Allegretto grazioso→più vivace→più presto
16 Con moto→Presto→Poco meno presto→Tempo I
17 Andantino→Vivace→Meno presto→Vivace
18 Molto vivace
19 Allegretto→Più presto→Allegretto
20 Poco Allegretto→Vivace→Tempo I
21 Vivace→Più presto
1873 ハイドンの主題による変奏曲(2台4手)Op.56b
「Chorale:St. Antoni」 Andante→1 Andante con moto→2 Vivace→3 Con moto→4 Andante→5 Poco presto→6 Vivace→7 Grazioso→8 Poco presto→FINALE Andante
1878 8つの小品Op.76
1 CAPRICCIO Un poco agitato/Unruhig bewegt
2 CAPRICCIO Allegretto non troppo
3 INTERMEZZO Grazioso/Anmutig, ausdrucksvoll→lento
4 INTERMEZZO Allegretto grazioso
5 CAPRICCIO Agitato, ma non troppo presto/Sehr ausgeregt, doch nicht zu schnell→rit.→Tempo I
6 INTERMEZZO Andante con moto/Sanft bewegt
7 INTERMEZZO Moderato semplice
8 CAPRICCIO Grazioso ed un poco vivace/Anmutig lebhaft→più Adagio→string.
1879 2つのラプソディーOp.79
1 Agitato
2 Molto passionato, ma non troppo allegro
1890 51の練習曲WoO 6
4 Andante
12 Moderato
13 Moderato
14 Vivace
19 Moderato
25 Non troppo allegro
29 Presto
31 Non troppo allegro
38 Allegro
43a Andante o Allegro
43b Andante
47 Allegro
51 Vivace
1892 7つの幻想曲Op.116
1 CAPRICCIO Presto energico
2 INTERMEZZO Andante→Non troppo presto ( = )→Andante( = )
3 CAPRICCIO Allegro passionato→Un poco meno Allegro→Tempo I
4 INTERMEZZO Adagio
5 INTERMEZZO Andante con grazia ed intimissimo sentimento
6 INTERMEZZO Andantino teneramente
7 CAPRICCIO Allegro agitato
1892 3つの間奏曲Op.117
1 Andante moderato→Più Adagio→Un poco più Andante
2 Andante non troppo e con molta espressione→Più Adagio
3 Andante con moto→Poco più lento→Più moto ed espressivo→Tempo I→Più lento
1892 6つの小品Op.118
1 INTERMEZZO Allegro non assai, ma molto appassionato
2 INTERMEZZO Andante teneramente→più lento→in tempo→più lento→Tempo I→più lento
3 BALLADE Allegro energico
4 INTERMEZZO Allegretto un poco agitato
5 ROMANZE Andante→Allegretto grazioso→Tempo I
6 INTERMEZZO Andante, largo e mesto→lento
1892 4つの小品Op.119
1 INTERMEZZO Adagio
2 INTERMEZZO Andantino un poco agitato→Andantino grazioso→tempo primo
3 INTERMEZZO Grazioso e giocoso
4 RHAPSODIE Allegro risoluto

◆管弦楽
1858 ピアノ協奏曲第1番Op.15
I Maestoso→Poco più moderato→Tempo I→Poco più moderato→Tempo I poco più animato
II Adagio
III RONDO Allegro non troppo→quasi Fantasia→a tempo→Meno mosso→Più animato→Tempo I
1859 セレナード第1番Op.11
I Allegro molto
II SCHERZO Allegro non troppo→Un poco ritenuto→in tempo→TRIO Poco più moto→(D.C).
III Adagio non troppo
IV MENUETTOI →MENUETTOII →D.C.→CODA
V SCHERZO Allegro→TRIO→(D.C.)
VI RONDO Allegro
1859 セレナード第2番Op.16
I Allegro moderato
II SCHERZO Vivace→TRIO→(D.C.)→CODA
III Adagio non troppo
IV Quasi Menuetto→TRIO→(D.C.)→CODA
V RONDO Allegro
1873 ハイドンの主題による変奏曲Op.56a
「Chorale:St.Antoni」Andante→1 Poco più animato→2 Più vivace→3 Con moto→4 Andante con moto→5 Vivace→6 Vivace→7 Grazioso→8 Presto non troppo→FINALE Andante→molto rit.→in tempo
1876 交響曲第1番Op.68
I Un poco sostenuto→Allegro→Meno Allegro
II Andante sostenuto
III Un poco Allegretto e grazioso→poco a poco più tranquillo
IV Adagio→string. Poco a poco→a tempo→string. molto→a tempo→Più Andante→Allegro non troppo, ma con brio→calando→animato→Più Allegro
1877 交響曲第2番Op.73
I Allegro non troppo→un poco stringendo→ritard.→in tempo, ma più tranquillo→poco rit.→in tempo, sempre tranquillo
II Adagio non troppo→L'istesso tempo, ma grazioso
III Allegretto grazioso (Quasi Andantino) →Presto ma non assai ( = ) →Tempo primo→Presto ma non assai→poco a poco Tempo primo→poco sost.
IV Allegro con spirito→Tranquillo→Sempre più tranquillo→in tempo
1878 ヴァイオリン協奏曲Op.77
I Allegro non troppo
II Adagio→più largamente→calando→Tempo I
III Allegro giocoso, ma non troppo vivace→Poco più presto
1880 大学祝典序曲Op.80
Allegro→L'istesso tempo, un poco maestoso→animato→Maestoso (♪= )
1880 悲劇的序曲Op.81 Allegro ma non troppo→Molto più moderato ( = ) →Tempo primo(ma tranquillo) ( = ) →un poco sosten.→in tempo
1881 ピアノ協奏曲第2番Op.83
I Allegro non troppo ( =92)
II Allegro appassionato ( =76) →largamente→sempre più agitato
III Andante ( =84) →rit.→in tempo→rit. molto→Più Adagio→rit.→Tempo I→rit.→Più Adagio
IV Allegretto grazioso ( =104) →un poco rit.→in tempo→Un poco più presto ( =138)
1883 交響曲第3番Op.90
I Allegro con brio→poco rit.→Un poco sostenuto→Tempo I II Andante→poco rit.
