ルイのピアノ生活

第67回 オーケストラの響きで考える/マルチェッロ=バッハ:オーボエ協奏曲より「アダージオ」

2008/06/15
♪ 演奏
マルチェッロ=バッハ:オーボエ協奏曲より「アダージオ」  動画 動画:(4,14s)
 

今日の録音は少し珍しい曲です。原曲は有名な名曲ですが、このピアノのための編曲は、最近私の生徒がこの曲をレッスンに持って来て始めて知りました。気に入ってすぐ連載のために録音しました!

多くの指導者が「ピアノの上達のためには・・・たくさん音楽を聴けば良い!」と言っています。英語が上手になるには、話す前に英語をたくさん聞けば良いのと同じことです。頭に言葉や文章をたくさん貯めれば、いつか自然に自分から話せるようになります。結局は耳をよく使う事がとても大事ということですね!

私は特に中学校3年の頃からレコード鑑賞に夢中になりました。週に何回かは自転車に乗ってアムステルダムの私立中央図書館に通いました。大きな図書館ですからレコードの枚数も多く、一度に10枚借りてはカセットテープにダビングをして、レコード返却時にまた次の10枚を借りて・・というサイクルで何年間も通い続けたました。

学校があるので聴く時間は限られていましたが、毎日ヘッドフォンをつけたまま音楽を聴きながら寝ていました。翌日朝、目が覚めて一番最初にするのは音楽をかける事でした。

高校時代、音楽院ではオーケストラに入っている生徒との交流もありました。彼らは毎日皆で集まって、曲のことや、どこのオーケストラが好きか、どの指揮者が良いか、どこのホールの響きが一番美しいかなど、夢中で話し合っていました。私がその頃聴いていた曲はピアノ曲が中心でしたが、皆が話していたのはシンフォニーなどオーケストラの曲ばかり。その影響で、自分の音楽の趣味はシューマンショパンからマーラー、ブルックナーシベリウスベルリオーズ等に変わりました。また父がオペラ好きで、よく2人でオペラの定期演奏会へ出かけたことから私はオペラも大好きになりました。

高校時代はピアノよりオーケストラやオペラをたくさん聴いていましたので、今でも音楽をピアノの響きより色々な楽器や人間の声で考える(とらえる)事が多いようです。楽譜を見ながら「ここはオーボエのソロ・・・ここは弦のピチカート・・・この全音符はホルンの響きだ」等・・・。ピアノを弾きながら歌手の歌もよくイメージしています。ちょっとメタボの歌手が死ぬ前に最後の息でアリアを歌っている・・・ ワーグナーのオペラのように聖杯を探しに行っている・・・中世の騎士たちが合唱し ている・・・。

たくさんオーケストラの音楽やオペラを聴くとピアノ曲の見方が変わると思います。自分が持つ音のイメージ・・そして、音色やピアノから出す響きが変わると思います。私達ピアノをやっている人間は会場の響きより鍵盤の辺りの音色を聴き過ぎる傾向があります。音の長さ=音の終わる瞬間まで聴く事も大切だと思うのですが、聴くのは音を弾く瞬間だけ、呼吸もしないで休符をあまり感じないことも多いです。

弦楽器のビブラート、管楽器の音の歌い方、歌手の呼吸などから学べる事がたくさんあります。今日のマルチェロの原曲はオーボエがメロディ、オーケストラが伴奏です。オケ曲のピアノ版編曲の演奏はとても難しいです。でも弾きながらオーボエを吹いている自分をイメージするのは(実際吹けません)楽しく、美しいオーボエのメロディーをどうやってピアノで歌えばよいか考えるのはとてもよい勉強になります!

それでは、

ルイ・レーリンク


ルイ・レーリンク

オランダ出身。7歳からピアノを始め、15歳で音楽院入学。アムステルダム・スヴェーリンク音学院に於いてW・ブロンズ氏他に師事する。1996年音楽活動の為、日本に移住。「肩の凝らないクラシック」をモットーに各地で通常のコンサートから学校や施設のコンサート、香港等海外でも公演。九州交響楽団との共演、CD「ファイナルファンタジー・ピアノコレクションズ9」の演奏と楽譜監修を行うほか、CD「夢」をリリース。個人/公開レッスンや音楽講座を行い、ピアノ・音楽指導にも意欲的である。洗足学園音楽大学非常勤講師、洗足学園高等学校音楽科講師として、「演奏法」の授業 、演奏家を目指す生徒のための「特別演奏法」の授業、ピアノレッスンを受け持つ。

NHK/BSテレビ「ハローニッポン」、「出会い地球人」
TBSテレビ「ネイバリー」、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」他出演。

ピアノ演奏法のページ : http://www.senzoku.pianonet.jp も作成中
演奏者のホームページ http://www.pianonet.jp

【GoogleAdsense】
ホーム > ルイのピアノ生活 > 連載> 第67回 オーケスト...