浜コン:2次予選2日目レポート
2009/11/14
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浜コン2次予選2日目、今日は土曜日、しかも朝一から浜松アカデミーコンクール1位のチョ・ソンジンさんが出場するとあって、開場15分前には長蛇の列ができていました。
今日は、8名の演奏者が熱演を披露しました。
CHO Seong-Jin(韓国、15歳)
・西村朗 白昼夢
・ショパン 練習曲 Op.10-1
・リスト 超絶技巧練習曲第10番へ短調
・シューマン 幻想小曲集 Op.12 (以上、演奏順)
西村作品から、オーソドックスで力強い気品のある音色、むしろぐっと抑えた響きで夢幻的なまどろみの世界観を最高度に表現します。続くショパンは、安定したテクニックの上に仄かなニュアンスを散りばめ最高級の名演。リストは多少ミスがあるものの、これも全てが全体の音楽の流れの中に混濁のない表現。シューマンでも、音楽の性格と構造を大づかみに捉え、誇り高い表現で全曲を一つのストーリーにまとめました。恐るべき世界最高レベルの15歳。
「朝ですが、コンディションは良かったです。良い演奏ができたと思います。演奏前は、シューマンについての色々なイメージを想像したり、上品な演奏をしようと心がけたりしていました」好きなピアニストは、ラドゥ・ルプーとクリスティアン・ツィメルマンだというチョさん。ステージ上とは一転、柔らかい雰囲気が印象的。
Krzysztof TRZASKOVSKI(ポーランド、22歳)
・ショパン 練習曲 Op.25-10
・ラフマニノフ 絵画的練習曲 ニ短調 Op.33-5
・ショパン バラード第4番
・西村朗 白昼夢
・リスト メフィストワルツ第1番 (以上、演奏順)
ショパンから、クリアで温かい音色、真心のこもった表現に徹する姿勢が心を打ちますが、テクニック的にやや不安があり、粗い印象を残します。西村作品は、淡い世界観の印象派的表現で捉えました。表現のあたたかみで、サロンコンサートのように感じさせるピアニスト。
「終わって安心しましたし、たくさんの感情が渦巻いていますね。まだ、ステージにいるみたいな気分です。落ち着くには30分ほどかかかるでしょうね(笑)。演奏前は、ベストを尽くそうということを考えていました。コンクール・審査という事柄はひとまず置いておいて、ここに今日来てくださった方々のために演奏したい、という気持ちで演奏しました。」
YE Sijing(中国、18歳)
・西村朗 白昼夢
・リスト 超絶技巧練習曲第12番「雪かき」
・ショパン 練習曲 Op.10-8
・ショパン 前奏曲 第13番-第24番 (以上、演奏順)
リスト、ショパンとも、高いレベルの表現と響きですが、今日はやや調子が悪いのか、持ち前のメカニックにミスが相次ぎ、不本意な修正に終始追われてしまっている感。ただ、情熱的で積極的な表現で常にステージ上の状況を能動的に動かしていこうとする意志を感じさせるところに芸術家肌を感じさせました。
「終わってホッとしたわ。演奏前は、練習とリラックス、よく眠るように心がけていました。とにかく2次が終わって、安心しました」
Dmitriy ONYSHCHENKO(ウクライナ、26歳)
・西村朗 白昼夢
・ショパン ノクターン第13番 Op.48-1
・スクリャービン 練習曲 Op.42-5
・ショパン 練習曲 Op.25-11
・ショパン マズルカ Op.17-4
・リスト スペイン狂詩曲 (以上、演奏順)
西村作品から、タッチ1つに慎重な吟味を施し、工夫が凝らされます。体格や1次などから、メカニックやダイナミズムで作るピアニストという先入観がありましたが、2次ではむしろノクターンやマズルカで音の陰影や立体感を利用することができるピアニストという印象。
「今の演奏については、とても良かったと思っているよ。もちろんもっと良くできたとも思うけれど、それは我々ピアニストがいつも持つ感想だろうから、今日はOKさ。演奏前は、いつもどおり、音楽の美しさと取り組んでいけるようなモチベーションが湧くように心がけていたよ」