III Poco Allegretto
IV Allegro→Un poco sostenuto
1885 交響曲第4番Op.98
I Allegro non troppo
II Andante moderato→rit.→a tempo→poco rit.
III Allegro giocoso→Poco meno presto→Tempo I
IV Allegro energico e passionato→rit.→ (a tempo無し) →poco ritard.→Più Allegro
1887 ヴァイオリンとチェロのための協奏曲Op.102
I Allegro
II Andante
III Vivace non troppo→Poco meno Allegro→Tempo primo

◆室内楽
1853 ≪F.A.E.ソナタ≫スケルツォWoO 2
Allegro→un poco rit.→a tempo→TRIO Più Moderato→in tempo (Tempo Iの意味) →un poco rit.→a tempo
1854 ピアノ三重奏第1番Op.8 (第1作)
I Allegro con moto ( =72) →Tempo un poco più Moderato→Schneller
II SCHERZO Allegro molto ( =100)→Più lento ( =72) →Tempo primo→Un poco più lento
III Adagio non troppo ( =63) →Allegro (doppio movimento) →Tempo primo ( = )
IV FINALE Allegro molto agitato ( =66) →Un poco più lento→Tempo primo→Schneller
1860 弦楽六重奏曲第1番Op.18
I Allegro ma non troppo→poco rit.→in tempo→poco rit.→in tempo→Poco più moderato
II Andante, ma moderato
III SCHERZO Allegro molto→TRIO Animato→D.C.→CODA Più animato
IV RONDO Poco Allegretto e grazioso→Animato, poco a poco più
1861 ピアノ四重奏曲第1番Op.25
I Allegro
II INTERMEZZO Allegro ma non troppo→TRIO Animato→Tempo del Intermezzo→CODA Animato
III Andante con moto→Animato→(poco a poco Andante con moto)
IV Rondo alla Zingarese Presto→Meno Presto→Tempo I→Meno Presto→Tempo I→Meno Presto→Poco più Presto→Molto Presto
1861 ピアノ四重奏曲第2番Op.26
I Allegro non troppo
II Poco Adagio
III SCHERZO Poco Allegro→Animato→TRIO→D.C.
IV FINALE Allegro→Animato
1864 ピアノ五重奏曲Op.34
I Allegro non troppo→Poco sostenuto→Tempo I
II Andante, un poco Adagio→accel.→poco rit.→Tempo I
III SCHERZO Allegro→TRIO→D.C.
IV FINALE Poco sostenuto→Allegro non troppo ( = ) →un pochettino più animato→Tempo I→un pochettino più animato→Tempo I→Presto, non troppo
1865 弦楽六重奏曲第2番Op.36
I Allegro non troppo→Un poco sostenuto
II SCHERZO Allegro non troppo→Presto giocoso→Tempo primo→Animato
III Adagio→rit.→a tempo→rit.→ (a tempo無し) →rit.→Più animato→Adagio (♪= ) →poco a poco rit.→molto rit.
IV Poco Allegro→Animato
1865 チェロ・ソナタ第1番Op.38 I Allegro non troppo
II Allegretto quasi Menuetto→TRIO→(D.C.)
III Allegro→Più presto
1865 ホルン三重奏曲Op.40
I Andante→Poco più animato→Tempo I→Poco più animato→poco a poco rit.→Tempo I→un poco animato poi a poi
II SCHERZO Allegro→rit. poco a poco→Molto meno Allegro→(D.C.)
III Adagio mesto→un poco stringendo→in tempo→poco accel→passionata→poco rit.→tempo primo
IV FINALE Allegro con brio→rit. poco a poco→accel. e cresc. poco a poco→in tempo
1873 弦楽四重奏曲第1番Op.51-1
I Allegro
II ROMANZE Poco Adagio
III Allegretto molto moderato e comodo→Un poco più animato→(D.C.)
IV Allegro
1873 弦楽四重奏曲第2番Op.51-2
I Allegro non troppo→ritard.→in tempo→ritard. poco a poco→in tempo→ritard.→in tempo→ritard. poco a poco→in tempo→più animato sempre
II Andante moderato
III Quasi Minuetto, moderato→Allegretto vivace→Tempo di Minuetto→Allegretto vivace→Tempo di Minuetto
IV FINALE Allegro non assai→Poco tranquillo→Più vivace
1875 ピアノ四重奏曲第3番Op.60
I Allegro non troppo
II SCHERZO Allegro
III Andante
IV FINALE Allegro comodo→tranquillo→Tempo I
1876 弦楽四重奏曲第3番Op.67
I Vivace→calando→in tempo→rit.→in tempo
II Andante→rit. un poco→in tempo
III Agitato (Allegretto non troppo) →rit.→poco a poco in tempo→TRIO→ (D.C.) →CODA
IV Poco Allegretto con Variazioni→Doppio Movimento
1879 ヴァイオリン・ソナタ第1番Op.78
I Vivace ma non troppo→rit.→in tempo→più sostenuto→Tempo I→rit.→in tempo
II Adagio→più andante→rit.→Adagio come prima→rit.
