ドビュッシー ：月の光　　 動画：(5,28s)

私は、連載を続けてもう少しで２年になります。２年間も続いていて、えらい！と少々自我自賛気味で（笑）、隔週「何を録音して弾こうかな・・何を書こうかな・・」といつも締め切りが迫ってくる度焦っています。

演奏の録音・録画はほとんどいつも「ユーロピアノ」という輸入楽器代理店のスタジオで行います。自分の録音を聴くと、必ず最初の私の反応は「エッ・・本当にこう弾いているのかな？もう少しましだと思ったのに・・・」（涙）。１００％満足できる演奏はなかなか難しい事だと気が付きました。子供の頃にはホロヴィッツ、ラフマニノフ、コルトーやグールドの演奏を聴いて、「こんな風に弾きたい」と強く思っていたものですが、むろん真似るわけにも行かないし、自分の中の音楽を表現するのは実際はそう簡単なことではありません。でも大人になって、音楽の素晴らしさは演奏の上手下手ではなく、ひとりの人にでも感動や幸福感を与える事だと実感できるようになりました。ピアノを教える時もそうですが、「正しい」演奏より、音楽を心から愛し、楽しむようになる事を目指しています。それには、やはり厳しいレッスンが必要ですが・・。

ビデオをチェック＝自分の姿を客観的に見るのは、２年間経ってもなかなか慣れません。今でも毎回恥ずかしい思いです！ルックスや外見を全く気にしない人から、異常に気にする人まで様々でしょうが、あるイタリアの有名の指揮者は登場する直前は何回も何回も鏡を見て、色々な角度から自分の表情をチェックしたり、髪の毛を整えたりすると聞きました。自分の場合は・・最近はあまり考えないようにしています。「まぁ、こんなモンだ・・」と、成長したのか、あきらめたのか、どちらか分からないですが。でも恥ずかしさを乗り越えて自分が演奏している姿を見ることは勉強になりますし、また、たくさんの方がビデオを見て下さっているのは、とても嬉しい事です。

いつもビデオの映像を見ながら、自分の演奏を聴きながら、連載の文章を考えます。今はドビュッシー「月の光」の演奏を聴いています（反省点が多いですが・・・）。僕のノートパソコンを持って、好きな所に座って書きます。でも、３０分間画面とにらめっこしても、１つとして言葉が浮かんでこない時もあります（・・実は、そのケースの方が多いです！）。気分転換に、ノートを持ってベッドの上に横になったり、別のソファに座ったりして、文章が出てくるまで、インスピレーションが沸いてくるまで場所を移動し続けます。文章はもちろん日本語で書いていますよ！もう日本に来て11年ですから、音楽についても日本語で考えます。夢も日本語で見ているし、奥さんとケンカする時も日本語になりました（笑）。でも、自分の文章を見て「単語が少ない！」とがっかりする事も・・・。語彙を増やす為に、日本の小説なども読もうと格闘していますが、なかなか手強いです。不思議ですが、外国人が書いた日本語の文章は割と簡単に読めますが、日本人の文章は理解するのが難しい事があります。こうなってくると、単語だけではなく、考え方の違いなのかも知れませんね。

連載の文章が出来ると、１度私の妻に読んでもらいます。私の書いた文章は時々気持ちが入りすぎて、ちょっと感情的になってしまう傾向があり、そんな時妻が冷静に「この表現の方が美しいよ」と言ってくれると助かります！

そして、締め切りギリギリで連載を書き終え、パソコンの送信ボタンをえいっ！と押してＰＴＮＡの担当の方に送ると（いつも遅くなってすみません！）、深?い安堵のため息をつくのです。やった?、終わったー、よかった。達成感でいっぱいです！でも、次の締め切りがあっという間にやって来ます・・・。実は何度か「もう続けられない・・」と思った連載ですが、みなさんの応援のお陰でこうして2年続行することができました。ありがとうございます！頑張って書き続けて、弾き続けて行きますので、これからもどうぞよろしくお願いします！！

７月からこの連載のページで、隔週私の生徒達のレッスン風景がご覧いただけるようになります。そちらも、そして今まで通り連載と演奏も、みなさんぜひ見てくださいね！

ルイ・レーリンク