Silvan NEGRUTIU(ルーマニア、25歳)
・西村朗 白昼夢
・シューベルト ピアノソナタ第14番イ短調
・スクリャービン 練習曲 Op.8-12
・ショパン 練習曲 Op.10-12 (以上、演奏順)
西村作品や、低音の響きやタッチの質を考慮したやや骨太な作り。シューベルトでは、落ち着いたテンポ設定で、柔らかい雰囲気に作り上げ、シューベルトの歌や舞曲的要素よりも、叙情性に重点を置いた優しい世界を描きます。エチュード2曲で基本的なテクニックの弱さが出てしまったのが惜しまれます。
「タフでハードなプログラムだったね。でも、1次予選でもホール・聴衆が素晴らしく、とても楽しく弾かせてもらったので、今日もそれを感じて入れた。ここで弾くことができてとても嬉しいよ。」
CHANG Sung(韓国、23歳)
・西村朗 白昼夢
・ショパン 練習曲 Op.10-1,2,3,4,5,8
・スクリャービン 練習曲 Op.8-12
・リスト スペイン狂詩曲 (以上、演奏順)
ショパン・エチュードを大胆に並べた選曲。鮮やかなテクニックで、内容を一掴みにしてしまうスケールは安定感があります。流れの面でややスムーズでない箇所はありますが、全体にはムラがなくハイレベル。リストはヴィルトゥオジックな要素で押し、音の洗練はやや不足するものの、ダイナミックにまとめました。
「素晴らしいピアノと、ホールと、そして聴衆。浜松は素晴らしい街で、このコンクールを楽しんでいます。ショパン・エチュードを並べたのは、これらの作品はもちろんテクニカルな練習のものではなく立派な音楽的作品で、しかも1曲ではなく複数を弾くことでその面が見えてくると思ったからです」
加藤大樹(日本、19歳)
・ショパン 練習曲 Op.10-7
・バルトーク 練習曲 Op.18-2
・メンデルスゾーン 厳格なる変奏曲
・西村朗 白昼夢
・サン・サーンス=リスト 死の舞踏 (以上、演奏順)
冒頭のショパンから、やや珍しい選曲ながら、よく聴き分けたクリアな演奏です。バルトークも練習曲ではなく純音楽として美しく表現。メンデルスゾーンが、シンプルだが、音のバランスと音楽のテンションの拡大に慎重に配慮したレベルの高い熱演。誠実で真摯な音楽への態度が、大変好ましいピアニストです。「死の舞踏」も、安定感のある、クリアで高貴な演奏に仕上げました。
「特に1次のときのような緊張はなく、1曲1曲思い入れのある曲を、楽しく弾けました。会場はもちろん、インターネットなどを通じても、本当に多くの方に演奏を聴いて頂けるというのが嬉しいという気持ちで弾かせていただきました。(選曲は)「死の舞踏」は、文字通り「死」をテーマにしているわけですが、その裏には、当時のタランテラといった舞曲は疫病をはらう踊りという、【生きたい】という願いがあって、それはメンデルスゾーン、ショパンやバルトークのエチュードにも共通するものだと思い、それを表現したいと思いました」
Fatimat MERDANOVA(ロシア、26歳)
・西村朗 白昼夢
・ショパン 練習曲 Op.10-4
・リスト 超絶技巧練習曲第10番へ短調
・ブラームス ピアノソナタ第2番 Op.2 (以上、演奏順)
1次から、他のコンテスタントとは異なる、指ではじいていくタイプの強靭な演奏で印象づけたピアニスト。どの曲も、輪郭をくっきりと濃厚に描き、それがヒステリックな音になる直前で調整しています。エチュードは、少し粒の潰れが気になる箇所もありますが、よく練られ、鮮やか。ブラームスも大胆なコントラストでまとめ、今日の演奏を締めくくりました。
「まあまあね、ちょっとまだ何と言ってよいか。でも、たくさんの聴衆がいてくださって、素晴らしいホールで弾くことができて、もちろんもっと良くと思うところもあるけど、満足です。演奏前は、特に日本人作品のことを考えていました。もちろん初めての作品で、やはり私たちヨーロッパ人にはこのような日本人の表現を理解するのは難しいことですから」
