第76回 芸術の秋に/グリーグ:ホルベルク組曲より"Air"
もう秋も終わりですね。窓の外は枯葉が舞って大分寒くなりました。秋という季節が大好きです。美しい紅葉は勿論ですが、僕にとっては特に夏の大変な暑さから開放されるのが大きな喜びです!やっぱり寒い国の人間ですから寒い季節の方が好きなのかも・・・
秋はピアノの練習が楽になるだけではなく、いつもより楽しくなる季節です。朝、少し肌寒く感じるようになって薄手のセーターを着て練習すれば、心まで温まってポカポカになります(笑)。日本でも「芸術の秋」という言葉がありますね。秋はどこか物悲しいイメージもありますが、ピアノに関してはなぜかいつも「やる気」が出て来て、これも弾こう!あれも弾こう!という気持ちになります。新しい曲ばかりでなく・・もう1度練習したい曲も増え、紅茶のカップをピアノの横に置いて、窓から色づいた葉を眺めながら新鮮な気持ちでピアノに向うことができます。私にとって練習は ほとんどいつも楽しい事。もちろん、辛くてピアノの蓋を閉めてしまいたくなる時もありますが、出来ない事・わからない事をどうにか自分の力で解決するプロセスは楽しいです。その前向きに頑張る力も秋が一番強いです。
今回の曲はとても寒い国の曲です。グリーグは北欧ノルウェーの人でした。北欧といえば・・・子供のころデンマークに行ったことがあります。とても人が優しくて親切だったことの他に、3つの事を今でもはっきり覚えています。一つ目はホットドッグがとても多い国だったこと。アメリカの食べ物のイメージがあったので意外でした。お母さんと私はホットドックにすっかりはまってしまったっけ・・・。二つ目は無人販売があちこちありました。オランダではありえない事です。商品も金箱も両方を盗まれると思います。田舎をドライブしていて、農家がそれぞれ自分のところで獲れた果物や自家製のジャムだけを外の台に載せて売っていた光景が印象に残りました。そして最後はデンマークが誇るLEGOLAND(レゴ)。日本でもおなじみのブロックですね。 僕も大好きなおもちゃでした。でもこれは全部デンマークの話。場所が近いとは言え、きっとノルウェーはまた全く違った国なのだと思います。
だからノルウェーにも是非行って見たいです!曲を聴きながら、この音楽が生まれたのはいったいどんな場所?と想像力が膨らみ、好奇心が湧いてきます。世界には色々な国があるってすごく面白いですね!それぞれの国の香りがあり、食べ物、習慣や文化、人も違います。ノルウェーはどんな香りがするでしょうか?最近、日本人のお母さんが自分の子供と一緒に海外へ旅をする・・といった内容の本を読みました。3年生ぐらいの子どもを実際色んな国へ連れて行って、短期間ですが滞在してその土地の文化や習慣を自分と一緒に体験するのです。観光地めぐりもいいのですが、市場で色とりどりの野菜を見て、公園では地元の子供たちとおそるおそるコミュニケーションをとってみたり、教会で響くオルガンの音を聴いたり・・。お店でまずいものを買ってしまったり、間違った電車に乗ってしまったり、失敗もあります。でも本やテレビで見るのではなく、実際に自分の足で歩いて、手で触れて、匂いをかいで、味わって、話して「体験する」ことってなんて素敵なのでしょう。必死に塾で勉強するのもよいですが、お母さんと2人の外国の旅、どんなに勉強になることでしょう。
グリーグの曲を弾くと、行ったことのないノルウェーでもまるで今そこに居るようにとても近く感じる事ができます。ロマン派の作曲家グリーグはバロック時代の作品にインスピレーションを受けて今回の曲を書きました(曲名にもなっている「ホルベルク」はバロック時代の哲学者兼作家の名前)が、ノルウェーの冬の寒さや広大な自然が感じられるだけではなく、私達を昔に・・時間の旅にも連れて行ってくれる音楽だと思います。 こうやって旅の感覚を味わうことができるって、ピアノって魔法のような楽器ですね!
それでは、また!
ルイ・レーリンク
オランダ出身。7歳からピアノを始め、15歳で音楽院入学。アムステルダム・スヴェーリンク音学院に於いてW・ブロンズ氏他に師事する。1996年音楽活動の為、日本に移住。「肩の凝らないクラシック」をモットーに各地で通常のコンサートから学校や施設のコンサート、香港等海外でも公演。九州交響楽団との共演、CD「ファイナルファンタジー・ピアノコレクションズ9」の演奏と楽譜監修を行うほか、CD「夢」をリリース。個人/公開レッスンや音楽講座を行い、ピアノ・音楽指導にも意欲的である。洗足学園音楽大学非常勤講師、洗足学園高等学校音楽科講師として、「演奏法」の授業 、演奏家を目指す生徒のための「特別演奏法」の授業、ピアノレッスンを受け持つ。
NHK/BSテレビ「ハローニッポン」、「出会い地球人」
TBSテレビ「ネイバリー」、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」他出演。
ピアノ演奏法のページ : http://www.senzoku.pianonet.jp も作成中
演奏者のホームページ http://www.pianonet.jp