色々な感情/ブラームス:間奏曲作品117-1
今回の曲はブラームスの間奏曲作品117の1番です。今まであまり弾いた事のない曲でしたが、最近時々弾くようになりました。とても優しいと同時に悲しい子守唄です。 暗い音色と一緒に願いのようなキラキラした星が美しく光る音色もあります。リズムが子守歌を、メロディが子どもとお母さんの気持ちの両方を表していてとても素敵な曲だと思います。私は今朝目覚めた時、「今日はこの曲を連載ために録音しよう」と思いました。
でも実際に録音してみるととても大変でした。このとてもシンプルな曲を何度も何度も録り直ししました。途中で音源を聴くと、何か、どこかが違うのです。
このような事は結構よくあります。おそらくピアノをやっている人は誰でも経験した事があるのではないでしょうか。弾いてから自分の演奏を聴いてみると「何か足りない・・」例えばお料理していて、あまり作ったことのない物を味見したら「何かもの足りない・・・でも何が足りないのかな?」というのと同じです。とても悩みますね。ピアノから一歩離れて部屋の中をぐるぐる歩いたりして「いったい何だろう?? 神様教えて下さい!」手を合わせて上を向いて神様にお願いしています。ピアノを弾くのはなかなか難しいですね!
でもそんな時、この曲は「自分にとって」どんなイメージの曲かを考えると段々インスピレーションが出てきます。お母さんが子どもを優しく撫でている様子を思い浮かべて、実際自分にとって大切なものに対する気持ちを思い出したり、子どもが夢を見ているのかなぁと想像して、その夢の世界に入って行くように感じたりすると演奏も変わるようです。一般的には子守唄はとても平和的なイメージですが、世の中には悲しい事があって泣きながら寝ている子どももいます。でもそんな子供の心を音楽が癒してくれれば・・・そして、私も演奏で人間を癒すことができたら・・・色々考えながら弾きました。
私にとってピアノの大きな魅力は、楽器を使って「語る」事が出来ることです。音楽は人間の様々な感情を語ります。この前に生徒たちに、出来るだけたくさん人間の感情を紙に書く、という宿題を出しました。「嬉しい」と「悲しい」だけではなく、たくさんたくさんあります。皆さんはどれぐらい考えられるでしょうか?「怒り」や「喜び」などは極端だから分かりやすいけれど、中にはいくつかの感情が絡まっているもの、嬉しさも悲しさも同時に入り混じっていることがありますね。例えば「懐かしい」気持ちは両方の感情が入っていると思います。楽しい事を思い出しうれしくなりますが・・・それはもう手に入らないという悲しい気持が追いかけて来ます。クラシック音楽にはこのような複雑な感情の絡まりがとても多いです。
生徒への宿題、「感情を言葉で表現する」ことは少々難しかったかも知れません。でも皆で考えれば考えるほど色々な言葉が出てきました。生徒達はこれからピアノを弾く時、曲と向い合って、それを書いた時の作曲家の気持ちや、曲や音自体のもつ感情を考えられるようになったでしょうか。
これをやればピアノは上手になるでしょうか?それは分かりません。でも、こうすることで音楽はもっと面白く、興味深くなるのは確かです。曲の感情に触れようとすると、まるで玉手箱を開けたように様々な感情が次々にあふれてきて、色々な気持ちを感じることが出来ます。まるでジェットコースターに乗っているように、冒険に繰り出しているように楽しいことです。
それでは、また!
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