第一部<第12回>支合
さて、十二支についてですが、これは時計の文字盤(数字)を考えてもらうのが便利です。
12時の所に子を置き、1時に丑、2時に寅、3時に卯......と順に並べますと、北が子、東が卯、南が午、西が酉となって、そのまま地図の方位が現れます。
因みに東北を艮、東南を巽、南西を坤、北西を乾と呼ぶのも、十二支が占める位置を表しています。
この並びは、月の十二支をも示しています。即ち、12月節が子の月、1月節が丑の月...というのは、毎年変わることなく続きます。
十二支も五行に対応していて、亥と子が水、寅と卯が木、巳と午が火、申と酉が金、各間の丑、辰、未、戌が土となっています。それぞれ季節の冬・春・夏・秋と土用を表わしますが、実際の土用期間は、丑・辰・未・戌月の後半部分にあたります。土を掘ったり動かしてはならないとされる時期で、どうも辰と戌に強く働くようです。家の新築などは、辰歳、戌歳、また五黄土星年は避けた方がいいように思います。
十干と同様、十二支にも「支合」「三合」という特殊な結びつきがあり、それらによって五行上の相尅関係は大幅に改善します。
まず「支合」についてですが、これは時計の数字に斜線を並べていくように、二つの十二支を強く結びつける方則です。12時と1時の子と丑、11時と2時の亥と寅、10時と3時の戌と卯、9時と4時の酉と辰、8時と5時の申と巳、7時と6時の未と午の6種です。
カザルス(子)とJ.S.バッハ(丑)を結びつけたのは、この支合関係でした。本来尅気(水尅火)に当るショパン(午)とリスト(未)も同様です。ただ、音楽作品として接するのと、実際の対人関係とでは差が出るのは当然で、表面的には折り合いながらも、リストがショパンに抱いたコンプレックスは相当なものがあったようです。これは本来相生していたパガニーニ(二黒)やベルリオーズ(八白)とは、明らかに異なります。
音楽作品として向き合う場合は、支合、三合において、尅気の懸念はありません。同じ九星同志も比和と考えて差し支えないでしょう。
対人関係、特に男女関係において、支合が最も威力を発揮するのは出生日の十二支とされています。話題が音楽から外れてしまうので、ここでの詳述は避けますが、誕生日や誕生月の十二支が相手の生年支と「支合」して、関わる人や作曲家への共感として作用する点は、押さえておきたいと思います。
本来相生関係である上に、支合も成立する場合は、当然さらに親密の度を増すことになります。(2018.1.9)
作曲家でピアニストの金澤攝氏は数千人におよぶ作曲家と、その作曲家たちが遺した作品を研究対象としています。氏はその膨大な作業に取り組むにあたって、「十二支」や、この連載で主にご紹介する「九星」を道しるべとしてきました。対人関係を読み解く助けとなる九星は、作曲家や、その人格を色濃く反映する音楽と関わるに際して、新たな視点を提供してくれるはずです。「次に何を弾こうか」と迷っている方、あるいは「なぜあの曲は弾きにくいのだろうか」と思っておられる方は、この連載をご参考にされてみてください。豊かな音楽生活へとつながる道筋を、見出せるかもしれません。 (ピティナ読み物・連載 編集長)