III Allegro molto moderato→tranquillo→in tempo→poco rit.→Più moderato→poco rit.→tranquillo
1882 ピアノ三重奏曲第2番Op.87
I Allegro( =138)→Animato
II Andante con moto→rit.→in tempo(Andante con moto)
III SCHERZO Presto→Poco meno presto→Presto
IV FINALE Allegro giocoso
1882 弦楽五重奏Op.88
I Allegro non troppo ma con brio→rit. poco a poco→Più moderato→Tempo I
II Grave ed appassionato→Allegretto vivace→Tempo I→Presto→ritard. molto
III Allegro energico→Presto
1886 チェロ・ソナタ第2番Op.99
I Allegro vivace
II Adagio affettuoso
III Allegro passionato
IV Allegro molto
1886 ヴァイオリン・ソナタ第2番Op.100
I Allegro amabile→Vivace→poco rit. (→a tempo無し) →poco rit.→a tempo
II Andante tranquillo→Vivace→Andante→Vivace di più→Andante→Vivace
III Allegretto grazioso (quasi Andante)
1886 ピアノ三重奏曲第3番Op.101
I Allegro energico
II Presto non assai
III Andante grazioso→( = ) (quasi animato)
IV Allegro molto→meno Allegro→Tempo I→meno Allegro→Tempo I
1888 ヴァイオリン・ソナタ第3番Op.108
I Allegro
II Adagio
III Un poco presto e con sentimento→un poco rit.→meno presto→rit.→in tempo
IV Presto agitato
1890 弦楽五重奏曲第2番Op.111
I Allegro non troppo, ma con brio
II Adagio
III Un poco Allegretto
IV Vivace ma non troppo presto→animato
1891 ピアノ三重奏曲第1番Op.8 (改作)
I Allegro con brio→Tranquillo
II SCHERZO Allegro molto→Meno allegro→Tempo I
III Adagio
IV Allegro
1891 クラリネット三重奏曲Op.114
I Allegro→Poco meno Allegro
II Adagio
III Andante grazioso→Un poco sostenuto
IV Allegro
1891 クラリネット五重奏曲Op.115
I Allegro→Quasi sostenuto→(in tempo)
II Adagio→Più lento
III Andantino→Presto non assai, ma con sentimento
IV Con moto→Un poco meno mosso
1894 クラリネット・ソナタ第1番Op.120-1
I Allegro appassionato→Sostenuto ed espressivo
II Andante un poco Adagio
III Allegretto grazioso
IV Vivace
1894 クラリネット・ソナタ第2番Op.120-2
I Allegro amabile→Tranquillo
II Allegro appassionato→Sostenuto→Tempo I
III Andante con moto→Allegro→Più tranquillo

◆歌曲
1853 6つの歌Op.3
1 Sehr langsam→Poco più mosso→Tempo I
2 Moderato ma non troppo→Poco più lento
3 Vivace con fuoco→sehr zart und innig→Lebhaft
4 Mit feurigem Schwung
5 Poco agitato
6 Poco allegretto→Poco animato
1853 6つの歌Op.6
1 Allegretto
2 Con moto
3 Poco agitato
4 Con moto
5 Poco Andante
6 Allegretto non troppo
1853 6つの歌Op.7
1 Andante con espressione
2 Andante con moto
3 Andante moderato
4 Bewegt
5 Langsam
6 Allegro agitato
1854? ≪月夜≫WoO.21
Andante/Träumerisch
1858 歌曲とロマンスOp.14
1 Andante
2 Andantino
3 Con moto
4 Langsam, sehr innig→Poco più animato→Tempo I
5 Sehr schnell
6 Andante, con espressione
7 Allegretto
8 Andante
1858 5つの詩Op.19
1 Poco Adagio
2 Nicht zu langsam und mit starkem Ausdruck
3 L'istesso tempo
4 Allegro
5 Poco lento→Poco più lento
1860 3つの二重唱曲Op.20 1 Allegro
2 Poco Adagio molto espressivo
3 Andante
1861 4つの歌Op.43
1 Mässig→Ziemlich langsam
2 Sehr langsam und ausdrucksvoll
3 Durchaus nicht zu langsam und ziemlich frei vorzutragen
4 Allegro
1862 4つの二重唱曲Op.28
1 Andante (→animato→ritard.) →Tempo I
2 Vivace
3 In sanfter Bewegung
4 Allegro
1862?66? ≪雨の歌≫WoO.23
Andantino
1863 3つの四重唱曲Op.31
1 Tempo di Menuetto, con moto
2 Allegretto con grazia→poco a poco ritardando---in tempo
3 Con moto e grazioso→poco rit.→a tempo
1864 プラーテンとダウマーによる歌曲と歌Op.32
1 Andante
2 Langsam→animato→poco riten.→Tempo I
3 Mässig
4 Moderato, ma agitato→Più agitato
5 Allegro
6 Andante con moto
7 Con moto, espressivo ma grazioso
8 In gehender Bewegung
9 Adagio
1868 ティークの「マゲローネ」のロマンスOp.33
1 Allegro
2 Kräftig
