会員・会友レポート

日々雑感~レッスン現場で思うこと その3 「間違い」を生かす

2013/03/22
日々雑感~レッスン現場で思うこと
その3 「間違い」を生かす

レッスンの中でよくあることとして「譜読みの音間違い」があります。
私は、生徒が音を間違えたとき、次のの3つのどれに当てはまるか考えます。

1.直さなくてもいいもの
2.音楽の進行上おかしくはないが、作曲家の特有のハーモニーや流れを無視しているもの
3.明らかに音楽の進行上そのような音が来るわけがないもの

1にあてはまるのは、ごく稀です。曲の終止音を1オクターブ低く弾いたとか、和音の内声が足されているとかで、違和感がない場合はそのままにしています。(実は自分でもそのままにしていることはあります)


譜例①

譜例②

問題は2と3です。では2のケースの極端な例を譜例にしてみました。①下の譜例でもハーモニーとしてはおかしくないかもしれませんが、「ショパンのこだわり」がなくなってしまう。
これは、大チャンスです。ただ、「音を直す」だけでなく「直した音を大切に弾き」「一緒に味わう」それにより「芸術作品の素晴らしさ」に本当に触れることになります。

3に関してですが、これは私の経験ですが、もっとも多い「音間違い」は「音階の中の導音」のように思われます。ということは「今弾いている個所の「調」を感じていない」ということ。その個所がどの調に支配され、それが全体の中でどのような個所にあるのか、生徒の理解に応じて解説することにしています。和音を弾かせたり、音階を弾かせたりもします。
極力「そこの音は間違ってる」で済ますことは避けた方がいいと思います。

練習の注意事項で重要なこと

よくあるのですが、「同じ所で間違える」という問題です。たとえば1小節目から弾いて5小節目の最後で間違えた、そして5小節目の最後の音から弾いてホッとしている生徒がいます。これは「繰り返してはいけない」練習です。間違えた音を確認することはじゅうぶん必要ですが、「前後関係」を正しく把握し、つながりの変化もよく耳と手で理解できるように、そして初めて「音楽の文脈の中で正しく弾ける」ようになるのだと思います。

ベートーヴェンのピアノソナタ第7番の冒頭について(1月24日)バッハの平均律第1巻3番フーガについて(1月25日)よく考えるとこれらは「生徒の間違い」から始まっているということです。ベートーヴェンでは「強弱の読み落とし」から始まっていますし、バッハは「音階の理解不足やソルフェージュ能力の問題」です。ただ何も考えずに「間違ってる」というだけで終わったかもしれません。「何を間違ったのか」「その原因は」「裏に隠されていることは」と絶えず追求するべきなのだと思います。そこには広い視野を得られるチャンスがあります。 http://m-ohtake.blog.ocn.ne.jp/mohtake/cat10563333/

※本稿は大竹道哉先生がご自身のfacebookページに掲載された文章を加筆修正のうえ転載したものです。


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東京音楽大学付属高校、大学、研究科を首席で卒業。読売新人演奏会出演。第53 回日本音楽コンクール入選。87~90 年ベルリン芸大留学。優等を得て卒業。井口愛子、弘中孝、野島稔、山口優、クラウス=ヘルヴィヒ各氏に師事。ベルリン自由放送、NHK-FM 出演。ベルリン交響楽団、大阪音楽大学ザ・カレッジオペラハウス管弦楽団・モーツァルト管弦楽団と共演。兵庫県明石市在住・全日本ピアノ指導者協会(PTNA)正会員。ピティナ・ピアノコンペティション審査員。 07年にはじめてのCD、「バッハ・ピアノリサイタル」(ライブ録音)を発売、 11年2枚目のCD「シューマン・子供の情景・クライスレリアーナ」を発売。 楽譜「ヴェーベルン:ピアノ曲全集」をプリズム社より校訂 出版する。 92 年より大阪音楽大学非常勤講師。 音源サイトでは100曲を超える演奏を公開する。
ホームページ :http://www8.ocn.ne.jp/~m-ohtake/
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ピティナ編集部
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