ルイのピアノ生活

第27回 表参道ステップ/曲:スカルラッティ ソナタK.87  

2006/08/04
♪ 演奏
スカルラッティ ソナタK.87  動画 動画:(3,50s)
 

青山の梅窓院という美しいお寺があります。ここに数年前、べヒシュタインのセミコンが入った時に、お披露目の演奏をした事があります。青山通りから一本路地を入ったところにあり、都心の真ん中でこんなに静かな、心の安らぐような場所があって、しかも僕の大好きなべヒシュタインピアノがあることに感動して、そのときからずっとここで何かイベントが出来れば・・と思っていました。ピティナで連載が始まり、ステップを開催できればという話になり、会場の候補に真っ先に頭に浮かんだのがこのお寺でした。「べヒシュタイン」は少し癖があるかもしれませんが、音楽の「心」を表現できる、本当に美しい楽器です。歴史も古いドイツの銘器で、ファンも多い(オランダの学校の先生のレッスン室はべヒとスタインウェイが1台ずつ、今は2台ともべヒになっているそうです)のに、スタインウェイや他の楽器にくらべて知名度が低いのです。この楽器を皆さんに弾いてもらえる機会にもなるし、私は時々レッスンでも、「音色の美しい楽器は先生と同じくらい色々教えてくれる」と言っています。だからこのステップのテーマは:「美しいお寺、美しい楽器で、美しい音楽を」にすぐ決まりました。

多くの方が応募してくださいましたが、時間の関係で総勢89名で会を行う事となりました。「ぶんぶんぶん」からかなり高度な現代曲まで、色々な演奏がありました。どの方も皆さん一生懸命弾いてくださった姿が感動的でした。中にはべヒシュタインの音色を、本当にいとおしむように弾いてくれた演奏者が何人も居て「音色と響きが印象的でした・・・」などの感想が出てきたことは本当にうれしかったです。

ただ、2部目のコメントを書いたあとの休憩中の事、椅子が高過ぎる、、という意見が演奏者の関係者の方からちらちら出ている、という話が耳に入りました。固めのクッションがついた素敵なデザインの椅子なのですが・・スタッフの様子からはかなりピリピリした様子が伝わってきました。いつか「このピアノ弾きにくいですね」、と言われるのではないかと、ドキドキして来ました。

ピアノ演奏者は色々なピアノを弾かなくてはなりません。ヨーロッパの田舎の老人ホームで、10年間調律していないアップライトピアノを弾くこともあります。椅子が無くて、ゴミ箱を逆さにして座ったり、冬の教会では凍りそうな寒さの中の演奏になります。いつも完璧な状態で演奏できるわけではありません。演奏者はいつもと違った状況でも、その状況でベストを出そうと努力するのです。

ステップはコンクールと違い、「競う」要素はなく、演奏に対してコメントをもらう主旨の会です。自分の演奏を客観的に見つめるとてもいい機会だと思います。コメントももちろん参考になりますが、そこで弾くピアノ、出会う人、困難までも、ひとつひとつが音楽を続けていく上ではとてもいい経験になります。

次回もこの梅窓院で、同じテーマで、もちろん同じピアノで、それから同じ椅子で(笑)ステップを開催できたらいいなと思っています。

それでは、また!

ルイ・レーリンク





ルイ・レーリンク

オランダ出身。7歳からピアノを始め、15歳で音楽院入学。アムステルダム・スヴェーリンク音学院に於いてW・ブロンズ氏他に師事する。1996年音楽活動の為、日本に移住。「肩の凝らないクラシック」をモットーに各地で通常のコンサートから学校や施設のコンサート、香港等海外でも公演。九州交響楽団との共演、CD「ファイナルファンタジー・ピアノコレクションズ9」の演奏と楽譜監修を行うほか、CD「夢」をリリース。個人/公開レッスンや音楽講座を行い、ピアノ・音楽指導にも意欲的である。洗足学園音楽大学非常勤講師、洗足学園高等学校音楽科講師として、「演奏法」の授業 、演奏家を目指す生徒のための「特別演奏法」の授業、ピアノレッスンを受け持つ。

NHK/BSテレビ「ハローニッポン」、「出会い地球人」
TBSテレビ「ネイバリー」、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」他出演。

ピアノ演奏法のページ : http://www.senzoku.pianonet.jp も作成中
演奏者のホームページ http://www.pianonet.jp

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