3 Andante→Vivace→Vivace→ad libit.→a tempo, vivace
4 Andante→Poco vivace e sempre animato→Tempo I
5 Allegro
6 Allegro→Poco sostenuto→Poco animato→Vivace, ma non troppo
7 Lebhaft→Animato
8 Andante→Allegro→Andante
9 Langsam→Animato
10 Allegro→più Adagio→Tempo I
11 Etwas langsam
12 Poco Andante
13 Zart, heimlich/Vivace
14 Lebhaft
15 Ziemlich langsam→Lebhaft→ad libit.→a Tempo→Tempo I/Ziemlich langsam
1868 4つの歌Op.46
1 Ziemlich langsam
2 Andante
3 Lebhaft, doch nicht zu rasch→Poco animato
4 Ziemlich langsam
1868 5つの歌曲Op.47
1 Grazioso
2 Appassionato
3 Nicht zu langsam
4 Lebhaft
5 Non troppo lento
1868 7つの歌曲Op.48
1 Con grazia→animato→(Tempo I)
2 Andante con moto
3 Etwas langsam
4 Poco andante
5 Andante
6 Andante
7 Ziemlich langsam
1868? 5つの歌曲Op.49
1 Andante espressivo
2 Andante/Sehr zart
3 Langsam→Lebhaft
4 Zart bewegt
5 Ruhig→un poco animato→Tempo I
1871 ダウマーによる歌曲と歌Op.57
1 Lebhaft→Ruhiger→Allmählig lebhafter→Sehr lebhaft
2 Poco Andante
3 Sehr langsam
4 Ziemlich langsam
5 Agitato
6 Sanft bewegt
7 Etwas langsam
8 Langsam→Adagio→Lebhaft
1871 歌曲と歌Op.58
1 Vivace
2 Lebhaft
3 Grazioso
4 Lebhaft und heimlich
5 Sehr langsam
6 Gehend
7 Sehr langsam
8 Grazioso
1873 歌曲と歌Op.59
1 Langsam
2 Etwas bewegt
3 In mässiger, ruhiger Bewegung
4 Sehr bewegt
5 Con moto
6 Poco Andante
7 Bewegt
8 Ziemlich langsam
1873 ≪ハムレット≫から5つのオフィーリアの歌WoO.22
1 Andante con moto
2~5 冒頭表記無し
1874 4つの二重唱曲Op.61
1 Allegretto
2 Andante
3 Poco Andante
4 Vivace
1874 9つの歌曲と歌Op.63
1 Lebhaft
2 Innig→allma:hlich lebhafter→Tempo I
3 Etwas langsam→allmaehlich lebhafter
4 Sehr lebhaft
5 Lebhaft
6 Zart bewegt
7 Zart bewegt
8 Etwas langsam→Lebhafter werdend→Tempo I
9 Etwas langsam
1874 3つの四重唱曲Op.64
1 Bewegt, doch nicht zu schnell→più Adagio→più Lento
2 Ruhig
3 Andante con moto
1874 新・愛の歌Op.65
1 Lebhaft, doch nicht schnell→7 Lebhaft→8 Ruhig→11 Lebhaft→12 Lebhaft→13 Lebhaft→14 Lebhaft
1875 5つの二重唱曲Op.66
1 Andante
2 Andante
3 Ruhig
4 Lebhaft
5 Lebhaft, heimlich und schalkhalf
1877 9つの歌Op.69
1 Unruhig/Poco Allegro e grazioso
2 Einfach/Comodo
3 Bewegt/Con moto
4 Sehr belebt und heimlich
5 Sehr lebhaft
6 Bewegt
7 Andante
8 Sehr belebt
9 Belebt→Schnell und sehr lebhaft→Wenig langsamer→Schnell
1877 4つの歌Op.70
1 Traurig, doch nicht zu langsam
2 Andante espressivo
3 Grazioso
4 Ruhig→Langsamer/Leise und feierlich
1877 5つの歌Op.71
1 Anmutig bewegt
2 Nicht zu langsam und mit Anmut
3 Belebt und heimlich
4 Sehr lebhaft→etwas ruhiger/più tranquillo→Tempo primo→Lebhaft→un poco rit.→Lebhaft
5 Sehr innig, doch nicht zu langsam
1877 5つの歌Op.72
1 Bewegt, doch nicht zu sehr
2 Andante con moto
3 Langsam
4 Mässig bewegt/Andante con moto
5 Vivace
1878 バラードとロマンスOp.75
1 Allegro
2 Lebhaft und lustig/Allegretto giocoso→poco rit.→Lebhaft /Lebhaft
3 Anmutig bewegt und sehr innig/Andante grazioso e molt espressivo
4 Presto
1879? 低声のための6つの歌曲Op.86
1 Etwas bewegt
2 Langsam
3 Langsam
4 Ziemlich langsam, gehend/Andante moderato
5 Sehr leidenschaftlich, doch nicht zu rasch
6 Langsam→etwas bewegter/poco più moto→Langsam
1881? ロマンスと歌曲 Op.84
1 Andante con moto
2 Lebhaft/Allegro grazioso
3 Sehr lebhaft
4 Lebhaft und gut gelaunt→Lebhafter
5 Bewegt und heimlich→(Etwas lebhafter)→(Wie zu Anfang)→(Etwas lebhafter)
1882? 6つの歌曲Op.85
1 Langsam
2 Langsam
3 Gehend
4 Bewegt
5 Lebhaft
6 Langsam
1884? 2つの歌Op.91
1 Adagio espressivo
2 Andante con moto
1884 4つの四重唱曲Op.92
1 Andante con moto
2 Andante
3 Andante
