きれいごとのようなタイトルですが、私のモットーです。
以前にも書きましたが、音には「その時の心情」がでます。
心がすさんでいる時に「美しい音楽を!」という気にはなれないでしょう。
心がさびしい時、それは音楽が救いになります。集中して美しい音を目指すことで、心も晴れてくるかも知れません。
ウキウキする時、ピアノを弾くともっと楽しくなるでしょう。
そういう人は少ないと思いますが「人を蹴落としても一番になりたい」などという心情の時、美しい音楽が生まれるでしょうか?一番を目指す事は良いですが自分がより良くなるための努力の結果が出るということです。他の人もがんばっているのですから、そのことも認めた上で、自分もがんばれば良いのです。
コンクール前に、その心構えを確認する事があります。「きれいな心でないと、きれいな音は出ないよ!」と。
コンクールに向けて、誰もが少しでも上手になりたいと思っています。当然「誰よりも自分が!」とも。ですから「きれいな心で」といわれることで、本気でそういう心になろうと思ってくれるかもしれません。
すさんだ心になりそうな時が、逆に美しい心になるチャンスになるかもしれません。
私は本気で思っています。
学校のテスト勉強は、どんな心で臨んでも点数とは関係がありません。問題が解けて(解き方を要領よく習い本質がわかっているのかな?と心配しますが)答えがあってさえいれば順位が上がり、良い学校に進め、良い教育が受けられます。もちろんそれには努力と知性とが必要で。尊敬できる人たちです。そういう賢い人がリードしていかないと、世の中は発展しません。
私が思う「美しいピアノ」は、心を育てるという意味では、学校のお勉強よりも難しく、もっと価値のあることだと思っています。楽譜どおりに弾ければ、テストの点数で言えば「満点」でしょう。美しさはその上で磨くわけですから。
美しい心で、前回の「ただ純粋に良い音楽を」心がけることには、たいへんなテクニックが必要なわけではなく、余分にお金がかかるわけでもありませんが、心が浄化されていく事が期待されます。
日本中、世界中の人が、美しい心で音や芸術に関わるとすれば、とても幸せなことです。
心の内面のこと、人がどう感じ、思っているかなどということは「わかるわけがない」かもしれませんが、出てくる音によって、その人の心が映し出されることはあると思います。
ピアノの練習あるいは、指導を通して心を育てるという事を何度も述べてきました。それが最大のレッスンポイントであり、やりがいのあることだと思います。
ピアノを弾いている人は、素直な美しい心で練習し、レッスンを受け本番に臨み、ますますピアノと共に豊かな心になってください。
ピアノを指導している側は、「心も育てている」という自覚を持ち、その意義、重大さを受け止め、真摯な気持ちで指導し続けたいものです。
そして、そういう経験を経て、他の人の美しい心や音にも共鳴できる人間になる事もまた期待できます。
日々、美しい心で過ごしたいものです。
エピソード1
しょっちゅう「美しい心でないと美しい音楽は生まれないと」言われていた生徒が、演奏活動をするまでになりました。「こんなに美しい心だったんだね!実は!」などと冗談を言うと、「実は私の心はすごく美しかったのに、先生が知らなかった!」と言い返されました。
日常生活で苦労した生徒なので、当時はきっと強さだけが表面に出てしまっていたのでしょう。彼女が母になった今、立派な人間を育てる側で真価が発揮されると思います。
エピソード2
コンクール本選前日のことです。ある兄弟の生徒が遠方に住んでいたので、家に泊めました。
その際、兄弟して、しきりに本選のメンバーの悪口を言っているのです。びっくりして「そんな人のこと気にするより、自分の演奏でしょう!!そんな心じゃろくな演奏は出来ない!」
頭にきて、特訓のしなおし!
弟君はメソメソ・・・「あなたが泣くのではなく、聴いている人を泣かせなさい!」と、なおさらヒートアップ!
びっくりした思い出です(因みにその兄弟は決勝には行きました)が、皆がこんな気持ちでコンクールに臨んでいるとしたら...とぞっとしました。
それからはコンクール前に生徒が「ただただ決勝に行きたい!」とだけ考えているような気配を感じたときには、「美しい心で臨むこと」を促すようにしています。
近頃は逆に「私なんか...」と自信がなく、逃げているような子の方が多く、「コンクールは、一番を目指して出るものです!その努力をしなさい!」と渇を入れることのほうが多いのですが...
武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。
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