ジーナ・バックアゥワー国際コンクール(2)ジュニア部門・山崎亮汰さんが優勝!
2012/06/24
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6月23日19時よりジーナ・バックアゥワー国際コンクール・ジュニア部門のファイナル審査が行われ、山崎亮汰さん(13)がプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番第1楽章を見事に演奏し、日本人初優勝を飾った。結果は以下の通り。(写真は審査員とファイナリスト。右端が優勝した山崎亮汰さん)
1位:Ryota Yamazaki (13, Japan)
2位:Tony Yike Yang (13, China/Canada)
3位:Xingyu Lu (13, China)
4位:Muzi Zhao (13, China)
5位:Pavel Verkhaturov (13, Russia)
6位:Allison To (11, USA)
山崎さんは的確なリズムと打鍵に加え、ここぞという時の説得力ある音で、プロコフィエフ第3番を見事に弾ききった。第一次予選はオール・ショパン、第二次予選はバッハ、ベートーヴェン、ラヴェルという選曲で臨み、特にベートーヴェンのソナタOp.53ロンドやラヴェルのクープランの墓で見せた曲想を自然に表現する力や、繊細さと力強さを併せ持つ音楽性が、プロコフィエフ協奏曲でも十分に生き、会心の演奏だった。山崎亮汰さんは「嬉しいです!これからショパンをもっと弾きたいです」と満面の笑みで語ってくれた。
第2位のトニー・イェクヤンさん(中国/カナダ)は、ショパンの協奏曲第1番第1楽章を、揺らめくような優美さと繊細さで表現した。第二次予選のプロコフィエフ・ソナタ第3番など、様々な表情が出せるピアニストだと思う。また第3位のシュンユー・ルーさん(中国)は強靭なテクニックとダイナミックさで、チャイコフスキー協奏曲第1番(※第3楽章を選択)を勢いよく弾ききった。
今回の伴奏ピアニストはコレット・ヴァレンタインさん。6人それぞれの持ち味に配慮し、寄り添うような音で伴奏を務めた。第4位以降も、そして惜しくもファイナルに残らなかった参加者も、第一次・二次予選にて高度なレベルでの競演を繰り広げていた。目を閉じて演奏を聴いていると、年齢のことはつい忘れてしまうこともしばしば。音楽性とテクニックが乖離することなく、音楽表現のためにテクニックが存在する、ということが標準的に教えられている印象を持った。ジュニア世代の音楽教育は、着々と進化している。
なお審査員長ダグラス・ハンフリーズ氏(Douglas Humpherys)は今回のジュニア部門審査を通して、「きわめて高いレベルでした。11~13歳の子供たちが大変な難曲をこなしていて、単に指が動くだけでなく、とても洗練された演奏だったと思います。Ryotaは第一次予選から際立っていました。素晴らしかったです」とコメント。
また審査員の一人ヨンヒ・ムーン先生(Yong Hi Moon, ピーボディ音楽院教授)は、「非常にレベルが高かったです。無邪気で可愛らしい子どもたちが、一度ピアノの前に座ると驚くほど成熟した音を出す、その無邪気さと無意識の成熟さが、信じられない水準で同居しているのですね。彼らは人生経験こそ多くありませんが、頭と心で音楽を感じて表現しています。Ryotaさんは素晴らしい頭脳を持っていて、音楽で何を表現したいのかを分かっていて、それを強く打ち出していました。なぜそれができるのかというと、頭と心できちんと理解しているのですね」と語る。
指導者の山本真希先生に、ピアノを習い初めた頃のエピソードと普段のレッスンについてお伺いした。「山崎くんは7歳からピアノを始めてそれ以来教えています。一つのことにのめりこむタイプで、今はピアノとレゴに夢中です。彼は譜読みがとても速くて耳も良いですね。バスティンから始めて、1年後にショパンのワルツ、2年後に木枯らしエチュードをポリーニと同じ速さで弾いていました。(曲の深め方は?)一つずつ虫眼鏡で拡大するように細かくさらっていくので、1回のレッスンで1曲だけということもあります」。凄いエピソードの持ち主だが、ピアノが大好き!という気持ちが音楽に真っ直ぐ表れていて、なんとも爽やかな印象。あちらこちらで声をかけられ、他の参加者からもひっぱりだこだった。(写真:右より二宮裕子先生・山崎亮汰くん・山本真希先生。現在二宮先生にも定期的にレッスンを受けている)
なおこの両日、結果発表前には関係者への感謝の言葉が述べられた。同コンクール事務局長のケリー・ビリング氏よりスポンサーや運営スタッフへの謝辞に加え、両親や指導者への感謝、そしてホストファミリーへの労いの言葉が伝えられ、会場全員でそれぞれに拍手を贈った。また常に斬新なアイディアと改革精神でここまでコンクールを導いてきた音楽監督ポール・ポライ先生にも、大きな喝采が贈られた。
また審査員長ハンフリーズ氏からは、「結果がどうであっても、明日の朝起きたら、皆さんピアニストであることに変わりはないのですよ」と激励の言葉がかけられた。そうした一つ一つの温かい言葉が、会場にいる子供たちに伝わっていた。終始とても雰囲気が良く、参加者同志で写真を撮り合ったり、サインを交換したり、コンクールが終わる頃にはすっかり仲良しになっていた。
さて、来週6月26日より14歳―17歳対象のヤング・アーティスト部門が始まる。日本からは小林愛実さんが出場予定。開演時間は11時より(日本時間26日21時より)。ライブ配信はこちらへ。ぜひご覧ください!
菅野 恵理子(すがのえりこ)
音楽ジャーナリストとして各国を巡り、国際コンクール・音楽祭・海外音楽教育などの取材・調査研究を手がける。『海外の音楽教育ライブリポート』を長期連載中(ピティナHP)。著書に『ハーバードは「音楽」で人を育てる~21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育』(アルテスパブリッシング・2015年)、インタビュー集『生徒を伸ばす! ピアノ教材大研究』(ヤマハミュージックメディア・2013年)がある。上智大学外国語学部卒業。在学中に英ランカスター大学へ交換留学し、社会学を学ぶ。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会勤務を経て現職。2007年に渡仏し「子どもの可能性を広げるアート教育・フランス編」を1年間連載。ピアノを幼少・学生時代にグレッグ・マーティン、根津栄子両氏に師事。全日本ピアノ指導者協会研究会員、マレーシア・ショパン協会アソシエイトメンバー。 ホームページ:http://www.erikosugano.com/
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