2009浜コンレポート

浜コン1次予選を前に:予選課題の選曲傾向ランキング

2009/11/07
1次予選では、以下の(1)(2)(3)を計20分未満で演奏するという課題が出されています。

(1)J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集より1曲。ただしフーガは三声以上のもの。
(2)ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンのソナタより第1楽章または第1楽章を含む複数の楽章
(3)ロマン派の作曲家の作品より1曲

聴衆にとっては、各コンテスタントが得意の作品で腕前を披露する(3)も面白い聴きどころですが、百戦錬磨の審査員の前では、(1)(2)の課題だけで、音楽性のほとんどは見抜かれているといってもよいでしょう。

国際コンクールに限らず、ピティナでも音高・音大の入試や定期試験でも課題になる、バッハ平均律。浜松のコンテスタント85名は、どのような選曲をしているでしょうか。

★J.S.バッハの平均律選曲ランキング
1位 8名:1巻No.3嬰ハ長調、1巻No.22変ロ短調
2位 6名:1巻No.9ホ長調、2巻No.6嬰ハ短調
3位 5名:2巻No.5ニ長調
4位 4名:1巻No.8変ホ短調、2巻No.16ト短調
5位 3名:1巻No.16ト短調、2巻No.6ニ短調、2巻No.14嬰へ短調、2巻No.15ト長調、2巻No.20イ短調

浜松は、低年齢の新しい才能を見出すコンクールとしても有名ですが、ここでは、低年齢の参加者は無難に比較的平易なものを、20代以上の参加者が、多数の声部を慎重に操る難解なフーガでアピールする傾向がきれいに出ました。

古典ソナタはどうでしょうか。


★古典ソナタの選曲ランキング
ベートーヴェン 42名
ハイドン 29名
モーツァルト 14名

★ベートーヴェンの選曲ランキング
1位 8名:No.24 嬰ヘ長調Op.78「テレーゼ」
2位 5名:No.3 ハ長調Op.2-3
3位 4名:No.23 ヘ短調Op.57「熱情」
4位 3名:No.11変ロ長調Op.22、No.16ト長調Op.31-1、No.30ホ長調Op.109、No.32ハ短調Op.111

★ハイドンの選曲ランキング
1位 7名:Hob.XVI/52 変ホ長調
2位 4名:Hob.XVI/50 ハ長調
3位 3名:Hob.XVI/31 ホ長調、Hob.XVI/46 変イ長調


一般に、モーツァルトは評価されることが難しいとよく言われますが、ここ浜松では、85名中14名(16.5%)がモーツァルトという結果。やはり、ベートーヴェンかハイドンで、と考える参加者は多いようです。ベートーヴェンは、「テレーゼ」が意外な人気を発揮していたほか、後期のソナタで思い切って勝負をかけてくる参加者も国際コンクールでは珍しくありません。

ちなみに、(3)ロマン派の1曲、はどうでしょうか。


★「ロマン派」の自由曲作曲家ランキング
1位 リスト:30名 ※シューベルト=リスト含む
2位 ショパン:28名
3位 ラフマニノフ:7名 ※メンデルスゾーンやクライスラーの編曲物含む

★「ロマン派」の作品別ランキング
1位 8名:メフィストワルツ第1番(リスト)
2位 6名:ポロネーズ第6番「英雄」(ショパン)
3位 5名:スケルツォ第3番(ショパン)
4位 3名:リゴレットパラフレーズ、超絶技巧練習曲第10番、ハンガリー狂詩曲第6番、同第12番(以上リスト)、舟歌(ショパン)、イスラメイ(バラキレフ)


20分以内、平均律と古典ソナタを弾いた余白の時間で弾けるもの、ということでかなりの制約があるなか、リストとショパンで満遍なく技巧の高さや語りの巧みさを披露しようというコンテスタントが多数となりました。

これから国際コンクールや国内の大きなコンクールへのチャレンジを考える際のヒントを、浜松の選曲傾向から見出してみるのも、面白い研究方法かもしれません。


ピティナ編集部
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