4 Lebhaft→Anmutig bewegt
1884? 5つの歌曲 Op.94
1 Langsam
2 Gehalten
3 Unruhig bewegt, doch nicht schnell→Nach und nach lebhafter→immer lebhafter→Tempo primo
4 Ziemlich langsam
5 Tempo giusto
1884? 7つの歌Op.95
1 Munter, mit freiem Vortrag→Animato grazioso→Lebhaft
2 Schnell und heimlich
3 Sehr lebhaft und ungeduldig
4 Lebhaft
5 Allegretto→Animato ma grazioso/Anmutig belebt
6 Behaglich
7 Einfach
1884 4つの歌曲Op.96
1 Sehr langsam
2 Andante espressivo
3 Unruhig bewegt
4 Andante sostenuto
1885 6つの歌曲Op.97
1 Langsam
2 Lebhaft und rasch
3 Schnell
4 Lebhaft und anmutig
5 Zart bewegt
6 Anmutig bewegt
1886 低声のための5つの歌曲Op.105
1 Zart
2 Langsam und leise
3 Einfach und ausdrucksvoll/Andante espressivo
4 Mässig/Andante moderato
5 Angemessen bewegt/Con moto→Lebhafter/Più mosso→Wie zu Anfang
1886 5つの歌曲Op.106
1 Anmutig bewegt/Allegretto grazioso
2 Anmutig bewegt und ausdrucksvoll
3 Träumerisch
4 Bewegt und leise
5 In langsam gehender Bewegung
1886 5つの歌曲Op.107
1 Sehr lebhaft und ausdrucksvoll
2 Mit Laune
3 Lebhaft und anmutig
4 Grazioso
5 Leise bewegt
1887 ジプシーの歌Op.103
1 Allegro agitato→Più presto
2 Allegro molto
3 Allegretto→Allegro→Allegretto→Allegro
4 Vivace grazioso
5 Allegro giocoso
6 Vivace grazioso
7 Andantino grazioso
8 Andantino semplice
9 Allegro→Più presto
10 Andantino
11 Allegro passionato
1891 6つの四重唱曲Op.112
1 Andante
2 Unruhig bewegt
3 Allegro non troppo
4 Allegretto grazioso
5 Allegro
6 Presto
1896 4つの厳粛な歌Op.121
1 Andante→Allegro→Andante→Allegro
2 Andante
3 Grave
4 Andante con moto ed anima→Adagio→più moto→Sostenuto un poco
?カノン≪格言≫WoO.27
Langsam
(Zum Schluss) Ruhig

◆合唱曲
1856 宗教的な歌曲Op.30
Langsam
1856 キリエWoO.17
Andante
1856 カノン・ミサWoO.18
I Sanctus Lento
II Benedictus Poco Adagio con espressivo
III Agnus Dei Adagio
IV Dona nobis pacem Adagio
1858 アヴェ・マリアOp.12
Andante
1858 埋葬の歌Op.13
Tempo di Marcia funebre
1859 マリアの歌Op.22
1 Con moto→Poco meno Allegro
2 Andante con moto
3 Con moto
4 Allegro, ma non troppo
5 Poco Adagio
6 Poco lento
7 Allegro
1859 詩篇第13篇Op.27
Non troppo lento→Allegro→Allegro non troppo
1860 4つの女声合唱Op.17
1 Adagio, con molt' espressione
2 Andante
3 Allegretto
4 Andante→Poco più lento
1860? 2つのモテトOp.29
1 (Choral)→(Fuga)Allegro
2 I Andante moderato
II Andante, espressivo
III Andante→Allegro→Animato
1860 ≪やさしい恋人≫WoO.19
Con moto
1861 3つの歌Op.42
1 Langsam
2 Con moto
3 Moderato, ma non troppo→Poco animato→Tempo I
1862 5つの歌Op.41
1 Andante(Alla breve)
2 Allegro con fuoco
3 Tempo di Marcia moderato
4 Im Marschtempo
5 Etwas gehalten
1863 3つの宗教的合唱曲Op.37
1 Moderato espressivo
2 Allegro
3 Allegro
1863以前 カノン≪恋は無慈悲にもわかる≫WoO.24
冒頭表記無し
1863 13のカノンOp.113
1 Andante espressivo
2 Andante con moto
3 Allegretto
4 Andante
5 Allegretto
6 Con moto
7 Andante con moto
8 Risoluto
9 Andante
10 Andante espressivo
11 Andante con moto
12 Andante espressivo
13 Etwas langsam
1866 12の歌曲とロマンスOp.44
1 Con moto
2 Allegro→riten.---sosten.→a tempo
3 Allegretto grazioso 4 Sehr lebhaft und rasch
5 Allegro
6 Andante
7 Allegro
8 Andantino
9 Angenehm bewegt
10 Andante
11 Andante espressivo
12 Poco Allegro
1868 ドイツ・レクイエムOp.45
I Ziemlich langsam und mit Ausdruck
II Langsam, marschmässig→Etwas bewegter→Tempo I→Un poco sostenuto→Allegro non troppo→tranquillo
III Andante moderato
IV Mässig bewegt
V Langsam
VI Andante→accel.→Vivace→Allegro
VII Feierlich
1868 カンタータ≪リナルド≫Op.50 (Kantate)
