ヴァン・クライバーン国際コンクール(25)番外編・小学生を魅了する音楽教育
2013/06/18
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ヴァン・クライバーン国際コンクール期間中には、様々な音楽教育プログラムが行われた。ピアノ・テキサスマスタークラス以外にも、クライバーン財団主催の教育プログラムが通年で行われている。そこで、ここにいくつかをご紹介したい。
●地元学生が、コンクールの旗をデザイン!
地元の小中高生2300名がヴァン・クライバーン国際コンクールの旗をデザインし、その中からボランティア委員会によって44枚の旗が優秀作品として選ばれ、街中に掲示された。街中どこを歩いていても、色とりどりの旗がはためいていて、歩いているだけで何だか楽しくなってくる。
また毎回コンクールが始まる数日前に、地元小学校で出場者によるミニコンサートが行われた。これは「Cliburn Competitors in Schools」というプログラムで、今年は10名の出場者が演奏したそうだ(Sean Chen, Alessandro Deljavan, Yury Favorin, Lindsay Garritson, Jayson Gillham, Claire Huangci, Kuan-Ting Lin, Alex McDonald, Nikita Mndoyants, Alex Poliykov)。
●子どもたちに音楽を!一般科目と共に学ぶ「Musical Awakening」
クライバーン財団では教育アウトリーチ活動も盛んで、2001年より『Musical Awakenings』シリーズが始まったことはすでに述べた。アーティストが地元小学校でミニコンサートを行うプログラムで、年間125校、34000名の児童(2-4年生)に音楽を届けている。アメリカでは音楽は義務教育ではなく、学校で教えるか否かは州や学区・学校の判断に任されている。そこでクライバーン財団では、一般科目と融合させて音楽を学べる指導者用カリキュラムを独自に作成している。(参考:『アメリカでは、なぜ民間支援がつくのか?(5)コミュニティとの協創を―公立小中学校教員とコラボで音楽の授業を』)。
今回はそのプログラムを統括しているシールズ・コリン・ブレイさん(Sields Collins Bray)にお話を伺った。フォートワース交響楽団所属のピアニストで、1985年に学生として初めてヴァン・クライバーン国際コンクールを聴き、1989年大会から現在まで審査員長のアシスタントを務めているそうだ。
「『Musical Awakening』では、小学生を対象に40分間のコンサートを開いています。またスタディ・ガイドとして現在26のプログラムを用意しており、児童音楽教育専門のジョン・フィエラベンド氏(Dr. John Feierabend・コネティカット州ハートフォード大学教授)とともに、毎年新しいプログラムを3本ずつ書き下ろしています。
内容は、ダンス、形式、特定の曲に関するプログラム(『キラキラ星変奏曲』『展覧会の絵』など)、即興、その他(『音楽とユーモア』など)、即興など、多岐にわたります(*リンク先はPDF)。プログラムは30分間で、動いたり、聴いたり、数えたり、考えさせたり、質問を投げかけて生徒との対話を取り入れたり、とてもインタラクティブな内容ですね。9月から翌年4月までに126校を廻りますので、なかなか忙しいですよ(笑)!」。
今後さらに訪問校を増やしていきたいと、熱意を込めて語って下さった。その他、フォートワース現代美術館やキンベル美術館での『クライバーン・コンサートシリーズ』や、現代美術館では現代作曲家によるワークショップ開催なども担当している。
なお、コンクール期間中は「Cliburn Notes」という冊子が地元の学校に14000部、地域コミュニティセンターに1000部、またコンクール会場でも配布された。出場者30名の紹介や、ピアノの構造の説明、クロスワードパズル等があって、なかなか楽しい内容。ご興味ある方はこちらへ!
菅野 恵理子(すがのえりこ)
音楽ジャーナリストとして各国を巡り、国際コンクール・音楽祭・海外音楽教育などの取材・調査研究を手がける。『海外の音楽教育ライブリポート』を長期連載中(ピティナHP)。著書に『ハーバードは「音楽」で人を育てる~21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育』(アルテスパブリッシング・2015年)、インタビュー集『生徒を伸ばす! ピアノ教材大研究』(ヤマハミュージックメディア・2013年)がある。上智大学外国語学部卒業。在学中に英ランカスター大学へ交換留学し、社会学を学ぶ。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会勤務を経て現職。2007年に渡仏し「子どもの可能性を広げるアート教育・フランス編」を1年間連載。ピアノを幼少・学生時代にグレッグ・マーティン、根津栄子両氏に師事。全日本ピアノ指導者協会研究会員、マレーシア・ショパン協会アソシエイトメンバー。 ホームページ:http://www.erikosugano.com/
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