ピアノ指導者団体の国際ネットワーク(IFPS)アジアで初発足!(4)新たに発信
アジアで初発足!
~International Federation of Piano Societies (IFPS)
アジアで発足したこのピアノ指導者ネットワーク(IFPS)は今後どのように発展していくだろうか。アジア諸国ではクラシック音楽受容の歴史も違えば、学習環境、カリキュラム、指導者が向き合っている課題、社会のあり方も異なる。ピアノ指導者団体が組織化されていない国もある。しかしどの国にも素晴らしい才能があり、それを伸ばしてあげたいという情熱にあふれている。そこに違いはない、とあらためて感じた。
現在、アジアの潜在能力はあらゆる分野において世界から注目されている。下記は昨年の記事からの引用であるが、中国やシンガポールではすでにアメリカやオーストラリアとの中長期的な教育プログラムの伝授や人材交流が進んでいる。
「実際、アジア諸国がもつ大きな潜在能力に内外が気づき、欧米とアジアがより深く、より密接に知財の交換を始めている。大学やビジネススクール、法律事務所など、いわば欧米の知がアジア進出を始めているのはその一例である(シンガポール大学内にイェール大学分校を新設Yale-NUSといった例もある)。音楽業界も例外ではない。2013年以降ジュリアード音楽院プレカレッジが中国・天津市に新設される。またシドニー交響楽団は星海音楽学院(広州)と3年間のパートナーシップ契約を結び、文化を共有しながら優れた音楽家を生み出していきたいと発表した。同様に、ニューヨーク・フィルハーモニックは上海交響楽団と4年間のパートナーシップ契約を結び、2014年より年間10日から14日ほど上海でオーケストラ・トレーニング教育プログラムを展開する予定だ。さらにニューヨーク・フィル本拠地であるリンカーン・センターは、天津市にある複合文化施設のコンサルタントになることを発表している。これらは単発のコンサートツアーではなく、中長期的計画に基づいた教育プログラムであり、両文化の融合・再創造・発信を意味している。上記事例はいずれも中国だが、いずれ他国もそれに追随する動きが出る可能性はある。」
(『音楽業界が自己成長する寄付文化とは(4)~次世代型ファンドレイジング・未来を担うアジア社会』より)
近年、単発のコンサートやマスタークラスだけではなく、新しい才能開発のノウハウが凝縮された教育プログラムがアジアに広まりつつある。アジアが自らの潜在能力を顕在化させ、グローバルに役立てる時期が来ているとも言える。日本にも多くの知恵やノウハウの積み重ねがある。お互いに知恵を出し合いながら結ばれる新たなネットワークは、クラシック音楽をより発展させていくための受け皿になるだろう。目指すは、新たな発信者である。
- 次世代型ファンドレイジング・未来を担うアジア社会(2012年)
- マレーシア音楽祭~子どもにぴったり!オール・イン・ワン型音楽祭(2011年)
- マレーシアが秘める潜在能力(2011年)
- FACPアジア文化交流促進連盟~つなぐ・アジアから世界へ発信するために(2011年)
- 香港国際ピアノコンクール~ユニークな選抜方法(2011年)
- 国際コンクールの今~アジア、北欧・・21世紀は個性派コンクールへ(2011年)
- 上海の初等音楽教育~中国からなぜ人材が輩出するのか(2005年/牛田敦さん)
- ハノイ音楽院~先進国が失いかけた「音楽をする喜び」がここに(2005年/久元祐子先生)
- 中国流・才能と技術を磨く指導とは~国際コンクール覇者の先生(2005年/森岡葉先生)
- 上海国際ピアノフェスティバル~アジアパワーの根源を探して(2005年/川崎みゆき先生)
- 韓国音大訪問記~エネルギッシュで厳しい競争と優しさの同居(2003年/久元祐子先生)
音楽ジャーナリストとして各国を巡り、国際コンクール・音楽祭・海外音楽教育などの取材・調査研究を手がける。『海外の音楽教育ライブリポート』を長期連載中(ピティナHP)。著書に『ハーバードは「音楽」で人を育てる~21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育』(アルテスパブリッシング・2015年)、インタビュー集『生徒を伸ばす! ピアノ教材大研究』(ヤマハミュージックメディア・2013年)がある。上智大学外国語学部卒業。在学中に英ランカスター大学へ交換留学し、社会学を学ぶ。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会勤務を経て現職。2007年に渡仏し「子どもの可能性を広げるアート教育・フランス編」を1年間連載。ピアノを幼少・学生時代にグレッグ・マーティン、根津栄子両氏に師事。全日本ピアノ指導者協会研究会員、マレーシア・ショパン協会アソシエイトメンバー。 ホームページ:http://www.erikosugano.com/