第63回 桜/曲:コンソラシヨン(慰め)第3番
日本では新年度が4月に始まります。日本に来た当初はこれを知って驚きました。オランダでは長い夏休みの後、気分をリフレッシュして8月末~9月に新しい学年が始まるからです。でも、私はもう長く日本にいるので、段々こちらの新年度の感覚に合ってきたようです。
先週は桜を見に行きました。私の家の近くに小さな川が流れていてその両側は桜並木になっています。岸辺には黄色い菜の花も咲いて、それはそれは美しい光景です。実は子供の頃に住んでいたオランダの家の庭にも大きな桜の木がありましたが、日本の桜は少し違う感じがします。色も違いますが、桜の周りの雰囲気が違う、とでもいいましょうか。その理由のひとつが「お花見」です。
わざわざ出かけて行った遠くの公園にあまり大勢の人がいると、少々気後れしてしまうことがありますが、家の近くのお花見は気楽で楽しいです。子供たちが川の中に入って魚や虫を取ったり、野原で戯れている間に、ピクニックシートを広げて、おいしそうなお弁当を並べているお母さん達。赤ちゃんはシートの上で日光を浴びてスヤスヤ、カメラで桜をあらゆる角度から頑張って撮っているおじいさんや、カップルで花見しながら、彼女に自分のギターを聴かせてあげている男の人・・・。この日は酔っぱらって大声で歌ったり騒いだりするおじさん達もいなくて、和やかな雰囲気のお花見をエンジョイすることができました。私もおにぎりを持って行って、コンビニでイカフライやお菓子、缶ビール(小さなやつです!酔っぱらったおじさんにならないように!)を買って、桜の下に座ってお昼を食べました。
食べながら周りの人々を見て、久しぶりにお花の香りをかいで、地面から新しい草花の芽が出て、蝶々や鳥がたくさん飛んでいて(虫を見たのは久しぶり!冬の間は存在を忘れていました)まるで周りが動いている絵に見えました。冬が終わり新しい1年の始まりを肌で感じました。
私は春が大好きです(富士山も春に一番美しいと思います)。フレッシュな気分で何かをスタートしよう!と思える時期だからです。いつも「今からこの曲もあの曲も練習しよう」という気分が高まりますし、芽吹く植物や穴から出てくる虫たちと同じで、この時期に色々と計画したり、やりたい事がたくさん出てきます。
今回の録音はリストの「慰め」です。元々は悲しむ人を慰める、優しくてどこかもの哀しいイメージの曲だと思いますが、お花見の直後の演奏で桜が咲いてうれしい気分の「春の慰め」となりました。いつもより明るい気分で弾いています(すみません)が、音楽で僕の嬉しい春気分を少し皆さんに伝えられたら良いなと思います!
それでは、また!
オランダ出身。7歳からピアノを始め、15歳で音楽院入学。アムステルダム・スヴェーリンク音学院に於いてW・ブロンズ氏他に師事する。1996年音楽活動の為、日本に移住。「肩の凝らないクラシック」をモットーに各地で通常のコンサートから学校や施設のコンサート、香港等海外でも公演。九州交響楽団との共演、CD「ファイナルファンタジー・ピアノコレクションズ9」の演奏と楽譜監修を行うほか、CD「夢」をリリース。個人/公開レッスンや音楽講座を行い、ピアノ・音楽指導にも意欲的である。洗足学園音楽大学非常勤講師、洗足学園高等学校音楽科講師として、「演奏法」の授業 、演奏家を目指す生徒のための「特別演奏法」の授業、ピアノレッスンを受け持つ。
NHK/BSテレビ「ハローニッポン」、「出会い地球人」
TBSテレビ「ネイバリー」、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」他出演。
ピアノ演奏法のページ : http://www.senzoku.pianonet.jp も作成中
演奏者のホームページ http://www.pianonet.jp