ブラームス：間奏曲 作品118 第2番　　 動画：(6,01s)

音学（楽）ほど簡単な学問はありません。数学だと、2＋2＝4です。間違えないですよね！3と答えたら、間違いです。5も6も・・・全部駄目ですよね。しかし少し不思議ですが、音楽だと、自分が好きな答えをしても大丈夫です。2＋2＝6でも良いです。2＋2＝0でも結構です。

学校で私が一番好きな授業は数学でした。問題を解くのが楽しく好きでしたが、それだけではなくて、数字の世界がとても好きでした。どこかロマンティックな別世界と感じていました。その世界に飛び込んで、想像力で問題をイメージして、空想力で色々な方向から問題にアプローチして、問題を解こうとします。頭の中で世界が広がります。

オランダの学校では、答えを出すのは一番大切な事ではありません。どのように問題を解決しようとする過程が大事です。例えばテストで、正解しても、答えだけでは減点されてしまいます。逆に答えは間違っても、どのように問題を解決しようとしていたか、又は自分のオリジナルの考え方を展開できれば、得点をもらえます。私は音楽でも、数学でも「答え」を出すより、問題・課題について考えるのが好きです。しかし、数学には必ず正解がありますが、さて、音楽に「答え」はあるのでしょうか？

音楽には問題やら課題がとても多いのですが、数学と違って、答えは無いのだと思います。先ほどの問題では「４」が正確な答でしたが、果たして正確な弾き方はあるでしょうか？

演奏にミスをしない事が正確なのでしょうか？
以前私のついていた先生がコルトーの演奏会に行った時のこと。コルトーは半分以上の音をミスしていた（先生によると・・少し大げさと思いますが・・・）が、演奏は今まで聴いた音楽の中で最も美しく、一生忘れられないものだったという事です。

では、作曲家が書いた通りに弾けば正確でしょうか？
ホロヴィッツの演奏を聴きますと、彼は楽譜に書かれているクレシェンドを、代わりにデクレシェンドで弾く事もあります。でも、すると、いきなり作曲家が本当に言いたかった事が明らかになります。

作曲家が望んだように弾きますと正確ですか？
もしモーツァルトの演奏の録音が残っていたら、これは正しい演奏になりますか。それを聴いて同じように弾けば正確でしょうか？皆が作曲家と同じように弾く事。それは作曲家が本当に望んでいた事でしょうか？

結局お料理も同じだと思います。カレー・・肉じゃが・・などを正確に作る事できますか？
正しいラーメンありますか？そしてコンクールで入賞した一流シェフや五ツ星の最高のレストランより、お袋の味が一番美味しく感じる時もあります。味も、音楽も主観的です。正確さより、自分の口や趣味に合う料理や音楽を楽しめば良いのではないでしょうか。

私はピアノを教えていて、時々生徒は少し「受身」だと感じる事があります。自分が一番好きな音楽（味）を積極的に探すより、先生に「こう弾いて」と言われるのを待っています。「これをしてもいいですか？駄目ですか？」いくら考えても、先ず自分でやってみないと分からないです！

少し国民性も関係あるかも知れませんが、答えを出すのを怖がらないで欲しいです。もし2＋2＝5と答えたとしても、恥ずかしい事ではないと思います。だって答えは一番大事ではないですから！

それでは、また！

ルイ・レーリンク

この曲を弾く時に、語るように弾きましょう。どこで息を吸うか・・何を言いたいか・・どこの音を強調するか・・。語るように、大事な事を言う時に、テンポを少し遅く。自分で作ったお話を語りながら弾くのはとても良い練習になると思います。もしできましたら・・英語やフランス語やイタリア語でお話を語って下さい。言葉の旋律は日本語と違いますから！ 今回このビデオを収録したロケーションはPTNAの東音ホール（東京都豊島区巣鴨） でした。