ショパン　バラード第4番　　 前半：(8,43s)　 後半：(4,35s)　

すっかり秋ですね！

今日は秋晴れの気持ち良い一日になりそうなので、山登りに出かけました。思ったより日差しが強く、私の普段の白い顔は日焼けで真っ赤になってしまい少し恥ずかしいです。

秋になると、僕の小学校の頃のキャンプをよく思い出します。小学校では毎年今頃、全校生徒でキャンプに行きましたがそこで、生徒達がすごく楽しみにしていたイベントがあります。日本ではちょっと考えられない事だと思いますが、オランダの教育方針で最も大切なのは「自立心を育てる」事。そのために当時色々な小学校でも行われていた事です。

説明しましょう。
まず皆夜キャンプ場に集合します。先生は生徒たちを5人づつのグループに分けます。そして5人の子供になんと目隠しをして車に乗せます。20分程そのまま車で走り、5人の生徒を車から降ろし、そこで目隠しを取って、「じゃあね~、自分たちでキャンプ場に戻ってね！待っていま~す・・！」と、先生はまた車に乗ってざ~っと行ってしまう。先生はこのように5人グループを森のあちこちで車から降ろします。

さあ、ここからが大変。自力でキャンプ場への道探しがはじまります。懐中電灯や地図などを持って行くのは禁止され、唯一、あまり明かりの点かないポンプ式の電灯（手で握って空気を送ると電気がつく）だけが許されていました。

皆さんどうでしょうか？5人の小学生が夜、真っ暗の森の中に置き去り・・・考えられますか？でも、私達にとってはこれほど楽しい事はありませんでした！ちょっとした探検隊のようなドキドキ気分は今でも小学校の一番の思い出です。

一生懸命みんなで協力し合って、自分達の力だけでゴールを探して歩いて、歩いて・・・２時間位でやっと元のキャンプ場に到着でき、他の皆もポツポツ戻ってきます。すっかり夜中になった時間にキャンプ場に戻って、焚き火の回りで他の皆の帰りを待つのもまた楽しい事でした。

しかし・・時々戻って来られないグループも居てそんな時は翌日、警察が迷子になった子達を連れてきます。なんと歩いて隣の国ドイツに迷い込んでしまった子供達もいました！！でも皆が無事に戻ってきてよかった。今考えると、学校にとってもよかったですね。

子供の頃に味わった探検の楽しさを、今は音楽の世界で楽しむ事ができます。演奏しても・・聴いても同じですが、音楽の世界に飛び込めば、音楽は色々な場所へ連れて行ってくれます。明るい所、暗い所、幸せの人がいる場所、悲しい所、花がたくさん咲いている山、怖い洞穴、不思議な水中の世界へ。音楽は人生をすごく豊かにする力があると思います。人間を幸せにする力がある事を私は深く信じています。

子供の世界はとても狭いです。自分の家・・学校・・おばあちゃんの家くらいまででしょうか。世界の広さをまだ意識していません。子供が5人だけで夜の森に出る事、自分が知っている安全な世界から一歩離れる事は怖いですが、それと同時に、新しいものと出会えるかもしれない期待で、とてもわくわくします。子供にとって、こんな風に自分の世界が少しづつ広がるのは楽しいですね。毎日が新しいチャレンジ、毎日が新しい物と出会うチャンス・・大人になってから、子供の時の前向きな気分はとても懐かしいです。それが少なくなった今、ちょっと寂しい感じがします。

つい最近、東京の満員通勤電車に乗りました。仕事に行く大人たちがたくさんいました。そしてヘッドホンで音楽を聴いていた人もたくさんいました。世界の広さを判った上で、毎日同じ会社に同じ電車で通うのはとても辛く感じられる事もあると思います。世界は広いのに、なんと自分の世界は狭い事でしょうか。自分の生きている世界の狭さを感じる経験は、きっと誰にでもあるのではないでしょうか。私は毎日そうです（笑）。しかしヘッドホンをつけて音楽に浸っていた人達だけは、ちょっと違っていました。電車に居るのに、別世界へ、はたまた異次元へ旅しているように感じました。

芸術は、少し灰色になった自分の生活を素晴らしい色に塗り変える力があります。どんなジャンルの音楽でも、どんな芸術でも、人間に幸せの気分を与えてくれます。音楽は人を（少しでも）幸せにします。演奏においても最終的な目標だと考えています。

今日、山を登りながら考えた事でした。

それでは、また！

ルイ・レーリンク