会員・会友レポート

対馬に吹いた新しい風 ~赤松林太郎先生を対馬にお迎えして~

2017/08/28
対馬に吹いた新しい風 ~赤松林太郎先生を対馬にお迎えして~

2017年8月9日、トリオ・ムジーク・ケラーの皆様にご来島いただき、対馬市交流センターイベントホールにて「SUMMER FESTIVAL 2017」が開催されました。韓国に近い離島「対馬」は、少子化・人口島外流出の影響で児童・生徒数が激減して、歴史ある各校の吹奏楽部員数も減少の一途をたどっています。演奏したい楽曲があっても部員数が足りずに、大きなホールで演奏したくても自分達だけではプログラム構成が不可能で、演奏場所は専ら校内行事か老人ホーム慰問・・・と、都会では考えられない状況が続いています。そこで今回、ゲストをお呼びするだけではなく、児童・生徒も舞台で演奏を披露する「参加型コンサート」を企画するに至りました。トリオ・ムジーク・ケラーが奏でる「本物の芸術」に触れ、心を一つにして演奏する素晴らしさを体感するだけでなく、校区・学年の枠を払って取り組んだ編成の曲を大きなホールで演奏し、日頃味わう事のできない感激と感動を共有できる良い機会になりました。

当日は、開場前から長蛇の列ができ、750名収容ホールには立ち見が出るほどのたくさんの方々にご来場いただきました。第1部では、4校合同吹奏楽演奏、3校合唱、2名独奏。自分達の音楽作りが上手くいかないことを人のせいにし、音楽をすることの楽しさを忘れかけていた子供達ですが、その日の舞台では、はじけんばかりの笑顔と希望に溢れ、「楽器が鳴っている」白熱した演奏やはつらつとした歌声が響き、父兄だけでなく来場者にも熱いものがこみあげていました。

第2部はトリオ・ムジーク・ケラーの演奏。赤松林太郎先生の『剣の舞』には、対馬の子供達は、演奏中にもかかわらず「すげー!!!」「かっけー!!!」と思わず口に出してしまうほど。ヴァイオリン独奏・平山慎一郎先生には、有名な『チャールダーシュ』を。対馬初来島のチェロ奏者となる寺田達郎先生には、当日の子供達の多さに配慮していただき、音楽の教科書で慣れ親しんだ『白鳥』を。最後の『情熱大陸』や『リベルタンゴ』まで、子供達は目を輝かせ集中して楽しんでいました。コンサート終了後、たくさんの方々から「ありがとうございます!」「また是非お願いします!」のお声をいただけて感無量です。大自然の中で伸び伸びと育った子供達が「本物」にふれることによって、その育まれた豊かな感性が光り輝きだす瞬間がきっとあるはずです。今回のコンサートがそのきっかけになったのではないかと確信しています。

翌日8月10日は、対馬市教職員を対象とした教育講演会があり、赤松先生に講師を務めていただきました。前半では赤松先生の生い立ちを、後半ではピアノの公開レッスンを通して、言葉を分かりやすく伝えることの大切さ、自発的思考へのアプローチ法など、多くの生徒と日々真剣に向き合っておられる赤松先生だからこそできる、生きた教育そして指導法を直々に伝授していただきました。ピアニストへの講演依頼が初めての試みということでしたが、「教え育む」という点ではすべての教科に通じるものがあり、共感するものも多く、とてもよい講演でした。対馬市小学校教育研究会、対馬市中学校教育研究会、対馬市校長会、対馬市教頭会の先生方から、そのように感謝の言葉をいただきました。

生徒がピティナ・ピアノコンペティションへ参加することをきっかけに、たくさんのピアノの先生方と出会い、赤松先生やトリオ・ムジーク・ケラーの皆様方とも繋がることができました。そのご縁あっての夢のような2日間。過疎化の激しいこの島に新しい風を吹き込み、音楽で繋がる素晴らしさを幅広い世代の方々に実感していただけたと思っております。

熊本由香(くまもと・ゆか=指導者会員)


ピティナ編集部
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