Allegro→Recit.→Tempo→Recit.→rit.→a tempo→poco rit.→colla parte→Poco Adagio→Un poco Allegretto→poco rall.→in tempo→Moderato→poco rit.→in tempo (accel.)→Allegro→Allegretto non troppo→Poco sostenuto→Allegretto non troppo→Andante con moto e poco agitato→Allegro con fuoco→Andante
(Auf dem Meere)
Allegro→Un poco tranquillo(→戻す指示なし)→un poco tranquillo→Vivace non troppo
1869 愛の歌Op.52
1 Im Ländler-Tempo→6 Grazioso→16 Lebhaft→17 Mit Ausdruck→18 Lebhaft
1869 ラプソディ≪冬のハルツの旅≫Op.53
Adagio→Poco Andante→Adagio
1870 カノン≪おお、なんとおだやかに≫WoO.26
冒頭表記無し
1871 運命の歌Op.54
Langsam und sehnsuchtsvoll→Allegro→Adagio
1871 勝利の歌Op.55
I Lebhaft, feierlich→tranquillo→Animato
II Mässig belebt→Lebhaft→Ziemlich langsam, doch nicht schleppend
III Lebhaft→un poco animato→Etwas lebhafter→Feierlich→sostenuto---a tempo
1874 小さな結婚カンタータWoO16
Tempo de Menuetto
1874 7つの歌曲Op.62
1 Gehend
2 Lebhaft
3 Etwas langsam
4 Andante grazioso
5 Con moto
6 Ziemlich langsam
7 Andante
1877 2つのモテトOp.74
1 I Langsam und ausdrucksvoll
II Wenig bewegter
III Langsam und sanft→Im vorigen Zeitmass
(Choral→)Adagio
2 I Tempo giusto
II Adagio→Lento
III Allegro
1877 カノン≪春は私に微笑まず≫WoO 25
冒頭表記無し
1877 カノン≪ひびけ、なだめるごときひびきよ≫WoO 28
Andante
1880 聖なる大地の暗きふところにWoO 20
冒頭表記無し
1881 哀悼歌Op.82
Andante→Più sostenuto→Tempo primo
1882 運命の女神の歌Op.89
Maestoso→(Sehr weich und gebunden)
1884 6つの歌曲とロマンスOp.93a
1 Lebhaft→Kräftig
2 Grazioso→Animato grazioso→Lebhaft( = )
3 Etwas gehalten
4 Sanft bewegt und sehr ausdrucksvoll
5 Lebhaft
6 Kräftig und lebhaft
1884 食卓の歌Op.93b
Allegretto grazioso→animato
1888 5つの歌Op.104
1 Langsam
2 Feierlich bewegt
3 Ziemlich langsam
4 Lebhaft, doch nicht zu schnell→Ein wenig gehalten→Wie zu Anfang→Ein wenig gehalten
5 Andante
1888 祭典と記念の格言Op.109
1 Feierlich bewegt
2 Lebhaft und entschlossen
3 Froh bewegt
1889 3つのモテトOp.110
1 Andante con moto ed espressivo
2 Con moto
3 Andante
?カノン≪いつ≫WoO 29
Allegro

◆オルガン
1856 フーガWoO.8
Langsam
1857 前奏曲とフーガWoO.9
Allegro
1857 前奏曲とフーガWoO.10
Allegro di molto→Più lento→ (Fuga). Tempo giusto
1858 ≪おお悲しみよ、おお心の苦しみよ≫によるコラール前奏曲とフーガWoO.7
Poco Adagio→ (Fuga) Adagio
1896 11のコラール前奏曲Op.122
2 Adagio
6 Molto moderato


楽語別一覧

◇Presto
1853ピアノ・ソナタ第1番Op.1III IV
1853ピアノ・ソナタ第3番Op.5V
1854シューマンの主題による変奏曲Op.9
1861ピアノ四重奏曲第1番Op.25IV
1863パガニーニの主題による変奏曲Op.35-1,2
1864ピアノ五重奏曲Op.34IV
1865弦楽六重奏曲第2番Op.36II
1865チェロ・ソナタ第1番Op.38III
1852~1869ハンガリー舞曲集(4手)
WoO 1-8,10,12,15,16,17,19,21
1873ハイドンの主題による変奏曲Op.56a
1873ハイドンの主題による変奏曲(2台4手)Op.56b
1877交響曲第2番Op.73III
1878バラードとロマンスOp.75-4
1878 8つの小品Op.76-5
1878ヴァイオリン協奏曲Op.77III
1881ピアノ協奏曲第2番Op.83IV
1882ピアノ三重奏曲第2番Op.87III
1882弦楽五重奏曲第1番Op.88II III
1885交響曲第4番Op.98III
1886ピアノ三重奏曲第3番Op.101II
1887ジプシーの歌Op.103-1,9
1888ヴァイオリン・ソナタ第3番Op.108III IV
1890 51の練習曲WoO 6-29
1890弦楽五重奏曲第2番Op.111IV
1891 6つの四重唱曲Op.112-6
1891クラリネット五重奏曲Op.115III
1892 7つの幻想曲Op.116-1,2
◇Vivace
1853 6つの歌Op.3-3
1859セレナード第2番Op.16II
1862 4つの二重唱曲Op.28-2
1863パガニーニの主題による変奏曲Op.35-2
1865ワルツ集(4手) Op.39
1868ティークの「マゲローネ」のロマンスOp.33-3,4,6,13
1868ドイツ・レクイエムOp.45IV
1868リナルドOp.50
1852~1869ハンガリー舞曲集(4手)
WoO 1-3,4,5,6,13,15,17,18,20,21
1871歌曲と歌Op.58-1
1873弦楽四重奏曲第2番Op.51-2III IV
1873ハイドンの主題による変奏曲Op.56a
1873ハイドンの主題による変奏曲(2台4手)Op.56b
1874 4つの二重唱曲Op.61-4
1876弦楽四重奏曲第3番Op.67I
1877 5つの歌Op.72-5
1878 8つの小品集Op.76-8
1878ヴァイオリン協奏曲Op.77III
1879ヴァイオリン・ソナタ第1番Op.78I
1882弦楽五重奏曲第1番Op.88II
1886チェロ・ソナタ第2番Op.99I
1886ヴァイオリン・ソナタ第2番Op.100I II
1887ヴァイオリン、チェロ協奏曲Op.102III
1887ジプシーの歌Op.103-4,6
1890 51の練習曲WoO 6-14,51
1890弦楽五重奏曲第2番Op.111IV
1894クラリネット・ソナタ第1番Op.120-1IV
◇Allegro
1852ピアノ・ソナタ第2番Op.2I III IV
