リーズ国際コンクール(19)審査員・聴衆のコメント&英国の聴衆教育
2012/09/17
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第22回リーズ国際コンクール審査員、および聴衆のコメントを一部ご紹介します。
●審査員のコメントより
・クリスティーナ・オルティーズ先生
(ブラジル・Cristina Ortiz)
優勝したフェデリコ・コッリさんは特別な才能を持っていますね。ブラームス「パガニーニの主題による変奏曲」や、ロシア作品など素晴らしかったです。音のコントロールも大変よく効いていたと思います。アンドリュー・タイソンさんも素晴らしかったです。また才能があるのに途中で落ちてしまった方がいたのは残念でした。(若いピアニストに向けてのメッセージとしては)皆さんよく準備されていたと思います。ただ、同じ曲を2回聴くと次の展開が予想できてしまうという演奏ではなく、毎回リクリエイト(再創造)する心づもりでいてほしいですね。それには知性も必要ですし、ピアノだけでなく、室内楽やオーケストラのコンサートを聴いたり、室内楽を共演したり、作曲家についてよく研究することが大事です。例えばブラームスであれば彼の交響曲や室内楽を聴くと、ピアノ作品をどうオーケストラのように弾けばいいのかというアイディアが得られます。
・バオ・フイシャオ先生(中国・Bao Huiqiao)
リーズ国際コンクールの審査は初めてです。3週間楽しませて頂きました。全般的にとてもレベルが高かったです。多くの才能ある若手ピアニストが世界中から来ていました。ファイナリストは全て才能豊かで何か特別なものを持っていると思います。フェデリコ・コッリさんは特別な才能で、特にあのブラームスのパガニーニの主題による変奏曲は聴いたことがありません。彼の音楽は心から出ており、先生から教えられたものに従っているのではないと思います。中国のジャイアン・サンさんもよかったですね。
●ファイナル来場者の感想
・大野さん(ロンドン在住)
協奏曲はアンドリュー・タイソンさんが良かったです。ガラコンサート(ソロ)では1位のコッリさんと2位のルイさんの音が別格と思いました。国際コンクールは何度か聴いているのですが(エリザベト王妃コンクールのヴァイオリン部門等)、ピアノの国際コンクールは初めてです。皆さんが全てを傾けて弾いていらっしゃる姿に感動しました!
・メアリー・チャンさん(中国出身・ロサンゼルス在住ピアノ指導者)
国際コンクールを見学するのは初めてですが、一次予選から全て聴きました。皆さんよく準備されていて、演奏の水準はとても高かったと思います。中にはテクニックも演奏も感情表現もできていながら、まだ学生さんのような演奏もありましたが、このファイナリスト6名は皆さん成熟した音楽家だと思います。これから世界中のコンクールを聴きたいと思います。
その他、アンドレイ・オソキンズさん(第4位)、ジェイソン・ギルハムさん(第6位)に対する賛辞や温かいコメントも寄せられた。
●英国で行われるプレコンサート・トーク
欧米ではコンサート前に希望者を集め、簡単な曲目解説をするプレコンサート・トーク(Pre-Concert Talk)がある。呼称は国や地域によって様々だが、リーズのタウンホールでもそれが行われているそうだ。現地在住でファイナルにも来場された今井洋さん(リーズ大学研究職)より情報を頂いた。
タウンホールでのプレコンサート・トークは、コンサート開演前に希望者100人ほど集めて、30分から45分間ほど行われる(無料)。曲の時代背景や構成、作曲家についてなど、曲のフレーズを一部ピックアップし、ピアノの生演奏や過去のDVD等を用いながら、どこを聴くと面白いかを解説をしてくれる。コンサートを聴く時には、演奏家がどのようにその曲をとらえ、何を表現したいのかがよく分かるようになっているという。解説者はプロの音楽家で、解説の仕方もそれぞれ個性的だそうだ。⇒2012年10月演奏会の一例。
その成果だろうか、コンクール聴衆の皆さんも自分の聴き方をしっかり持っている印象を受けた。ちなみに「聴衆賞」として、各ラウンドの審査結果を当てた聴衆(またはそれに最も近い人)に各200ポンドが授与された。【参考】英国内オーケストラやホールで行われているプレトーク例
【参考】ロンドン・レポート
菅野 恵理子(すがのえりこ)
音楽ジャーナリストとして各国を巡り、国際コンクール・音楽祭・海外音楽教育などの取材・調査研究を手がける。『海外の音楽教育ライブリポート』を長期連載中(ピティナHP)。著書に『ハーバードは「音楽」で人を育てる~21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育』(アルテスパブリッシング・2015年)、インタビュー集『生徒を伸ばす! ピアノ教材大研究』(ヤマハミュージックメディア・2013年)がある。上智大学外国語学部卒業。在学中に英ランカスター大学へ交換留学し、社会学を学ぶ。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会勤務を経て現職。2007年に渡仏し「子どもの可能性を広げるアート教育・フランス編」を1年間連載。ピアノを幼少・学生時代にグレッグ・マーティン、根津栄子両氏に師事。全日本ピアノ指導者協会研究会員、マレーシア・ショパン協会アソシエイトメンバー。 ホームページ:http://www.erikosugano.com/
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