菅原 望さん グランプリインタビュー
第36回ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリの栄冠に輝きました、菅原 望さん(22)に、受賞後に改めてお話を伺いました。
--------この度は、グランプリ受賞おめでとうございました。グランプリを受賞した心境をどうぞ。
菅原さん(以下略):歴代のグランプリ受賞者を見てきて、まさか自分がとれると思っていなかったので、信じられないですが、やはり嬉しいです。
--------受賞後の祝賀会では、表彰式に参加した子どもたちの間でとても人気者だった菅原さん。子どもたちからの祝福を受けて、感じたことは?
すごく嬉しいです。子どもたちから嬉しそうに「ご利益がある!」と言われ握手されるのも、そんなことはないよとは思いつつ、やはり嬉しかったですし、そう言っていただけてとても有難かったです。
--------今回の結果は言うまでもなく日々の努力の賜物だと思いますが、今回のコンペティションを通して、最も苦労したことは何ですか?
セミファイナルのプログラムです。特にリストのソナタについては、セミファイナル当日のその瞬間まで悩みに悩みました。色々なCDを聞いたり文章を読んだり、「ソナタ」がどういう音楽なのかを色々考えながら練習を積み重ねたのですが、その度にまた悩んで...の繰り返しでした。ハイドンのソナタについても、ここで初めて弾くという緊張感を常に感じながら練習を続けていました。そんなふうに色々試行錯誤し、苦労したセミファイナルでしたが、聴衆の方々がとても真摯に耳を傾けてくださり、苦労しながらもこのプログラムを弾ききってよかった!と思っています。
--------今回、菅原さんにとっては3回目の特級ということで、きっと色々な思いがあったことでしょう。その経験を通して、今回とりわけ心にとめていたことはありますか?
1回目は二次予選まで、2回目はセミファイナルまでという結果だったので、毎回一つずつ上がって来たのだから今年こそは、という思いがありました。はじめに一次で落ちるわけにはいかない、そして二次でも落ちるわけにはいかない...と必死でした。また、セミファイナルまで進むと、昨年までの結果への意識があったのはもちろんですが、セミファイナルまで一緒に勝ち進んできた友人の存在も自分にとって大きかったです。共にピアノの勉強を続け、切磋琢磨し合ってきた仲間ですが、そんな仲だからこそ負けたくない気持ちがとても強くありました。難しいプログラム、昨年までの結果に対する思い、勝ち進んできた仲間への意識と、今回のセミファイナルはとりわけ思うことが多く、その中でいろんな自分を見つけられたと思います。これまでとは全く趣向を変えた今回のプログラムも、結果的には良い方向につなげることができ、良き仲間、ライバルの皆がいたからこそ負けたくない一心で自分も頑張れた。リストという新しい選曲で新しい自分も見つけることができ、本番では楽しい演奏ができたので、悩み苦労して良かったと、今では思っています。
--------今までとは一新したというプログラム、セミファイナルとファイナル共にリストの作品を演奏していますね。リストという作曲家は、自分にとって特別なものだったのですか?
もう特別になりました、今回で(笑)。今まではショパンがずっと好きで、去年のセミファイナルもショパンが大半を占めていたのですが、リストのピアノコンチェルト第2番に出会ってから、リストって良いなと思うようになりました。今回は二次予選でもリストを弾いて、セミファイナルでもリストを弾いて、そして最後も。そうしたら皆さんに「リストいいね!」と言って頂けたので、今ではもう"リスト様様"ですね(笑)。
--------審査員の先生方も、菅原さんの弾くリストを高く評価していました。今回のコンペティションでリストと向き合う前と後で、リストに対する思いは変わりましたか?
前は、「編曲ばかりしやがって...人の曲がないと作れないのか?」とか「ショパンを見習え!」なんて思っていたのですが(笑)、実際《ソナタ ロ短調》に向き合ってみると、やはりこの作品がリストの"作曲"した大作、かつ傑作であるということを実感しました。作曲家リストの凄さ、その作品の奥深さなども、《ソナタ ロ短調》から多くを学びました。言い方は悪いですが、見なおしたというか、リストのことがすごく好きになりました。今では、これからもたくさん彼の作品に向き合っていって、"リスト弾き"になりたいとも思います。
--------期待しています!では、そんなピアニストを目指すにあたって、今後の目標を。
これからもレパートリーを広げていくとともに、この賞に恥じないように努力をすることが目標です。ガチャガチャと弾くだけでなく、もっと叙情性を持てるよう、色々なことを見て、聞いて、感じて、勉強していきたいと思います。ピアノをただ弾くだけでない勉強を、今までできなかった勉強をたくさんしたいと思います。
--------では最後に。小さい子どもたちに人気があったことや、教育実習に行ったということもふまえてお聞きしますが、今、ピアノを習い菅原さんのようにうまくなることを目指している子どもたちに向けて、是非メッセージをお願いします。
実は、今ピアノを勉強している皆さんにどうしても伝えたいことがあって。僕は、小さい頃から何度もピティナ・ピアノコンペティションに出ていたのですが、全国大会には一度も行けていないのです。D級、E級は地区本選止まりですし、G級に至っては1次予選で落ちてしまいました。そのため、特級でも今回に至るまではものすごく苦労しました。そんな経験から自分が実感し自信をもっていえることは、その時々の結果だけで一喜一憂し、ピアノの勉強を諦めてほしくないということです。コンペティションなど本番の結果は、本当にその年だけの演奏順であったり、気候であったり、ピアノの状態であったり、審査員との相性であったり...色々なことが、自分だけではどうにもならない"運"要素が大きいと思っているので、一回落ちただけで諦めてほしくないのです。もし結果がいまいちでも、努力は絶対無駄にならないので、一回一回の結果に一喜一憂することなく頑張って続けて欲しいですね。上から目線で言っていますが...でも、はっきりいえることです。
--------継続は力なり、とはまさにこのことですね!今回はお疲れのところ、どうもありがとうございました。
◆菅原望さん演奏動画(Youtube)--------------------------------------------
【セミファイナルより】
●ハイドン:ピアノ・ソナタ ロ短調 Hob.XVI/32(準備中)
●スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第5番 Op.53(準備中)
【ファイナルより】