1853≪F.A.E.ソナタ≫スケルツォWoO 2
1853ピアノ・ソナタ第1番Op.1I III IV
1853ピアノ・ソナタ第3番Op.5I III V
1853 6つの歌Op.7-6
1854シューマンの主題による変奏曲Op.9
1854ピアノ三重奏曲第1番Op.8 (第1作)I II III IV
1854 4つのバラードOp.10-1,2,3
1855ハンガリー民謡による変奏曲Op.21-2
1857前奏曲とフーガWoO.9
1857前奏曲とフーガWoO.10
1857自作主題による変奏曲Op.21-1
1858ピアノ協奏曲第1番Op.15III
1858 5つの詩Op.19-4
1859マリアの歌Op.22-1,4,7
1859詩篇第13篇Op.27
1859セレナード第1番Op.11I II V VI
1859セレナード第2番Op.16I V
1860弦楽六重奏曲第1番Op.18I III
1860 3つの二重唱曲Op.20-1
1860?2つのモテトOp.29-1,2
1861シューマンの主題による変奏曲(4手)Op.23
1861ピアノ四重奏曲第1番Op.25I II
1861ピアノ四重奏曲第2番Op.26I III IV
1861 4つの歌Op.43-4
1862 4つの二重唱曲Op.28-4
1862 5つの歌Op.41-2
1863パガニーニの主題による変奏曲Op.35-1,2
1863 3つの宗教的合唱曲Op.37-2,3
1864プラーテンとダウマーによる歌曲と歌Op.32-5
1864ピアノ五重奏曲Op.34I III IV
1865弦楽六重奏曲第2番Op.36I II IV
1865チェロ・ソナタ第1番Op.38I III
1865ホルン三重奏曲Op.40II IV
1866 12の歌曲とロマンスOp.44-2,5,7,12
1868ティークの「マゲローネ」のロマンスOp.33-1,5,6,8,10
1868ドイツ・レクイエムOp.45II VI
1868カンタータ≪リナルド≫Op.50
1852~1869ハンガリー舞曲集(4手) WoO 1-1,2,4,5,9
1871運命の歌Op.54
1873弦楽四重奏曲第1番Op.51-1I IV
1873弦楽四重奏曲第2番Op.51-2I IV
1875ピアノ四重奏曲第3番Op.60I II IV
1876交響曲第1番Op.68I IV
1877 9つの歌Op.69-1
1877交響曲第2番Op.73I IV
1877 2つのモテトOp.74II
1878 バラードとロマンスOp.75-1
1878ヴァイオリン協奏曲Op.77I III
1879ヴァイオリン・ソナタ第1番Op.78III
1879 2つのラプソディー Op.79-2
1880大学祝典序曲Op.80
1880悲劇的序曲Op.81
1881ピアノ協奏曲第2番Op.83I II
1881?ロマンスと歌曲Op.84-2
1882ピアノ三重奏曲第2番Op.87I IV
1882弦楽五重奏第1番Op.88I III
1883交響曲第3番Op.90I IV
1885交響曲第4番Op.98I III IV
1886チェロ・ソナタ第2番Op.99I III IV
1886ヴァイオリン・ソナタ第2番Op.100I
1886ピアノ三重奏曲第3番Op.101I IV
1887ヴァイオリンとチェロのための協奏曲Op.102I III
1887 ジプシーの歌Op.103-1,2,3,5,9,11
1888ヴァイオリン・ソナタ第3番Op.108I
1890 51の練習曲WoO 6-25,31,38,43a,47
1890弦楽五重奏曲第2番Op.111I
1891ピアノ三重奏曲第1番Op.8 (改作)I II IV
1891 6つの四重唱曲Op.112-3,5
1891クラリネット三重奏曲Op.114I IV
1891クラリネット五重奏曲Op.115I
1892 7つの幻想曲Op.116-3,7
1892 6つの小品Op.118-1,3
1892 4つの小品Op.119-4
1894クラリネット・ソナタ第1番Op.120-1I
1894クラリネット・ソナタ第2番Op.120-2I II III
1896 4つの厳粛な歌Op.121-1
? カノン≪いつ≫WoO 29
◇Allegretto
1853 6つの歌Op.3-6
1853 6つの歌Op.6-1,6
1854シューマンの主題による変奏曲Op.9
1858歌曲とロマンスOp.14-7
1860 4つの女声合唱Op.17-3
1860弦楽六重奏曲第1番Op.18IV
1863パガニーニの主題による変奏曲Op.35-2
1863 3つの四重唱曲Op.31-2
1863 13のカノンOp.113-3,5
1865チェロ・ソナタ第1番Op.38II
1866 12の歌曲とロマンスOp.44-3
1868カンタータ≪リナルド≫Op.50
1852~1869ハンガリー舞曲集(4手) WoO 1-3,7,15,19,20
1873弦楽四重奏曲第1番Op.51-1III
1873弦楽四重奏曲第2番Op.51-2III
1874 4つの二重唱曲Op.61-1
1876弦楽四重奏曲第3番Op.67III IV
1876交響曲第1番Op.68III
1877交響曲第2番Op.73III
1878バラードとロマンスOp.75-2
1878 8つの小品Op.76-2,4
1881ピアノ協奏曲第2番Op.83IV
1882弦楽五重奏曲第1番Op.88II
1883交響曲第3番Op.90III
1884食卓の歌Op.93b
1884?7つの歌曲Op.95-5
1886 5つの歌曲Op.106-1
1886ヴァイオリン・ソナタ第2番Op.100III
1887ジプシーの歌Op.103-3
1890弦楽五重奏曲第2番Op.111III
1891 6つの四重唱曲Op.112-4
1892 6つの小品Op.118-4,5
1894クラリネット・ソナタ第1番Op.120-1III
◇Moderato
1852ピアノ・ソナタ第2番Op.2III
1853≪F.A.E.ソナタ≫スケルツォWoO 2
1853 6つの歌Op.3-2
1853ピアノ・ソナタ第3番Op.5V
1853 6つの歌Op.7-3
1854ピアノ三重奏曲第1番Op.8 (第1作)I
1858ピアノ協奏曲第1番Op.15I
1859セレナード第2番Op.16I
1860弦楽六重奏曲第1番Op.18I II
1860?2つのモテトOp.29II
1861シューマンの主題による変奏曲(4手)Op.23
1861 3つの歌Op.42-3
1862 5つの歌Op.41-3
1863 3つの宗教的合唱曲Op.37-1
1864プラーテンとダウマーによる歌曲と歌Op.32-4
1868ドイツ・レクイエムOp.45III
1868カンタータ≪リナルド≫Op.50
1873弦楽四重奏曲第1番Op.51-1III
1873弦楽四重奏曲第2番Op.51-2II III
1878 8つの小品Op.76-7
1879ヴァイオリン・ソナタ第1番Op.78III
1879?低声のための6つの歌曲Op.86-4
1880悲劇的序曲Op.81
1882弦楽五重奏曲第1番Op.88I
1885交響曲第4番Op.98II
1886低声のための5つの歌曲Op.105-4
1890 51の練習曲WoO 6-12,13,19
1892 3つの間奏曲Op.117-1
1896 11のコラール前奏曲Op.122-6
◇Andantino
1858歌曲とロマンスOp.14-2
1862?66?雨の歌WoO 23
1866 12の歌曲とロマンスOp.44-8
1852~1869ハンガリー舞曲集(4手) WoO 1-13,17
1877交響曲第2番Op.73III
1887ジプシーの歌Op.103-7,8,10
