海外の音楽教育ライブリポート/菅野恵理子

若手ピアニストのための英語ワークショップ (4)福田靖子賞対象・全4回

2014/02/21
●第4回目(2014/02/07) 配布資料
(1)
いよいよ最終回!この日はまず単語とフレーズの習得から(「国際コンクール参加・留学編」40語)。単語・語句をいくつかピックアップして説明しながら全員で読み上げました。
(2)
第4回目の聴き取りテーマは「20世紀の音楽」。
  • i)

    教材は指揮者レナード・バーンスタインがハーバード大学で行った講義映像を使用。シェーンベルグと十二音技法について、まずはシャドウイングで内容を把握し(25:08-25:35)、その中から質問を出して答えとなる語句を抜き出してもらいました。("What is the motivation of composition for artists in the 20th century, whether within the tonality system or atonality?")

  • ii)

    次に、異なる意見を聞き分ける練習。「シェーンベルグとドビュッシーの違い」について語るバーンスタイン(15:10-16:13)と内田光子さんのインタビュー(7:30-8:25)を聞き、2人の意見がどう違っているのかを聴き取ってもらいました。("How do they describe the differences / similarities between the works of Debussy and Schoenberg? Tell us several phrases or sentences that stand for their opinions.")全音音階を生み出したドビュッシーは20世紀音楽の先駆けであったというのは両者とも一致している点ですが、ドビュッシーと無調音楽の関係性についてはやや異なる捉え方をしています。微妙な違いを聞き分ける力を鍛えたいところですね。

  • iii)

    最後に、バーンスタインが音列(tone row)の仕組みについて語っている1文をディクテーション(37:32-37:47)。少し長いので3つの節に区切って1人ずつ担当してもらい完成!文章がどこで区切られるのかが分かると、文章全体の構造が見えてきます。ディクテ完了後、2回ほど全員で声に出して読み上げてもらいました。

(3)
後半40分間は質疑応答形式の会話へ!第4回目のスピーキングテーマは、「次に弾きたい曲や将来の夢など、自分について語ること」。質問群から好きなものを選び、英語で答えてもらう練習を行いました。
  • What kind of work / composer do you want to play next? Why?
     佐藤君は現在ロマン派と近現代を弾いているので、3年次にはバロックやベートーヴェンなどの古典をもっと勉強したいという意欲を見せてくれました。
  • What is your dream in the future?
     本山さんはこれから芸術家としての精神を学び、どの年代・レベルの子に対しても一貫して質の高い指導ができる先生になりたい、という素晴らしい将来の夢を語ってくれました。
  • Do you have any questions to any living / past composers ?
     中川さんはプロコフィエフに対して、「ピアノ協奏曲第2番の初稿を戦火で消失した後に、記憶をたどって書き直したという第二版では修正や改訂をしたのですか?」という質問。なかなか良い問いかけですね。また、クララに対するブラームスの想いを知っていたか、シューマンに聞きたいそうです。
●最後に

今回の英語ワークショップは1か月半で4回と短期集中型でしたが、語学は集中して一気に勉強するのも効果的です。そして言葉だけでなく、その背景にある考え方を知ることも大事ですね。分からない箇所はまず日本語でもいいし間違ってもいい。何より大事なのは、伝えたい内容があること!英語学習は対話する相手がいれば理想的ですが、一人でもできることがあります。自習法なども含めてぜひご参考になれば幸いです。

ワークショップ内容⑧以降は今回実施してないもの。
① 単語・フレーズを覚える
② ヒアリング
③ シャドウイング
④ ディクテーション
⑤ 内容に関する質問
⑥ 異なる意見の比較
⑦ 質問形式の会話
⑧(暗誦)
⑨(要約)
⑩(作文・日記)
⑪(自由形式の会話、ディスカッション)など
使用した映像・音源
①Michael Tilson Thomas "Music and Emotion through Time" (TED)
字幕なし字幕あり
  •  字幕なし版でトレーニングした後、字幕版で内容確認すると効果アップ!
The Stories behind Classics "Whole Notes - FREDERIC CHOPIN"
Mitsuko Uchida on Schumann's Piano Concerto
Leonard Bernstein "The Unanswered Question 1973 " vol.5
Mitsuko Uchida on Schoenberg's Piano Concerto
Arnold Schönberg in Vienna before 1900
Interview with Arnold Schoenberg "About Art"

ワークショッププログラム作成・実施:菅野恵理子


菅野 恵理子(すがのえりこ)

音楽ジャーナリストとして各国を巡り、国際コンクール・音楽祭・海外音楽教育などの取材・調査研究を手がける。『海外の音楽教育ライブリポート』を長期連載中(ピティナHP)。著書に『ハーバードは「音楽」で人を育てる~21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育』(アルテスパブリッシング・2015年)、インタビュー集『生徒を伸ばす! ピアノ教材大研究』(ヤマハミュージックメディア・2013年)がある。上智大学外国語学部卒業。在学中に英ランカスター大学へ交換留学し、社会学を学ぶ。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会勤務を経て現職。2007年に渡仏し「子どもの可能性を広げるアート教育・フランス編」を1年間連載。ピアノを幼少・学生時代にグレッグ・マーティン、根津栄子両氏に師事。全日本ピアノ指導者協会研究会員、マレーシア・ショパン協会アソシエイトメンバー。 ホームページ:http://www.erikosugano.com/

【GoogleAdsense】