明日は2次予選最終日。7名の演奏後、3次進出者(セミファイナリスト)が発表されます。
今日は、8名の演奏者が熱演を披露しました。
CHO Seong-Jin(韓国、15歳)
・西村朗 白昼夢
・ショパン 練習曲 Op.10-1
・リスト 超絶技巧練習曲第10番へ短調
・シューマン 幻想小曲集 Op.12 (以上、演奏順)
西村作品から、オーソドックスで力強い気品のある音色、むしろぐっと抑えた響きで夢幻的なまどろみの世界観を最高度に表現します。続くショパンは、安定したテクニックの上に仄かなニュアンスを散りばめ最高級の名演。リストは多少ミスがあるものの、これも全てが全体の音楽の流れの中に混濁のない表現。シューマンでも、音楽の性格と構造を大づかみに捉え、誇り高い表現で全曲を一つのストーリーにまとめました。恐るべき世界最高レベルの15歳。
「朝ですが、コンディションは良かったです。良い演奏ができたと思います。演奏前は、シューマンについての色々なイメージを想像したり、上品な演奏をしようと心がけたりしていました」好きなピアニストは、ラドゥ・ルプーとクリスティアン・ツィメルマンだというチョさん。ステージ上とは一転、柔らかい雰囲気が印象的。
Krzysztof TRZASKOVSKI(ポーランド、22歳)
・ショパン 練習曲 Op.25-10
・ラフマニノフ 絵画的練習曲 ニ短調 Op.33-5
・ショパン バラード第4番
・西村朗 白昼夢
・リスト メフィストワルツ第1番 (以上、演奏順)
ショパンから、クリアで温かい音色、真心のこもった表現に徹する姿勢が心を打ちますが、テクニック的にやや不安があり、粗い印象を残します。西村作品は、淡い世界観の印象派的表現で捉えました。表現のあたたかみで、サロンコンサートのように感じさせるピアニスト。
「終わって安心しましたし、たくさんの感情が渦巻いていますね。まだ、ステージにいるみたいな気分です。落ち着くには30分ほどかかかるでしょうね(笑)。演奏前は、ベストを尽くそうということを考えていました。コンクール・審査という事柄はひとまず置いておいて、ここに今日来てくださった方々のために演奏したい、という気持ちで演奏しました。」
YE Sijing(中国、18歳)
・西村朗 白昼夢
・リスト 超絶技巧練習曲第12番「雪かき」
・ショパン 練習曲 Op.10-8
・ショパン 前奏曲 第13番-第24番 (以上、演奏順)
リスト、ショパンとも、高いレベルの表現と響きですが、今日はやや調子が悪いのか、持ち前のメカニックにミスが相次ぎ、不本意な修正に終始追われてしまっている感。ただ、情熱的で積極的な表現で常にステージ上の状況を能動的に動かしていこうとする意志を感じさせるところに芸術家肌を感じさせました。
「終わってホッとしたわ。演奏前は、練習とリラックス、よく眠るように心がけていました。とにかく2次が終わって、安心しました」
Dmitriy ONYSHCHENKO(ウクライナ、26歳)
・西村朗 白昼夢
・ショパン ノクターン第13番 Op.48-1
・スクリャービン 練習曲 Op.42-5
・ショパン 練習曲 Op.25-11
・ショパン マズルカ Op.17-4
・リスト スペイン狂詩曲 (以上、演奏順)
西村作品から、タッチ1つに慎重な吟味を施し、工夫が凝らされます。体格や1次などから、メカニックやダイナミズムで作るピアニストという先入観がありましたが、2次ではむしろノクターンやマズルカで音の陰影や立体感を利用することができるピアニストという印象。
「今の演奏については、とても良かったと思っているよ。もちろんもっと良くできたとも思うけれど、それは我々ピアニストがいつも持つ感想だろうから、今日はOKさ。演奏前は、いつもどおり、音楽の美しさと取り組んでいけるようなモチベーションが湧くように心がけていたよ」
Silvan NEGRUTIU(ルーマニア、25歳)
・西村朗 白昼夢
・シューベルト ピアノソナタ第14番イ短調
・スクリャービン 練習曲 Op.8-12