1891クラリネット五重奏曲Op.115III
1892 7つの幻想曲Op.116-6
1892 4つの小品Op.119-2
◇Andante 1852ピアノ・ソナタ第2番Op.2II
1853ピアノ・ソナタ第1番Op.1II
1853ピアノ・ソナタ第3番Op.5II IV
1853 6つの歌Op.6-5
1853 6つの歌Op.7-1,2,3
1854月夜WoO 21
1854シューマンの主題による変奏曲Op.9
1854 4つのバラードOp.10-1,2,4
1856キリエWoO 17
1857自作主題による変奏曲Op.21-1
1858アヴェ・マリアOp.12
1858歌曲とロマンスOp.14-1,,6,8
1859マリアの歌Op.22-2
1860 4つの女声合唱Op.17-2,4
1860弦楽六重奏曲第1番Op.18II
1860 3つの二重唱曲Op.20-3
1860?2つのモテトOp.29-2
1861シューマンの主題による変奏曲(4手)Op.23
1861ピアノ四重奏曲第1番Op.25III
1862 4つの二重唱曲Op.28-1
1862 5つの歌Op.41-1
1863パガニーニの主題による変奏曲Op.35-1,2
1863 13のカノンOp.113-1,2,4,7,9,10,11,12
1864 プラーテンとダウマーによる歌曲と歌Op.32-1,6
1864ピアノ五重奏曲Op.34II
1865ワルツ集(4手) Op.39
1865ホルン三重奏曲Op.40I
1866 12の歌曲とロマンスOp.44-6,10,11
1868ティークの「マゲローネ」のロマンスOp.33-3,4,8,12
1868ドイツ・レクイエムOp.45III VI
1868 4つの歌Op.46-2
1868 7つの歌曲Op.48-2,4,5,6
1868?5つの歌曲Op.49-1,2
1868カンタータ≪リナルド≫Op.50
1869ラプソディ≪冬のハルツの旅≫Op.53
1852~1869ハンガリー舞曲集(4手) WoO 1-11,14
1871ダウマーによる歌曲と歌Op.57-2
1873弦楽四重奏曲第2番Op.51-2II
1873ハイドンの主題による変奏曲Op.56a
1873ハイドンの主題による変奏曲(2台4手)Op.56b
1873歌曲と歌Op.59-6
1873≪ハムレット≫から5つのオフィーリアの歌
1874 4つの二重唱曲Op.61-2,3
1874 7つの歌曲Op.62-4,7
1874 3つの四重唱曲Op.64-3
1875ピアノ四重奏曲第3番Op.60III
1875 5つの二重唱曲Op.66-1,2
1876交響曲第1番Op.68II IV
1876弦楽四重奏曲第3番Op.67II
1877 9つの歌Op.69-7
1877 4つの歌Op.70-2
1877 5つの歌Op.72-2,4
1877カノン≪ひびけ、なだめるごときひびきよ≫WoO 28
1878バラードとロマンスOp.75-3
1878 8つの小品Op.76-6
1879ヴァイオリン・ソナタ第1番Op.78II
1879?低声のための6つの歌曲Op.86-4
1881哀悼歌Op.82
1881ピアノ協奏曲第2番Op.83III
1881?ロマンスと歌曲Op.84-1
1882ピアノ三重奏曲第2番Op.87II
1883交響曲第3番Op.90II
1884?2つの歌Op.91-2
1884 4つの四重唱曲Op.92-1,2,3
1884 4つの歌曲Op.96-2,4
1885交響曲第4番Op.98II
1886ヴァイオリン・ソナタ第2番Op.100II III
1886ピアノ三重奏曲第3番Op.101III
1886低声のための5つの歌曲Op.105-3,4
1887ヴァイオリンとチェロのための協奏曲Op.102II
1888 5つの歌Op.104-5
1889 3つのモテトOp.110-1,3
1890 51の練習曲WoO 6-4,43
1891 6つの四重唱曲Op.112-1
1891クラリネット三重奏曲Op.114III
1892 7つの幻想曲Op.116-2,5
1892 3つの間奏曲Op.117-1,2,3
1892 6つの小品Op.118-2,5,6
1894クラリネット・ソナタ第1番Op.120-1II
1894クラリネット・ソナタ第2番Op.120-2III
1896 4つの厳粛な歌Op.121-1,2,4
◇Adagio 1853ピアノ・ソナタ第1番Op.1II
1853ピアノ・ソナタ第3番Op.5II
1854ピアノ三重奏曲第1番Op.8 (第1作)III
1854シューマンの主題による変奏曲Op.9
1854 4つのバラードOp.10-4
1856カノン・ミサWoO 18-2,3,4
1858≪おお悲しみよ、おお心の苦しみよ≫によるコラール前奏曲とフーガWoO 7
1858ピアノ協奏曲第1番Op.15II
1858 5つの詩Op.19-1
1859セレナード第1番Op.11III
1859セレナード第2番Op.16III
1859マリアの歌Op.22-5
1860 4つの女声合唱Op.17-1
1860 3つの二重唱曲Op.20-2
1861ピアノ四重奏曲第2番Op.26II
1864プラーテンとダウマーによる歌曲と歌Op.32-9
1864ピアノ五重奏曲Op.34II
1865弦楽六重奏曲Op.36III
1865ホルン三重奏曲Op.40III
1868ティークの「マゲローネ」のロマンスOp.33-10
1868カンタータ≪リナルド≫Op.50
1869ラプソディ≪冬のハルツの旅≫Op.53
1871運命の歌Op.54
1871ダウマーによる歌曲と歌Op.57-8
1873弦楽四重奏曲第1番Op.51-1II
1874 3つの四重唱曲Op.64-1
1876交響曲第1番Op.68IV
1877交響曲第2番Op.73II
1877 2つのモテトOp.74I II
1878 8つの小品Op.76-8
1878ヴァイオリン協奏曲Op.77II
1879ヴァイオリン・ソナタ第1番Op.78II
1881ピアノ協奏曲第2番Op.83III
1884? 2つの歌Op.91-1
1886チェロ・ソナタ第2番Op.99II
1888ヴァイオリン・ソナタ第3番Op.108II
1890弦楽五重奏曲第2番Op.111II
1891ピアノ三重奏曲第1番Op.8 (改作)III
1891クラリネット三重奏曲Op.114II
1891クラリネット五重奏曲Op.115II
1892 7つの幻想曲Op.116-4
1892 3つの間奏曲Op.117-1,2
1892 4つの小品Op.119-1
1894クラリネット・ソナタ第1番Op.120-1II
1896 4つの厳粛な歌Op.121-4
1896コラール前奏曲Op.122-2
◇Lento
1853 6つの歌Op.3-2
1853ピアノ・ソナタ第3番Op.5II
1854ピアノ三重奏曲第1番Op.8 (第1作)II IV
1854 4つのバラードOp.10-4
1855ハンガリー民謡による変奏曲Op.21-2
1856カノン・ミサWoO 18I
1857前奏曲とフーガWoO 10
1857自作主題による変奏曲Op.21-1
1858 5つの詩Op.19-5
1859マリアの歌Op.22-6
1859詩篇第13篇Op.27
1860 4つの女声合唱Op.17-4
1868 5つの歌曲Op.47-5
1874 3つの四重唱曲Op.64-1
1877 2つのモテトOp.74II
1878 8つの小品Op.76-3
1891クラリネット五重奏曲Op.115II
1892 3つの間奏曲Op.117-3
1892 6つの小品Op.118-2,6

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