カプースチンを語る~その人柄、創作姿勢と音楽~ 3
2015/03/03
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3.カプースチンを演奏したい人たちのために
- 西本
- 一番伝えたいのは、カプースチンの作品は、ジャズっぽく弾けばいいのではなくて、カプースチンにはカプースチンのスタイルがあるということです。
- 川上
- ショパンらしさとかラフマニノフらしさがあるように、カプースチンの個性をつかむことですね。カプースチン作品は、クラシックの要素やビッグバンドなど、すべてが融合されています。彼の発想が曲になって現れていることを知ると、演奏に何が必要か分かってくると思います。
- 西本
- ただノリノリなだけじゃない。例えば、ジャズのコードだけでなく、ラフマニノフもよく使っていた【ロシアンコード】も顕著にあるし、クラシックの要素もたくさんある。
- 川上
- カプースチンを知るには、まずは作品40の《8つの演奏会エチュード》。《24のプレリュード》作品53はポピュラーでやさしい曲もあります。ショパンのエチュードを弾くテクニックがあれば、カプースチンも弾けると思いますよ。最初は難しく感じると思うけど、楽譜はクラシックを弾くのと同じように譜読みをしてみると、だんだんコツが分かってきます。それに、カプースチンを弾くと、音がしっかりしてきます。明確なタッチができないといけないし、一つ一つの音のニュアンスも繊細につけないといけない。速いテンポの中でも、指に重さをかけたり、力を抜いたり、止めたりなどテクニックが必要です。カプースチンのエチュードを弾いてると、正しいニュアンスで弾かないと雰囲気が出ないので、音楽を実現しようとする音楽的欲求が強くなり、指も耳も感性も発達してきますし、エチュードを弾く効果は高いと思います。
- 西本
- 同じ時代に生きている人が作った作品を演奏できることは、すごく新鮮で幸せなことです。作曲家と同じ時代に生まれて、一緒に生きているということに大きな意味があると思います。例えば、この前カプースチンに会いに行ったときに、私が書いた修士論文を見せたら、「その論文には、『カプースチンの故郷であるウクライナが、今、戦争で大変なことになっている』って書いた?」か聞かれました。作曲家というのは、楽譜を通して見ると遠い存在だけど、私たちと同じ人間で、同じように色んなことを感じながら生きているんだと実感しました。そうしたら、昔の作曲家たちに対して距離を感じていたのが、もっと近くに感じられて、人間として興味が湧いて、この人のことを知りたいと、以前よりも強く思うようになりました。こういったことも、同じ時代に生きている作曲家の作品を演奏することで得られる重要なことのひとつかもしれませんね。
- 川上
- 作曲家はこう考えていたのかな?と想像できる力に繋がるよね。もしベートーヴェンだったら、こんな風に言うんじゃないかと推測したりね。今、現代作曲家のことを同時代で勉強することには、測り知れない価値があるかもしれません。
- 西本
- ベートーヴェンやショパンもいい曲だと思う人がいっぱいいたから、色んな人が弾き続けて今がある。私たちが今からカプースチンの曲を弾いていくことで、未来へ向かってその道筋を作っていく事ができているんだ、と不思議な実感が湧くのは彼のおかげですね。過去のものばかりではなく、ここから先の未来を作っていくという感覚になるのも本当に幸せなことです。
- 川上
- 僕ら演奏者の存在は、カプースチンが作曲を続けていくモチベーションになってるかもしれないから、責任重大ですよね。
- 西本
- おこがましいかもしれませんが、彼の何かの役に立てたらいいなと思っています。
◆コンサート情報◆
日時:2015年5月4日(月・祝)13:00~20:00
会場:ティアラこうとう小ホール
- 第1部:カプースチン愛好家によるプロローグ・コンサート (13:00-15:30/入場無料)
- 第2部:「カプースチンを深く知ろう!」~奏法のエッセンス~ (16:00-17:15/2500円)
- 第3部:カプースチン作品スペシャル・コンサート (18:00-20:00/2500円)
ピティナ編集部
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