第43回 色々なピアノたち/曲:「乙女の願い」ショパン歌曲より(リスト編)
久しぶりの連載です。
CDの録音があり、この連載の為の録音する余裕がありませんでした・・・すみません!
私はこの連載の演奏の多くを「ユーロピアノ」のショールームのスタジオで録音して います。ユーロピアノは私が大好きなピアノ- ドイツのべヒシュタインやザウター、 フランスのプレイエルなどを取り扱う輸入代理店です。そして古い楽器もたくさんあ ります!チェンバロや、200年前のフォルテピアノ、1930年代のとても味のあるピア ノ、その他も様々な「年齢」や「経歴」のピアノが置いてあります。
今までこの連載の録音のために色々な楽器を使わせてもらいました。ピアノ好き人間 にとって、色々なピアノに触れられるほど楽しい事はありません。楽器にも人のよう に色々な個性があり、鍵盤にそっと触れて美しい音色を聴くと、この曲はどうかな、 こんな音が合うかな?どんどん音楽の世界が広がってきます。ショパンが気分のよい 時に弾いたと言われるプレイエル。例えば遺作のノクターンなどをこの楽器で弾く と、よく歌う美しい旋律と物悲しく、少し抑えた感じの伴奏部がまるでショパンの哀 しみを伝えているように聴こえます。ピアノに作曲家の魂が入っているように。ま た、ドビュッシーのカラフルな和音をべヒシュタインで奏でれば、鐘のような深いバ スの上にそれぞれの音が色を加え、パステル色が空間で混ざり合って新しい色を作 り、今まで聴いた事のないような、濁りのない美しく新しい響きを体験する事ができ ます。ドビュッシーはこの楽器だからこそ、あの独特の色彩感を作る事ができたのか も知れません。よいピアノは曲の解釈もテンポも、まるで先生のように「教えてくれ る」事がよくあります。そんな時は「こう弾けばよかったのか?」等と眼からウロコ が落ちた状態です!楽器の可能性というのは音量やタッチだけでなく、こんな所にも あるのですね。数種類のピアノを使って「弾き比べ」コンサートをする時にお客さん にも言うのですが、個性の異なる素晴らしいピアノたちに囲まれていると、天国にい るようです!
私の家に「USEN440」といって440局のラジオ放送局を聞けるサービスがありま す。その中の「クラシックピアノチャンネル」では24時間ピアノ演奏を楽しむことが できます。色々な演奏家のピアノを聴く事ができ、もちろん演奏自体は演奏家によっ て違いますが、楽器はほとんどいつも同じに聞こえます。やはり、95%の録音にスタ インウェイが使われているからでしょうか。もちろんスタインウェイは多くの演奏家 が選ぶだけあって、色々な点でとても優れた素晴らしいピアノです。でも例えば同じ 曲を、他の素晴らしいピアノメーカーの楽器の響きでも聴いてみたいな・・と思うの です。ヴァイオリンを弾く人は楽器にこだわっている人がとても多く、自分にぴった りのヴァイオリンを探して世界中を回っているような人もいます。そうやって選んだ 楽器は、きっと自分のパートナーにやっと巡り会えたように愛しく、かわいく感じる と思います。なぜかとても対照的なことに・・ピアノはと言えばカタログから選んで 買っている人もいます!メーカーによっても音の違いは大きいですが、例えば同じ メーカーの同じ機種でも音が違います。まさかパートナーをカタログから選ぶ人はい ないでしょうが(いないですよね、笑)、楽器を自分の耳、指、感覚で選べば、表現 する音楽の質も違ってくるのではないかと思います。
今回の連載の録音はべヒシュタインのA.190モデルを使いました。特に最近とても調子 がよいピアノです。弾いていくと音色やタッチが変わってくるのもよいピアノの魅力 です。次回はどんなピアノで弾けるでしょうか???楽しみです。
それでは、また!
オランダ出身。7歳からピアノを始め、15歳で音楽院入学。アムステルダム・スヴェーリンク音学院に於いてW・ブロンズ氏他に師事する。1996年音楽活動の為、日本に移住。「肩の凝らないクラシック」をモットーに各地で通常のコンサートから学校や施設のコンサート、香港等海外でも公演。九州交響楽団との共演、CD「ファイナルファンタジー・ピアノコレクションズ9」の演奏と楽譜監修を行うほか、CD「夢」をリリース。個人/公開レッスンや音楽講座を行い、ピアノ・音楽指導にも意欲的である。洗足学園音楽大学非常勤講師、洗足学園高等学校音楽科講師として、「演奏法」の授業 、演奏家を目指す生徒のための「特別演奏法」の授業、ピアノレッスンを受け持つ。
NHK/BSテレビ「ハローニッポン」、「出会い地球人」
TBSテレビ「ネイバリー」、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」他出演。
ピアノ演奏法のページ : http://www.senzoku.pianonet.jp も作成中
演奏者のホームページ http://www.pianonet.jp