・ショパン 練習曲 Op.10-12 (以上、演奏順)
西村作品や、低音の響きやタッチの質を考慮したやや骨太な作り。シューベルトでは、落ち着いたテンポ設定で、柔らかい雰囲気に作り上げ、シューベルトの歌や舞曲的要素よりも、叙情性に重点を置いた優しい世界を描きます。エチュード2曲で基本的なテクニックの弱さが出てしまったのが惜しまれます。
「タフでハードなプログラムだったね。でも、1次予選でもホール・聴衆が素晴らしく、とても楽しく弾かせてもらったので、今日もそれを感じて入れた。ここで弾くことができてとても嬉しいよ。」
CHANG Sung(韓国、23歳)
・西村朗 白昼夢
・ショパン 練習曲 Op.10-1,2,3,4,5,8
・スクリャービン 練習曲 Op.8-12
・リスト スペイン狂詩曲 (以上、演奏順)
ショパン・エチュードを大胆に並べた選曲。鮮やかなテクニックで、内容を一掴みにしてしまうスケールは安定感があります。流れの面でややスムーズでない箇所はありますが、全体にはムラがなくハイレベル。リストはヴィルトゥオジックな要素で押し、音の洗練はやや不足するものの、ダイナミックにまとめました。
「素晴らしいピアノと、ホールと、そして聴衆。浜松は素晴らしい街で、このコンクールを楽しんでいます。ショパン・エチュードを並べたのは、これらの作品はもちろんテクニカルな練習のものではなく立派な音楽的作品で、しかも1曲ではなく複数を弾くことでその面が見えてくると思ったからです」
加藤大樹(日本、19歳)
・ショパン 練習曲 Op.10-7
・バルトーク 練習曲 Op.18-2
・メンデルスゾーン 厳格なる変奏曲
・西村朗 白昼夢
・サン・サーンス=リスト 死の舞踏 (以上、演奏順)
冒頭のショパンから、やや珍しい選曲ながら、よく聴き分けたクリアな演奏です。バルトークも練習曲ではなく純音楽として美しく表現。メンデルスゾーンが、シンプルだが、音のバランスと音楽のテンションの拡大に慎重に配慮したレベルの高い熱演。誠実で真摯な音楽への態度が、大変好ましいピアニストです。「死の舞踏」も、安定感のある、クリアで高貴な演奏に仕上げました。
「特に1次のときのような緊張はなく、1曲1曲思い入れのある曲を、楽しく弾けました。会場はもちろん、インターネットなどを通じても、本当に多くの方に演奏を聴いて頂けるというのが嬉しいという気持ちで弾かせていただきました。(選曲は)「死の舞踏」は、文字通り「死」をテーマにしているわけですが、その裏には、当時のタランテラといった舞曲は疫病をはらう踊りという、【生きたい】という願いがあって、それはメンデルスゾーン、ショパンやバルトークのエチュードにも共通するものだと思い、それを表現したいと思いました」
Fatimat MERDANOVA(ロシア、26歳)
・西村朗 白昼夢
・ショパン 練習曲 Op.10-4
・リスト 超絶技巧練習曲第10番へ短調
・ブラームス ピアノソナタ第2番 Op.2 (以上、演奏順)
1次から、他のコンテスタントとは異なる、指ではじいていくタイプの強靭な演奏で印象づけたピアニスト。どの曲も、輪郭をくっきりと濃厚に描き、それがヒステリックな音になる直前で調整しています。エチュードは、少し粒の潰れが気になる箇所もありますが、よく練られ、鮮やか。ブラームスも大胆なコントラストでまとめ、今日の演奏を締めくくりました。
「まあまあね、ちょっとまだ何と言ってよいか。でも、たくさんの聴衆がいてくださって、素晴らしいホールで弾くことができて、もちろんもっと良くと思うところもあるけど、満足です。演奏前は、特に日本人作品のことを考えていました。もちろん初めての作品で、やはり私たちヨーロッパ人にはこのような日本人の表現を理解するのは難しいことですから」
明日は2次予選最終日。7名の演奏後、3次進出者(セミファイナリスト)が発表されます。
ピティナ編集部
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