論文:人を育てるピアノ学習/小倉 郁子先生
要 旨
ピアノ指導者であり一人の母親として子育てに携わった経験を基に、子育てとピアノ学習の関わりについてまとめた。
ピアノ演奏において効果的な役割を果す速度感・拍子感・リズム感・音感・和声感を「音楽の五感」という。この五感が音楽理論と演奏技術を融合させる重要な役割を担っている。音楽作品は、音楽理論を土台にイメージした楽曲をソルフェージュで身につけた五感と演奏技術を駆使して表現される。従ってソルフェージュ学習は必要不可欠である。
ピアノ学習は情操教育であるという観点から、子育てとリンクさせることが可能であると考え、ピアノ学習を通した人づくりを提案する。ピアノ学習は、親子で真剣に取り組むことで得られる絆やコミュニケーション、その学習過程で習得する集中力・創造力・思考力などの人間力を養い、また演奏表現に欠かせない総合力を身につけるために多方面からの学習と経験を必要とし、ピアノ学習と学校で学ぶ全教科が深く関わっていることに気づいた。
子育てを終えてみて、どの分野においても目標を定めて逆算する能力と反復力を身につけておくことが大切であり、それらは充実した人生を送る上で大きな力になると実感した。とくに逆算能力は総合的視野をもって見極める眼を養うことになる。このような能力はピアノ学習で充分に学べる。そして「ピアノ教育は人の総合教育であり、ピアノ教育は人づくりそのものである。」という境地に至った。
⇒ 本文はこちら(PDF)※宇都宮短期大学音楽科紀要より転載
(社)全日本ピアノ指導者協会正会員、ステップ課題曲選定委員、コンペティション全国決勝大会審査員。PTNAピアノコンペティション指導者賞18回受賞。
バスティン・メソード指導講師。数回の渡米においてバスティン女史に直接指導を受ける。
宇都宮教材研究会代表、「ピアノ教育は人づくり」をモットーにしたグループ音学代表として活躍中。現在、研修医として病院に勤める長男と、大学院の博士課程で研究に没頭する二男の2児の母。ピアノ学習に子育て経験を織り交ぜた講座も注目を得ている。
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