第95回 猫のリズム/ショパン:猫のワルツ他(第4・7・12番)
パンナちゃんという新しい猫が来ました。12月の寒い日に(ステップアドバイザーをして帰りに家の近くの駅の前で)ちょっと先の路地をさーっと痩せ細った小さい猫が目の前を横切りました。こんな所に猫がいたかな・・と思ってから30分後にはパンナちゃんは家の猫になっていました。
パンナちゃんと前に飼っていたヌキちゃん。2匹の猫はパンナが気が強くて甘えん坊の食いしん坊、ヌキちゃんは優しくて癒し系で少食・・と全然違うのですが、もちろん共通点はあります。猫の動きを見ているのは本当に面白いです。
頭をスリーッと甘えたり、突然興奮して速く走り出したり、私達に見えないようなものが見えるのか、何もないところをじーっと見つめていたり・・。
動物はみんなそうかもしれませんが、身体の中にリズムを持っているようです。しっぽをまるで指揮しているみたいに左右にゆらゆら、ゆらしたり、ばりっ、ばりっ、ばりっと爪が折れてしまいそうな音で爪とぎをしたり、毛繕いの時もザーッ、ザーッとリズミカルに首を動かしているし、獲物(おもちゃのねずみ)を狙ってジャンプする前もお尻をキュッキュッと振ってタイミングを待っています。動物はみんなリズムを持っているのかも知れませんね。動物だけでなく、色んなところにリズムがあります。鳥や虫の声も、サカナが泳いでいる様子や、海の波の音や時々雨の音にもリズムを感じます。それに対して人工的なリズムもありますね。毎朝聞いているアラームとか、電子レンジなどのピーッ・ピーッという音、駅では踏み切りの音やら発車の合図音・・まだまだたくさん、私達は人工的なリズムに囲まれて生活しているようです。
こんな環境で生活しているので、レッスンでワルツのリズムをとってごらん、と言うと、たいてい空中にイチ・ニッ・サンッと正三角形で描く生徒が多いのですが、これは自然なワルツのリズムではありません。自分の心臓の鼓動に耳を澄まして、踊れなくても想像すると、身体が心地よく揺れるような三拍子・・正三角形ではなくて、角が曲線で描かれたようなやわらかいリズムを描けると思います。本当は人間の中にもこんなリズムは存在しているのだと思います。
今回弾いたショパンの4番のワルツは「猫のワルツ」と呼ばれていますが、中間部のところは本当に猫が甘えてミャーオー」とないているみたいに聴こえますね。装飾音のところは子猫がいたずらをして高いところに駆け上ったり下りてきたりしているのでしょうか。その他にもこの曲の中にたくさんの猫らしい動きが聴こえてきます。
岩合光昭さんの猫写真展に行きました たくさんの可愛い猫ちゃん達の写真を見て、今回の連載に猫の曲を弾きたいと思ったのがきっかけです。写真展で出会った「ねこ」ちゃんたちの写真は、岩合光昭さん著「ねこ」(発売元クレヴィス)からのものです。ワルツが楽しいねこたちのBGMになっていたらうれしいです。
それでは、また!
ルイ・レーリンク
オランダ出身。7歳からピアノを始め、15歳で音楽院入学。アムステルダム・スヴェーリンク音学院に於いてW・ブロンズ氏他に師事する。1996年音楽活動の為、日本に移住。「肩の凝らないクラシック」をモットーに各地で通常のコンサートから学校や施設のコンサート、香港等海外でも公演。九州交響楽団との共演、CD「ファイナルファンタジー・ピアノコレクションズ9」の演奏と楽譜監修を行うほか、CD「夢」をリリース。個人/公開レッスンや音楽講座を行い、ピアノ・音楽指導にも意欲的である。洗足学園音楽大学非常勤講師、洗足学園高等学校音楽科講師として、「演奏法」の授業 、演奏家を目指す生徒のための「特別演奏法」の授業、ピアノレッスンを受け持つ。
NHK/BSテレビ「ハローニッポン」、「出会い地球人」
TBSテレビ「ネイバリー」、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」他出演。
ピアノ演奏法のページ : http://www.senzoku.pianonet.jp も作成中
演奏者のホームページ http://www.pianonet.jp