第44回 クラシック音楽大好き!/曲:リャードフ プレリュード op.11 no.1
私は他に誰もいない野原の中を歩いています。そして小さなお花を見つけます。とても美しい花です。「美しい!美しい!!なんて美しいんだ!!!」と心の底から叫びます。でも周りには誰もいません。
私はピアノを弾いている時、いつもこのような気持ちです。少し変でしょうか?この音楽は美しいです。胸が痛いぐらい美しいです。ピアノに座って、鍵盤を触ると、その野原へワープします。お花をそっと摘んで、その花の色を見て、香りをかいで、風で少し震えている葉っぱを見て、色々な事を思い出します。
最近の出来事、ずっと昔の思い出、夢で見たイメージや、見た事のない情景までが浮かんで来ます。それと一緒に色、においや感情も蘇ってきます。喜び、悲しみ、時には怒り、懐かしさ。そして言葉では言い表すことのできない感覚もあります。音楽の素晴らしさは、この音が美しい、ここはなんて哀しいフレーズと、触れていく過程で自分の体験や感情を超えて、自分よりもずっと大きな世界がある事を教えてくれる事ではないでしょうか。
個人的に時々もう少しクールに弾きたい時もありますが、なかなか冷静になれないのは、新しく触れる世界に心が震えて、感動が抑えられないからかもしれません。
私はクラシック音楽が大好きです!しかしクラシックはあまり馴染みのない人からは誤解されがちで、なんだか堅く、格好をつけているように思われがちです。中には知識を持たずに触れるのはナンセンス、と思っている専門家もいるでしょうが、私達が今クラシックと呼んでいる音楽は、特にロマン派以降、庶民の娯楽となりました。それ以前も現代の曲も含めて「音楽」は全て、知識よりは感覚で親しむもの。名作を残した作曲家達も、曲がいくら素晴らしく分析される事より、ひとりにでも多く感動を与えられる事を選ぶのではないでしょうか。
演奏家にもまた同じ事が言えるかも知れません。
実はクラシック音楽ほどオープンで自由な世界感をもった音楽はないと思います。楽器が弾けるに人はその世界を表現できる特権があり、楽器には触れなくても、心を開いて聴くことで、誰でも素晴らしい世界を旅する事ができます。「ああこの響きは懐かしい」「この音色が物悲しいのはなぜ」-入口は自分の思い出や感情。その内、情景、色、においやその他様々なイメージが繰り広げられる頃には、音楽の魅力から逃れられなくなる事でしょう。
さあ、眼をつむって、心を開いて、音楽の旅を楽しみましょう。
それでは、また!
ルイ・レーリンク
オランダ出身。7歳からピアノを始め、15歳で音楽院入学。アムステルダム・スヴェーリンク音学院に於いてW・ブロンズ氏他に師事する。1996年音楽活動の為、日本に移住。「肩の凝らないクラシック」をモットーに各地で通常のコンサートから学校や施設のコンサート、香港等海外でも公演。九州交響楽団との共演、CD「ファイナルファンタジー・ピアノコレクションズ9」の演奏と楽譜監修を行うほか、CD「夢」をリリース。個人/公開レッスンや音楽講座を行い、ピアノ・音楽指導にも意欲的である。洗足学園音楽大学非常勤講師、洗足学園高等学校音楽科講師として、「演奏法」の授業 、演奏家を目指す生徒のための「特別演奏法」の授業、ピアノレッスンを受け持つ。
NHK/BSテレビ「ハローニッポン」、「出会い地球人」
TBSテレビ「ネイバリー」、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」他出演。
ピアノ演奏法のページ : http://www.senzoku.pianonet.jp も作成中
演奏者のホームページ http://www.pianonet.jp