ルイのピアノ生活

第79回 Happy New Ear(耳)!/シューベルト:即興曲作品90の3番

2009/01/23
♪ 演奏
シューベルト:即興曲作品90の3番 動画 動画:(7,31s)
 

2009年になりました。皆さんはこのお正月をどのように過ごされましたか?私はアムステルダムとパリに居ました。飛行機に乗る前はいつも、音楽をたくさんiPodに入れて持って行きますが今回は音楽を聴きたくない気分でした・・・。耳が疲れていて、できるだけ耳を使いたくない・・休ませたいと思っていました。

耳といえば、子どもの頃に姉と医者ごっこをしていた時、姉が麺棒を私の耳の中に思い切りに差し込んだ大事件がありました。すぐに病院に連れて行かれ検査をした所、耳の中に傷はあるが、ギリギリ鼓膜は傷ついておらず、聴力にも異常はないとの事でした。ところが、この事件がラッキーな事にもなったのです。
オランダにはほんの数年前まで徴兵制度がありました。17歳の青年は皆が健康診断に呼ばれます。私も行きました。中には聴力のテストがあって、ヘッドフォンをつけて音が消えたらボタン押す、という手順でしたが、私は逆に音が聞こえたらボタンを押す、と勘違いしていました(ちょっとおバカさんですね!!)。案の定、私の聴力は異常、という診断結果になったようです。この検査後、お医者さんが私の耳の中を診察して「あっ!傷がある」と一言。運良く「君は兵隊に来なくて良い」と言われました。

アムステルダムの実家の隣人は趣味で時々ピアノを弾いています。彼のグランドピアノは窓のそばにあって、弾きながらアムステルダムの運河を見る事ができます。このお正月に実家に泊まっていた時も、彼のピアノの練習が聞こえてきました。少し失礼を承知で言うと、特別に上手なわけではありませんが、一生懸命に練習する音を聴いてやっぱりピアノって良いな・・とつくづく感じました。彼の音色は疲れていた僕の耳にお薬のように響きました。

パリでは、アパートを借りました。隣に若い男性が住んでいて、ある日その人の部屋から夜中にしゃべり声が聞こえてきた。パーティか何かでしょうか(私のアパートから彼のリビングが見える)、お友達が集まってきてなにやら楽しそうにしています。そして夜中の1時頃、なんといきなりピアノの音が聞こえてきました。彼がショパンのノクターンを演奏しているのでした。

とても、とても綺麗でした!パリのアパートに居て、夜中1時にお隣からノクターンの生演奏が聞こえてくるって素敵です!200年近く前にはショパンがこの近くで同じように弾いていたかも知れない・・と思うと、突然ショパンがとても身近な存在に感じられました。この男性はプロの音楽家ではないと思いますが、どこかの大きなホールで聴くバリバリな演奏の何倍も感動しました。

こんな経験のお陰で、僕の耳は完全にリフレッシュされて日本に戻ってきました。実は帰ってきたばかりですが、先日連載の録音がないことに気が付きました。3週間もごぶさたしたピアノに触れるのはドキドキでしたが、久しぶりにピアノの前に座って、弾きながら、自分の音を聴きながら、ピアノって本当に楽しいな、素敵な楽器だな、と思いました。耳も心もリフレッシュして、今年もまたたくさんピアノを弾きたいなと思いました。

2009年、皆さんがたくさん音楽を楽しめる年になりますように。

それでは、また!

ルイ・レーリンク


ルイ・レーリンク

オランダ出身。7歳からピアノを始め、15歳で音楽院入学。アムステルダム・スヴェーリンク音学院に於いてW・ブロンズ氏他に師事する。1996年音楽活動の為、日本に移住。「肩の凝らないクラシック」をモットーに各地で通常のコンサートから学校や施設のコンサート、香港等海外でも公演。九州交響楽団との共演、CD「ファイナルファンタジー・ピアノコレクションズ9」の演奏と楽譜監修を行うほか、CD「夢」をリリース。個人/公開レッスンや音楽講座を行い、ピアノ・音楽指導にも意欲的である。洗足学園音楽大学非常勤講師、洗足学園高等学校音楽科講師として、「演奏法」の授業 、演奏家を目指す生徒のための「特別演奏法」の授業、ピアノレッスンを受け持つ。

NHK/BSテレビ「ハローニッポン」、「出会い地球人」
TBSテレビ「ネイバリー」、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」他出演。

ピアノ演奏法のページ : http://www.senzoku.pianonet.jp も作成中
演奏者のホームページ http://www.pianonet.jp

【GoogleAdsense】
ホーム > ルイのピアノ生活 > 連載> 第79回 Happy...