耳をひらく~第5章:統合力&創造力(1)広げた音空間で「1曲」を捉える
第4章のように発想をどんどん飛ばしていくと、新しい発見や気づきが得られることがある。この第5章では、広げた発想力をいかに再統合し、解釈や演奏へつなげていくか、今までの学びを活かして新しい命題に挑むか、について書いてみたい。
発想を広げるのも、それを再統合するのも、鍵となるのは「問い」である。問いを発することで、音の世界を広げ、掘り下げ、そぎ落としながら、学び取ったエッセンスを内なる知や体験に統合していく。そのプロセスを繰り返すことで、自分の軸ができてくる。その結果、楽譜の見方や聴き方が変わっていくだろう。
ここでは第4章(「1曲から音空間を広げる」)とは逆に、「広げた音空間の中で1曲」を捉えてみたい。どのような切り口があるだろうか、いくつか提示してみた。ここでは必ずしも正答を得ることではなく、問いを発し(→青ライン)、それを考察するための資料を挙げ(青文字)、自分に引き寄せて考える(←赤ライン)、というプロセスに慣れるのが目的である。テーマ曲は再び、J.S.バッハの「メヌエット」(組曲BWV822より第7番)。
※訂正:「他の拍子の舞踊は?」→「他の3拍子の舞踊は?」となります。
普段から何気なく、1つのものを見聞きする時、2つ以上の複合的観点でとらえている方が多いと思う。それを少し意識するだけで、より広い世界が見えてくるだろう。聴覚の世界を広げることは、認知を広げることでもある。では、次の例題も考えてみよう(参考例は次回)。
音楽ジャーナリストとして各国を巡り、国際コンクール・音楽祭・海外音楽教育などの取材・調査研究を手がける。『海外の音楽教育ライブリポート』を長期連載中(ピティナHP)。著書に『ハーバードは「音楽」で人を育てる~21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育』(アルテスパブリッシング・2015年)、インタビュー集『生徒を伸ばす! ピアノ教材大研究』(ヤマハミュージックメディア・2013年)がある。上智大学外国語学部卒業。在学中に英ランカスター大学へ交換留学し、社会学を学ぶ。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会勤務を経て現職。2007年に渡仏し「子どもの可能性を広げるアート教育・フランス編」を1年間連載。ピアノを幼少・学生時代にグレッグ・マーティン、根津栄子両氏に師事。全日本ピアノ指導者協会研究会員、マレーシア・ショパン協会アソシエイトメンバー。 ホームページ:http://www.erikosugano.com/