第88回 音楽のヒーリングパワー/ショパン:幻想曲 Op.49
皆さんからのピアノ演奏のビデオを募集しています。
この連載「ルイのピアノ生活」の下の部分に新コーナーを設けて、毎回何人かの演奏ビデオを紹介したいと思います。 美しければ(!)どんな演奏でも大歓迎です。 ※採用動画にはルイ先生からの一言コメントがつきます(編集部注) ♪ 投稿されたビデオはこちら |
Youtubeのアカウントを作成してください。次はご自分のアカウントにビデオをアップしてください。
最後にはビデオへのリンクを以下のアドレスを送ってください。選ばれたビデオをこの連載上で公開して見られるようにします。ぜひ恥ずかしがらないで、たくさんのビデオを送って下さいね。お待ちしています!
応募先:soho*pianonet.jp (*を@に変えて下さい)
この僕の新しいCDがリリースされました。以前連載にも書きましたが、ちょうど1年前、大切に飼っていた愛猫「ヌキちゃん」が亡くなりました。突然だったので、そのショックはとても大きかった。ヌキちゃんは私達にとっては大切な家族でした。
でも・・その時に音楽の力を新たに感じました。音楽の「ヒーリングパワー」でしょうか。音楽が私達の心を本当に慰めてくれるんだ!
音楽は聴いて慰められるだけではなく、鍵盤に触れると「言葉だと上手く言えない心の中に浮かんでくる様々な複雑な気持ち」を表現することができると感じることがあります。ピアノを奏でると楽器のヒーリングパワーを感じます。心の中は悲しみでいっぱいでも不思議な事に同時に幸せを感じることもあります。
作家はペンを持って言いたい事を言葉で表現します。画家は絵の具を使って・・陶芸家は粘土で・・同じ様に自己表現をします。誰でも自分をどこかで何かの形で表現したいという欲求を持っていると思いますが、芸術は作り手の考え・思い・感情が形になったものです。
ピアノ教育ではベートベンをベートベンらしく・・バッハをバッハらしく・・学問的なアプローチが重要視されています。特に日本では形から入る・型にはまる傾向があるようで、まずしっかり・きちんと・正確に・がんばって弾く事が大切・・。でも芸術としての音楽は本来もっと広く大きく捕らえても良いのではないのでしょうか。音楽で何を言いたいのか、何を表現したいか、自分のメッセージは?一歩踏み込んで考えてみても良いのではないでしょうか。
人生色々と経験すると物事の見方が変わりますね。一人のピアニストも若い頃と歳をとった時の演奏ではテンポ感や表現など違いますね。ゴールドベルグ変奏曲で知られるグールド、私も大尊敬しているピアニストですが彼も実際に若い頃の演奏とは違う物を感じて2度目の録音をしましたね。 歳を重ね色々経験すると、誰だって考え方・感じ方が変わってきます。それは音楽でも同じ事だと思います。派手で売っていた「若手ピアニスト」が歳をとって、一見(一聞?)少し地味に思えても深みのある演奏をするようになる。長くよく煮込んだお料理、あるいはおばあちゃんの手料理と同じように、素朴だけれど、一口で心が温まるような幸せな味になる。
僕はまだそんなに歳ではない、と思っていますが(7月に40歳になったけれど)20代の頃の自分とは違うことを感じます。言いたい事、音楽で伝えたい事も変化してきたようで、今回のCDを録音した時、作曲家や時代などは意識しませんでした。こんな言い方をすると誤解が生じかねませんが、どこかブラームスの曲をブラームスから盗んで自分の曲にしてしまった、ような感じです。勿論楽譜通りに弾いていますが、作曲家が何を考えてこの曲を作ったのではなく、ヌキちゃんを考えながら弾いていました。(でもどこかでブラームスさんは喜んでくれるかもしれないと思っています。)
録音にはヌキちゃんのお骨を持って行きました。幸せをたくさんくれたヌキちゃんの為に、それから大切な存在を失って同じように悲しみを持っている方の心が癒されますように・・と祈りながら弾きました。音色の美しいピアノのあるお寺で録音したのですが、そこに流れている何とも言えない「気」と、そこで響くピアノの音色が、CDなのによく伝わっていると思います。
僕のホームページでCDを試聴できるので、是非聴いてみてください。
天使になったヌキちゃんの優しさがみなさんに伝われば幸せです。
それでは、また!
ルイ・レーリンク
◆第26回:フォーレ:シシリエンヌ(2009年7月)
◆第25回:プロコフィエフ:ソナタ第4番 第2楽章(2009年6月)
◆第24回:バッハ:トッカータ ホ短調 BWV914(2009年5月)
◆第23回:モーツァルト:ソナタkv.533第2楽章(2009年4月)
◆第22回:バッハ=コルトー:Arioso(2009年4月)
オランダ出身。7歳からピアノを始め、15歳で音楽院入学。アムステルダム・スヴェーリンク音学院に於いてW・ブロンズ氏他に師事する。1996年音楽活動の為、日本に移住。「肩の凝らないクラシック」をモットーに各地で通常のコンサートから学校や施設のコンサート、香港等海外でも公演。九州交響楽団との共演、CD「ファイナルファンタジー・ピアノコレクションズ9」の演奏と楽譜監修を行うほか、CD「夢」をリリース。個人/公開レッスンや音楽講座を行い、ピアノ・音楽指導にも意欲的である。洗足学園音楽大学非常勤講師、洗足学園高等学校音楽科講師として、「演奏法」の授業 、演奏家を目指す生徒のための「特別演奏法」の授業、ピアノレッスンを受け持つ。
NHK/BSテレビ「ハローニッポン」、「出会い地球人」
TBSテレビ「ネイバリー」、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」他出演。
ピアノ演奏法のページ : http://www.senzoku.pianonet.jp も作成中
演奏者のホームページ http://www.pianonet.jp